人のラブシーンを見るのは嫌いじゃない。まぁそうそう公共の場でイチャイチャするカップルもあんまり見ないけれど。当然ながら自分のは絶対に人様に見せれるもんじゃないって思っている。小っ恥ずかしくて絶対に見られたくない。
「ゆーせー抱っこぉ〜」
ぎゅーって勇征くんに抱きつくゆき乃さん。大学3年生のお姉さん。大学1年の彼氏、八木勇征くんの年上彼女。同じく大学1年の私、原田美月は勇征くんのマブダチ中島颯太の列記とした幼馴染である。年上だけどめちゃくちゃ可愛いゆき乃さんは、勇征くんのモテっぷりにちょっとモヤモヤしていて、月1で開催される定例会の今日、珍しく酔い潰れてしまった。そんなゆき乃さんを迎えに来たバイト終わりの勇征くんに今程抱きついてゴロンと甘えている。
「大丈夫?めちゃくちゃ酔ってんじゃん。どんだけ飲んだの?」
ゆき乃さんを軽々とお姫様抱っこするソフトマッチョな勇征くんの視線は私に飛んできている。ゆき乃さんがこんなにまで飲んだのは勇征くんのせいでもあるけど…
「酔いたい日もあるんだよ、うん」
「え?そうなの?ゆき乃さん、気持ち悪くない?水飲む?」
「んー。飲まして」
ムウって唇を尖らせるゆき乃さんに勇征くんは照れ笑い。これはいわゆる口移しで飲ませろって事だろーと。それならってスマホのカメラを動画に変えて構える私に勇征くんの手がポカンと飛んできた。
「撮らないでよ美月ちゃん」
そう言いながらもペッドボトルを咥えて水を口に含むと勇征くんの綺麗な顔がゆき乃さんに近づく。まるで映画のワンシーンのような口移しに私は馬鹿みたいに見惚れていた。ごくごくと喉を鳴らして勇征くんから水を飲ませて貰っているゆき乃さんの口端から垂れた水を勇征くんの舌がぺろりと舐め取る瞬間を目撃した私は完全に脳が覚醒。わーんもっと続き見たい!なんて思ってしまう。
「じゃあ帰ろうゆき乃さん。美月ちゃん送るよ、後ろ乗って」
ゆき乃さんを助手席に座らせた勇征くんは私を後部座席に誘導してくれた。
「まじで珍しいね、こんなに飲むの。そんなに盛り上がったの?」
「んー。盛り上がったというか、勇征くんのことめっちゃ好きなんだなぁーって感じ」
「なんだそれ!照れるやん!けどゆき乃さん以外から聞くとめっちゃ嬉しいなー」
「勇征くんモテるからちょっと妬いてたよ、ゆき乃さん」
「あーはは。心配してた?」
「うん」
「じゃあ今度また心配してたら言っといてよ、俺はゆき乃さんしか見えてないって」
「録音するからもう一回言って」
「やだよ、恥ずかしい!録画いらないって」
スマホを出せばそれをポコッと払われた。
「つーか、美月ちゃんこそ颯太とまだ付き合ってないの?あれで颯太もモテるから早く告らないと誰かに取られちゃうかもよ?」
「なんで私が告白しなきゃなんないのー?やなこった!」
「素直じゃないんだから、好きなくせに」
バックミラーの中の勇征くんの瞳と目が合うと、楽しげに微笑んでいる。ちょっと腹立つわー。
「颯太んとこまで行ってあげようか?そんな遠くないし」
鼻歌交じりで目尻を下げる勇征くんに私は断固拒否するつもりだというのに、「もー寝てるよ、颯ちゃん」本当の本音は私が颯ちゃんに逢いたいんだと思う。ラブラブな二人を見ていたら羨ましくなっているんだって。
「電話すればすぐ起きるよ。てか颯太起きてるでしょ。行く?」
返事なんてしていないのに勇征くんの運転する車はどうやら本当に颯ちゃんの住むアパートに向かっているみたいだった。
ほろ酔いの私を乗せた勇征くんの車はものの十数分で颯ちゃん宅の前につく。その間勇征くんは颯ちゃんと当たり障りのないラインをしていて、家に居て起きている事は確認済みだ。アパートに行って颯ちゃんと遭遇できない事は無さそうだ。
「ゆき乃さん、美月ちゃん着いたから」
やんわりと肩に触れた勇征くん。ゆき乃さんはトロンとした目を開けてゆっくりと後部座席の私を振り返る。
「美月ごめん、寝てたわ…」
「全然。てかゆき乃さんだいじぶ?」
「うん、へーき。あれここ、颯ちゃんとこ?」
きょろきょろと辺りを見回してボソッと呟くゆき乃さん。隣の勇征くんはにっこり微笑んでいる。
「美月ちゃんが颯太に逢いたいって言うから」
「いや言ってねぇ!てか本当に行くの?私…」
ちょっと怖気づいている自分に苦笑い。幼馴染から恋に発展するのって結構難しいと思う。颯ちゃんは特に、友達と恋人との境目が無いっていうか、誰にでも別け隔てなくフレンドリーで優しいし。
「だいじぶ、だいじぶ。颯ちゃんなんだかんだで美月のこと大事にしてくれるから!ね、勇征」
「うん。アイツはアイツは…って言いながら美月ちゃんの事は自分のものだと思ってるし颯太。一応なんかあったらすぐ迎えに来れるようにしておくから、万が一のときはちゃんと連絡してね?」
「好きな女が夜な夜なお仕掛けてきて一人で帰すほど颯ちゃんクソ男じゃないでしょ」
「まぁ俺なら帰さねぇよ」
「ふふ、かっこいー勇征」
「やったー!」
ガッツポーズをする勇征くんに抱きつきたさそうな顔してるゆき乃さんの空気が伝わってきて私は横に置いてあった荷物を手にする。
よし、女は度胸!この二人を早く二人っきりにしてあげないと!なんて思いながらドアに手を掛けてもう一度前の席の二人に視線を送る。
「じゃあ勇征くん、ゆき乃さんを宜しくお願いします。ゆき乃さん、あざざます!」
敬礼のポーズを取るとゆき乃さんはふわりと笑って「近々近況報告してね」背中を押された。
勇征くんの車から出た私はスマホ片手に颯ちゃんの住むアパートの中島って表札の前で呼び鈴を押す。まだ外の車は止まったままだ。たぶんだけど私が颯ちゃんの部屋の中に入るまでは見守ってくれてるんだと分かる。
こんな時間に誰やねん…なんて低いトーンの声がしたと同時、迷惑そうな顔した颯ちゃんがアパートのドアを開けた。
「来ちゃった!」
開口一番そう言って笑うと明らかに呆れ顔の颯ちゃんが「あほやん」そう言って私の腕を取ると部屋の中に入れてくれた。
思いの外すんなりと入れてくれた颯ちゃんは小さく溜息を零すと「勇征くんから聞いてたわ、お前が来るって。ちょっと片付けてもーたやん、」くしゃくしゃと自分の髪を掻き乱す颯ちゃんに私は緊張の糸が少しだけ解けたようだった。
「で、泊まるんやったらコンビニ行く?色々必要なもんあるやろ?」
「え、泊まっていいの?」
幼馴染の私と颯ちゃん。みんなで颯ちゃん宅で宅飲みして雑魚寝みたいな事は今まで何度かあったけど、当たり前にサシで泊まった事なんて一度もない。
「いやもうこんな遅くに一人で帰す訳にも行かんやろ。送るんめんどいし、泊まれ。しゃーないから一緒に寝てやる」
ポケットに財布とスマホを入れ込んだ颯ちゃんは私の手を取ると靴を履いて外に出た。
勇征くんの車はもういなくなっていて、代わりに私の手を掴んでいる颯ちゃんが隣を歩く。
「楽しかったん?飲み会」
「え?うん。勇征くんがモテすぎてゆき乃さんがヤキモキしてるのが可愛くて」
「あーそれな。勇征くんほんまかっこええもんね」
「ゆき乃さんって彼女がいるのにさ、どんどん告白されるじゃん。だからゆき乃さんは自分は勇征くんの相手だって認められてないんだろーなぁーって言ってて。でもそんなの勇征くんの顔見れば分かるじゃん、ゆき乃さんしか見てない事なんて。どんだけ告られた所で、ノー以外の応えなんて貰えないのにね」
颯ちゃんに腕を掴まれているから上を見上げながら歩く。今日は満月なのか真ん丸の大きな月がどデカく空に浮いている。
「あの人無駄にみんなに優しいから、勘違いさせてるんやろねぇ」
すぐに着いたコンビニ。そこで漸く颯ちゃんの手が私から離れた。くるりと後ろを振り返ると「必要なもん買うてきぃ」そう言われてこくりと頷いた私はテキパキと化粧水やら下着やらのお泊りセットを籠に入れて雑誌を読んでいた颯ちゃんの所に戻ってくる。まだ未会計の籠を持ったまま、今度は私が颯ちゃんの腕を掴んで誘導する。
「なに?」
「颯ちゃんこれ買う?」
スッと指差したそこは、超薄型のシルバーボックス。一瞬目を見開いた後、バコンって頭をどつかれる。「あほか!」そう言いながら私の籠に入れて籠事奪われた。そのまま会計で支払いを済ませてくれた颯ちゃんは、袋を持っていない方の手でまた私の腕を掴む。
「なんか、お父さんと子供みたい」
「はぁ?…たく」
息を吐き出した颯ちゃんは、今度こそ私の手を掴んでそこに指を絡めてくれる。きゅっと握ると「照れるわ、これ」なんて顔を逸らす。だからぎゅっと颯ちゃんの腕に絡みつくように抱きついて肩に顎を乗せると「小ぶりな胸が当たってんでー」なんて悪態をつかれた。
「颯ちゃんには大きくする使命があるね」
「人任せやん!牛乳飲めや」
「牛乳買うの忘れたー」
「ええよ、俺がでっかくしたる」
ぶはって笑う。
ねぇ、こんな始まりってある?
幼馴染だからこんな始まりもありなのかもしれないけど、たぶんゆき乃さんと勇征くんのようなロマンチックな始まりとは程遠いんだけど、それでも私と颯ちゃんはこれが一番しっくりくるのかもしれない。
◇◇◇
夢にまで見た颯ちゃんとのセックスは堪らなく気持ちが良かった。
可愛い顔してやることやってたのかなぁ、颯ちゃん。それはそれで嫌だなぁ。幼馴染だし颯ちゃんの恋愛事情は分かっているつもり。
「えと、童貞卒業?」
ベッドの上で微睡みの中そう聞けば「赤飯ものやなろな」ニッて笑った。見つめた先の颯ちゃんは私の頬を指でむにゅっと摘むと「上目遣いすな、またシタなる」そう言って肘をつくと私に半分被さりながら唇をパクリと食べられた。
ハムッて一度目は軽く唇を舌で舐められた後、颯ちゃんが私の上に等々覆い被さる。タンって顔の横に手をつくと同時、私に体重を乗せた颯ちゃんは、横にあった手で私の耳を軽く塞いだ。そのまま舌で首筋から移動させて唇の中、激しめのディープキス。やだ待って、耳を塞がれているから颯ちゃんの舌の音が鮮明に入ってきて、全身が痺れるみたいに快感に塗れる。
「んっ、待っ」
ほんのり声をもらす私に気づいてそっと塞いだ手を緩めると、今度は颯ちゃんの熱い吐息が鼓膜を刺激する。耳の穴に指を突っ込みながら舌を這わせる颯ちゃんのテクニックはとてもじゃないけど脱童貞とは思えない。身体が反応して子宮内がカァーっと熱くなる。
使ったコンドームは二つだけ。まだまだたっぷり時間も余裕もある。
「はぁっ、颯ちゃんっ、きもちぃっ」
そんな事言うタイプじゃないって分かってる。でも止められない。また耳を塞がれて颯ちゃんからの激しい口内攻めに完全に濡れていくのが自分でも分かる。
それを分かってなのか、颯ちゃんの指が私の身体の曲線を謎って子宮内にほんのり入り込む。くちゅりと聞こえる水音にニヤリと口端を緩めた颯ちゃん。右手で子宮内の壁を擦りながら左手で胸の頭頂をくいくいと弄りながらへその穴に舌を入れ込む。
「あああっ」
喉の奥からこみ上げる快感の声に私は自分から脚を開いてしまう。どんどん下にくだっていく颯ちゃんは私の脚をM字に開かせるとそこに顔を埋める。
ズズズって中の愛液を吸い上げられてビクンと身体が捩れる。手前のクリを指で触れながら子宮内に舌を入れ込まれてなんとも言えない快感が身体中を突き上げる。
それいつまで続くの?もう無理っ…気持ちよくてどうにかなっちゃいそう。フルフルと震える腰をホールドしたまま颯ちゃんの愛撫はどんどん深くなる。クリを舌で吸い上げられてどうにも我慢ができなくて片脚をピンと伸ばして絶頂を迎える。
びしゃびしゃって颯ちゃんの顔の前に液体を漏らす私に「めっちゃ感度ええやん。俺がうまいからやな、」なんて満足気。
いつの間にかそそり勃っている颯ちゃんは3個目のゴムを装着すると私の脚を広げてゆっくりと中に入ってきた。
「キッツ。美月力抜けって」
「んぅっ」
「よしよし、ええ子。ほな動くで」
「ん」
最初はゆっくりと腰を上下に動かして子宮内を出し入れする颯ちゃん。やば、この角度…めっちゃエロい。いつも可愛い顔なのにちゃんと男の顔になっている颯ちゃんがちょっとだけ憎い。そんな顔どこで覚えたんだか。
「可愛い…」
「え?」
ほろりと漏れた颯ちゃんの声に視線が絡まる。え、今可愛いって言ったの?瞬きを繰り返す私の上に、照れ隠しなのか身体を曲げて覆い被さる。だから颯ちゃんの背中に脚を絡ませる様に回せば「あ、きもちぃ」…小さく漏れた颯ちゃんの声に私はきゅんと胸が疼いた。
「ちゅーしてよ、颯ちゃん」
「ん」
一瞬ドクンと心臓が鳴ったと思ったら颯ちゃんの手がまた私の両耳を塞ぐ。
器用に腰を動かしながら舌を絡ませる颯ちゃんのキスに、世界の音が消えて今ここにある二人の吐息と水音と、舌が絡まる音が鮮明に耳に入る。あ、だめ、イッちゃう。
キスをして数秒、私の子宮内はきゅうううっと颯ちゃんのソレを締め付ける。
「ちょ、イッた?」
さすがに分かったのか、颯ちゃんが律動を緩めながら聞いてくるからこくりと頷くと笑われた。
「耳塞いでちゅーするんめっちゃヤバいって、勇征くんから聞いててん。ほんまに気持ちいいんや?」
「颯ちゃんの強弱がなんかツボ」
「ほんま?それやったらもっとやったる」
嬉しかったのか、それから颯ちゃんのキスは必ず耳を弄るようになった。
それから何度か絶頂を迎えた私の腰が限界を迎えそうで。小刻みに息を吐き出す颯ちゃんが本格的に絶頂を迎えると、バタンとベッドに倒れ込んだ。
「やばぁ、めっちゃきもちぃっ。これさ、癖になんなぁ」
私の乱れた髪を指で整えてくれる颯ちゃん。
「えっちいっぱいしたいってこと?」
「そゆこと」
ニッて白い歯を見せて笑う颯ちゃんは、それからもう一回ゴムを使って、結局夜が明けるまで私達の初体験は続いたなんて、これゆき乃さんにどう言えばいいんだろう?なんて幸せな悩みを抱えながら、重たい身体をベッドに沈めて颯ちゃんの腕に抱かれながら幸せな眠りについた――。