モテたい彼氏

「達人くん、達人くん」

 ベッドで寝転がっている彼の筋肉質な腕を揺すってそう名前を呼べば、つぶらな瞳をキラキラとさせて満面の笑みを返しくれる。

「どないしたん、名前ちゃん」

 優しい眼差しで私を見つめてくれるこの人がめちゃくちゃ好き。
 私にメロメロで、私にげろ甘な達人くんは、ボーダー内では生駒旋空とか言われていてあんなんでもめちゃくちゃ強い。40メートル伸びる旋空を避けられる人はそういない。あの、1秒にもみたない速さで剣を抜く達人くんは本気でかっこよくて、ランク戦やら個人戦があれば必ず見に行ってしまう程私は達人くんが好き。そんな私を心底愛してくれてる達人くんは、今でも女の子にどうしたらモテるかを知りたがってよくよく隠岐くんに絡んでいる。
 私だけにモテてればよくない?って、思っちゃうんだよねぇ。

「ちゅーしたくなった」
「ほんまに!?俺は24時間365日名前ちゃんとちゅーしてたい男やからめっちゃ嬉しいわ」

 ニンマリとあからさまに鼻の下が伸びるのがわかった。私はこちらに顔を寄せる達人くんの太い首の裏で腕を交差させて身体をぎゅっと押し当てる。
 ぽよんとわざと胸を密着させて徐ろに唇を重ねる。
 いつも最初の一回は軽く触れるだけの小鳥キス。その後一度目を開けて視線を合わせる。私の目がトロンとしてるのを確認してから達人くんの腕が背中に回されて抱きしめながらの二度目のキス。
 ほんのり唇を動かして隙間を開けるとそれをこじ開けるようなちょっとだけ強引な舌が口内に入ってくる。ちゅるりと甘ったるいリップ音がして達人くんの吐息交じりな熱い息遣いが鼓膜を刺激して下半身がきゅんと音を立てた。
 ハムッと唇を食すように口内で舌を絡ませると、達人くんが私の後頭部を手で支えながらベッドの上に押し倒した。

「あかんわ名前ちゃん。ムラムラしてまう…このまましてもええかな?」

 そう言いながらも達人くんの舌は私の首筋に移動してちゅうちゅうと吸い付いている。なんなら既に達人くんの手は私の服の中に入り込んでいてブラを外しにかかっている。
 でも―――

「いや。私がしたいのはちゅーだけ。それ以上は今はしたくない」

 ガーンってあからさまに顔面に雨雲背負ってる達人くん。ほっぺたがヒクヒクと蠢いていて眉間にシワを寄せる。

「ちゅーしとったらその先もしたならへん?」
「ならへん!」

 エセ関西弁で返すと渋々私の上から降りた。押し倒したままだと覚醒するからって、私を膝の上に乗せてラッコ座りでまた徐ろに舌を絡ませる。頬に触れる達人くんの大きな手はとても暖かい。思いっきり抱きしめて貰いながらするキスは幸せ以外のなんでもない。
 うんやっぱり、したいかも…。でもそれを達人くんに伝えるのは癪だ。それなら…と、私は腕を伸ばして達人くんのガタイのいい身体の曲線をなぞってみる。

「んっ、名前ちゃん、ちょおたんま!あかんやんその手ぇ、可愛すぎやろ。俺ん身体触りまくってどないしたん?」
「達人くんのせいだもん」
「え?なに?なに?どゆこと?」

 小首を傾げる達人くんに勢いよく抱きついた事で、そのまま私が彼をベッドの上に押し倒す形になる。いきなりのことなのに慌てることなく私をしっかりと抱き留めてくれる達人くんの大きな身体。そこにぎゅうっと抱きつくと、よしよしって髪を優しく撫でてくれる。
 あーもう、そーゆーのたまんない。ほんとずるい。
 私は達人くんの耳元に唇を寄せて「したくなった」そう言えば、パァーっと顔を明るくさせて嬉しそうに笑ってくれた。

「達人くん私がいるのにいつも他の子にもモテたがるからちょっと悔しい」
「…名前ちゃん、俺ごめんやで!名前ちゃんにそんっな気持ちにさせとったなんて最低やん」
「これから私以外にモテようとしないこと、いいね?」
「勿論やで。ほんまにめっちゃ好きやで」
「じゃあ脱がせて」
「おう」

 両手を広げると私の服をそれはもう優しく脱がせてくれた。泣きそうな顔で私を抱きしめる達人くんに免じて今回は大目に見てあげようと思う。