時間割票を見てニンマリ。金曜日の3限が終わった私は颯爽と2組のドアを開けた。そのままそろそろと入って窓際の一番後ろの席で寝そべっている孝二くんの腕をちょこっとつつく。昨日は遅くまで防衛任務だったから眠っていたんだろう孝二くんが「んあ…」って声と共に薄目を開けて私に気付くとふわりと目を細めて口端を緩めた。
「どしたん?」
「ジャージ忘れちゃったの、貸して?次体育なの」
「はいはい」
2限が体育だった孝二くんはそのままジャージスタイルで授業を受けていて、その場でジャージを脱ぐと私に差し出した。柔軟剤のいい香りと、孝二くんの匂いのするこのジャージ。思わず胸に抱きしめると「アホやろ」って小さく笑った。
「なんで?」
「そんな嬉しそうな顔すな」
「嬉しいもん。孝二くんの匂いするしー」
「ほんまアホやって。ちゃんと返せや」
「はーい」
孝二くんジャージを抱えて自分のクラスに戻った私は直ぐ様それに着替えた。ちょっと生温い孝二くんの温もり付きのジャージは当然ながら女の私にはブカブカで袖が長い。指がちょこっと出るだけの萌え袖を永遠に眺めていられるかもしれない、なーんて。予鈴が鳴り響く校舎内から危うくスキップでもしたくなっちゃいそうな程にルンルンしながら校庭に出ると「あれ、そのジャージ隠岐くんの?」早速クラスメートに話しかけられた。
「うん孝二くんのー!ジャージ忘れちゃったから借りたの。絶賛孝二くんのめっちゃいい匂いと温もり付き」
「このこのー!ズルイんだからぁ。私も着たいわ」
手を伸ばす友人からひょいっと離れて自分の両腕を擦る。
「ダメダメ、孝二くんは私のダーリンだからね」
みんなに羨ましがられながらも、私は終始笑顔で体育の授業を終えた。
それから昼休みを迎え、5、6限は実習だったからまだ脱がずにそのままジャージで過ごした。へへへ。今日はずーっと孝二くんの温もりに包まれてる一日だ。6限が終わりHRも終われば、廊下にブレザー姿の孝二くんが立っているのが見えた。
「いつまで着てんねん」
パコって軽く叩かれるけど全然痛くない。
「脱ぎたくないんだもん。隠岐って書いてあるからね、みんな私のこと見て羨ましがってたよ。ご機嫌だよー私」
「よう分からんなぁ…まぁええけど。今日はそのまま帰るん?それともこっちにする?」
孝二くんはスルリと自分の首に巻いてあったネクタイを外すとそれを私の首に緩く巻いた。ビバ、交換ネクタイ!これも最高!
「両方欲しい」
そう言う私にまたポコッと孝二くんの緩い鉄拳が頭頂部を掠めた。そのままサラリと髪に指を通されてトクンと胸が高鳴る。
「欲張んなぁ。早よ帰んで」
孝二くんが私の手を取ると迷わず指を絡ませた。繋いだ手を強引に引っ張って歩き出す。隠岐ジャージを着て、隠岐ネクタイを首に巻いた私を他のクラスの女子達も皆、ちらちらと隠れ見ているからやっぱりちょっと優越感で孝二くんの腕にきゅっと絡みつくと、呆れた様に「アホやん」って笑った。結局の所今日も私は孝二くんにきゅんとしながら生きている。