合宿所を目指し森の中を歩いていた名前。人気を感じて目をこらすと種ヶ島がこちらに向かって歩いてきていた



「お、おったおった。危ないやろ。こんな暗い時間にこんな森の中歩いとったら」
「修二さん…。ごめん。迎えに来てくれたの?でも大丈夫だよ、合宿所内なんだから」
「そういう問題とちゃう。大事な大事なお姫様が夕飯食べてなにも言わずにさっさとどっか行ってしもたらそら心配するわ」
「ごめんね。じゅさくんと元気に言い合ってたからいいかなって思って(笑)」
「好きで言い合ってるんとちゃうで」
「だろうね(笑)」


迎えに来てくれた種ヶ島に安心し一緒に宿舎を目指し歩みを進める。ふと空を見上げると綺麗な星空が広がっている


「修二さん、みてみて!綺麗だね〜」
「せやなあ」
「星空見るなんて久しぶりかも。ねぇ、せっかくだしちょっと寄り道しない?」
「寄り道?どっか知っとるん?」
「うん。こっち」


名前の案内で着いたのは森の中にぽつんとある開けた場所。名前に促され芝生に寝転がると視界には一面に広がる星空。合宿所敷地内にこんな場所があるとは、と種ヶ島は驚いた


「こんなとこよう知っとったな」
「ここに来た1年目にね、今日みたいに散歩しててさ、真っ直ぐ部屋に帰るのもなんか嫌だったからいろいろ探検してたんだよね。監視カメラとか、ドーベルマンくんたちの目につかないところ探しながら歩いてたらここに出て、疲れたから一休みと思って寝転がったらこの星空だったんだ。都心部とかいつもいるところだと絶対に見れないから感動しちゃって。それから天気のいい日はたまに来るようにしてたの」
「ほ〜。確かに普段いるところじゃ見れへんわな」
「さすが山奥!って思って(笑)去年もよく来てたんだ。ほら、去年の合宿の時わたしよくいなくなってたでしょ?」
「せやなあ。いっつも散歩しとったって言うからどこまで行ってんねんとは思うとったけどこんなとこにおったんやな」


答え合わせのように名前はいたずらな表情で話していく。そんな名前をみて種ヶ島が


「で?モヤモヤしとったのは解決できたみたいやな」
「…。修二さんも気づいてたの?」
「俺だけやないで。サンサンも毛利も、越知も心配しとった。大将も絶対気づいてるやろうし。ていうかGenius10はみんな気づいとると思うで」
「あちゃ〜。わたしもまだまだだね(笑)」
「そら俺らのお姫様やからな。気づかんわけないやろ」


種ヶ島に気づかれないわけはないと思っていた名前だったがまさか10人全員にバレているとは思わなかったようで驚いている


「代表発表されてから日に日に追い込まれたような顔しとったし?なにより毛利があんなにあからさまに心配しとるのに名前が何も言わんのが何よりの証拠やな」
「あれま。やってもーた」
「あれま。やないで。まぁ悩みは解消されたみたいやから結果的にはええけど。俺にくらい言ってくれてもええんちゃう?」
「うん。ごめんなさい。なんか自信なくなっちゃってさ。今のままじゃどうしていいかわかんなくなったから入道監督に会いに行ってきた。監督のとこにはまだ高校生負け組もいるからその姿見て自分奮い立たせてきたよ。だからもう大丈夫」
「さよか。今回は俺ら高校生に加えて中学生おるからな。名前の負担も大きなるやろし、いつもみたいに俺ら20人ちゃうくて14人な上にお気に入りの平も原も、おまけに弟もおらんもんな。そら心配事も増えるわな。すまんな、すぐ気づいてやれんで」


名前が少し話しただけでここまでわかる種ヶ島はさすがだ。飄々としていて自分勝手に見えるが、本当はよく周りを見ていて人の変化に敏感な種ヶ島。名前にはそんなところが一緒にいる上での安心材料であった


「ううん。ちゃんと話さなかったわたしが悪いし、皆のこと信じてるのに不安に思って申し訳なかったんだ。だからなんか言い出せなくて。本当にごめんなさい」
「ちゃんと解決できたならええんやない?1年目の時は耐えられなく爆発しとったけど今回はそうならんわけやったし」
「それはもう忘れてよ…」


名前が合宿に招聘された1年目の時。いろいろな不安や心配が積もり積もって周りが手を差し伸べたときには遅く、耐えられなくなった思いが爆発し部屋で泣き出してしまい、暴れてしまった。それを知っているのはGenius10の10人と入江 加治そして中学時代から親交のある平と原だけだ。ダイレクトに現場を見た者、後に話を聞いた者、知り方はそれぞれだが、越前名前爆発事件として語られている


「あの時はやってしもたって焦ったんやで、ほんまに。俺名前のこと見てたはずやのになんも見れてへんかったんやなってほんまに後悔したんやもん」
「ほんと皆には申し訳ないと思ってるよ。精神コーチがいてそこのケアまでしてるのに、支える側のマネージャーが潰れるなんてさ。あっちゃいけないのに。」
「でもあの一件でほんまの意味でちゃんと名前を守らなあかんって決意したんやけどな」
「それ言ってたね。ありがたいことだよ本当に。修二さんは誰よりも早く気づいてくれるからね。感謝しかないです、本当に。なむなむ」


言っていて恥ずかしくなったのか名前は照れ隠しにふざけた様子で手を合わせる


「手合すんやめ(笑)それより名前ちゃんはいつまで修二さんって呼ぶつもりなんかな〜もう練習終わったし今オフやし誰もおらんねんけどな〜」
「あぁ…。なんかどう言ってもここ合宿所だからさ、意識しないと修二さん呼びにしかできないんだよね」
「今はええやん。俺らしかおらんし。ちゅーか今くらいちゃんと呼んでや」
「ん、ごめんね。修二」
「いや、やっぱええな。名前に名前呼んでもらえんの」
「そんな違う?(笑)」
「全然ちゃうよ。ほな悩みも解決したし戻ろか。いつまでもおったら体冷えてまうわ」
「名前直させたのにもういいの?(笑)」
「そんなん部屋でもええわ。明日も明後日も一緒におるんやから今にこだわらんでええねん」
「あらかっこいいこと言うね」
「当たり前や☆」


ふふんっ。と鼻高々な言い方をした種ヶ島に手を引かれ起こしてもらい、そのまま手を繋いで宿舎までの道をゆっくり歩いて帰った