「失礼します。」

「おや、名前ちゃん。早かったね。どうだい?みんなの調子は」

中ではいつも通り黒部コーチがモニターを見つめ齋藤コーチが名前招き入れた。


「まずまずですね。高校生はペースを乱すことなく調整できてますし、中学生は早く世界と試合がしたくてたまらないみたいです。ただ徳川くんはもう少し落ち着かないといけないかもしれません。」
「それは何故?」
「確かに調子も悪くないしメンタル的にも悪くはありません。でも、こう……燃えすぎた闘志?みたいなものが溢れすぎてあのまま試合に臨めば想定外のプレーがあった時、冷静さを欠くかもしれません。まぁ本人もそれがわかってるから今日は入江くんと練習したみたいですけどね。」
「なるほど。燃える闘志も燃えすぎるとよくないですからね。そのあたりのコントロールは齋藤コーチとキミに任せます。」
「はい。あと遠山くんに鬼さんとの試合を組んでもいいですか?どうしてもわたしと試合がしたいと言ってくれてるんですけどわたしは試合する気はありませんし、代わりに中学生が相手をしてお互い全力を出しすぎて怪我なんてされたら困りますから。」
「いいでしょう。明日か明後日で試合を組んでおきます。これを機に遠征前に一度中学生vs高校生で試合をしておくのもいいかもしれませんね」
「ですね。そしたら高校生と中学生のいいダブルスも見つかるかもしれませんし」
「そうだねぇ〜。で、名前ちゃんはいつまでその喋り方するの?」
「いつまでって今は報告中ですし、まだ練習中なので崩すつもりはありませんよ」
「ありゃりゃ。相変わらずだねぇ」
「切り替えができるのはいいことです。あなたも余計なこと言ってないで仕事してください」
「ですって。齋藤コーチ」
「はいはい。」
「ではわたしはこれで。そろそろ中学生のロードワークも終わる頃ですし柘植コーチにも報告してきます」
「わかりました。また何かあれば報告に来てください。」
「はい。では、失礼します。」
「名前ちゃんまたね〜」


パタン

「はぁぁぁ〜〜〜。」

名前は大きく溜め息をついた。マネージャーとしてこの合宿に参加しているが名前はこの報告の時間がどうも苦手だった。コーチが嫌いなわけでも、報告が嫌なわけでもなく、ただあの空間が苦手なのだ。常に監視されているモニター、パソコンに向かいデータをまとめるスタッフ、そしてその空間で存在感を放つ黒部コーチと齋藤コーチ、今ここにはいなかったがもう一人、柘植コーチ。

それぞれのコーチに苦手意識はないが3人が揃ったとき、その3人があのモニタールームで揃ったとき、その空間空気感が何度来ても苦手なのだ。

だがそうも言ってられないので柘植コーチに会うべく中学生のロードワークゴール地点を目指して歩みを進める





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「あれ、名前ちゃん?」
「あ、奏多くんとカズヤくん。終わったの?」
「うん。僕らは今日この午前で練習終わりだから昼食でも食べながら午後の計画立てようと思って」
「なるほど〜わたしもはやくお昼食べたいな〜」
「まだ食べられないのか?」
「うん。柘植コーチに報告が残っててね。中学生のとこにいるのはわかってるんだけどゴール遠いからさ」
「そうか。」
「それならまだかかりそうだね。僕たちで席とっておいてもいいけど…」
「いや、どれくらいかかるかわかんないし2人は2人のペースで食べて午後過ごしてよ。気遣ってくれてありがとう」
「そっか。わかった。無理しないようにね。」
「うん、ありがと。じゃね!」


このように入江や徳川だけでなく高校生は名前に気遣いを怠らない。それが名前にとってこの男だらけの、厳しい合宿場での安心感に繋がっている






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中学生ロードワークゴール地点
中学生が息を切らしている中名前の目的の人物はいた


「柘植コーチ、お疲れ様です」
「ん?名前か。どうした。」
「報告にと思いまして。黒部コーチ齋藤コーチには先ほど報告済みです」
「そうか。おい!中学生ども!!クールダウンをし昼食に行け!午後は自主練!試合をしてもいいがするならペアは先ほど伝えたとおりだ!それ以外は認めん!以上!」
「「「ありがとうございました!」」」


中学生に指示を出すと柘植、名前は歩きながら話を始めた。


「で、キャツらはどうだ」
「悪くありません。詳しくは2人に聞いてください。データ化されてるはずです。今はテンションを落ち着けることが大切かと思います。そのため徳川くんが今日は入江くんとペアで練習していました。2人にはまだ言ってませんが、切原、真田、それにわかりづらいですが不二。この3人も少し落ち着かせないと試合になったとき冷静さを失うかもしれません。」
「ほう、徳川が。珍しいな。」
「はい。なのでお互いの士気を下げずにテンションを抑えるため、遠征前に一度高校生vs中学生で明日か明後日に試合を組むと言ってました。中身は2人に聞いてください。オーダーも任せてあります。」
「わかった。ほかには何かあるか」
「そうですね。そろそろ高校生と試合でもしようかと考えてます」
「お前がそんなことを言うなんて珍しいな。いつも避けてるじゃないか」
「そうなんですけどね。今日遠山くんに試合しようって言われて考えたんです。どうせW杯では試合するんですしそろそろ詰めた練習をしないと、と思いまして」
「わかった。2人には伝えておこう」
「ありがとうございます。午前の報告はこれくらいです。」
「よし。これから昼飯だろ?今行っても席埋まってるんじゃないか?」
「ですね。少し部屋で休んでから行こうと思います。では、失礼します」



「あぁ。ご苦労」



「はぁぁぁぁ。(やっぱり報告はしんどいなぁ…)」


名前はまた大きな溜め息を吐いた。とにかく報告で疲れた身体をいったん休めに自室へと足を向けた