昼食を食べ終え、名前は試合の準備をするため自室に戻ってきていた


いつもはヘアクリップで留めている綺麗なロングヘアーをきっちりお団子にし、長い前髪も留め、ジャージの下にはスコートを履き、左腕にリストバンド、最後に3本のラケットを確認する。マネージャーは自分以外にいないのでタオルやドリンク、念のためアイシングの準備もしておく。そろそろコートに向かおうかとしていた頃ドアがノックされ返事をすると種ヶ島がいつもの調子で入ってきた


「名前〜準備はどや?ん〜久々のお団子もええなぁ」
「ありがと。そろそろコートに行こうかと思ってたとこだよ。修二さんも準備よさそうだね」
「俺はいつでもええよ。それに2人やねんからいつもみたいに呼んでや」
「これから練習するんだから嫌だよ。まだ練習中でしょ。」
「ちぇ。相変わらずテニスプレーヤーの名前ちゃんはしっかりしとるわ」
「ふふっ。ありがと。さ、いこっか」
「おん。あ、その前になさっきの毛利やねんけど、俺との試合が終わった後名前が大丈夫そうやったら試合したったらどうかと思うんやけど、どうや?」
「うん、大丈夫だよ。じゅさくんともしばらく試合してないしね。じゅさくん試合の話になるといっつも目キラキラさせるからさっきも申し訳なかったんだよね」
「ほな決まりやな。よし行こか」


試合後の毛利との試合のことを話しながら2人はコートへ向かった







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相変わらず名前との試合はゾクゾクする。


マネージャー業をしているときは年下には見えず高校生の自分たちと同じ場で戦い、自分たちに負担を一切かけないように支えに徹する。本当に年下には見えない。かと思えば練習を離れてしまえば年相応の女の子。今時の中学3年生だ。周りと話しているとき、食事をしているとき、篤京や毛利と一緒にいたずらを仕掛けているとき、日常で見せる表情や仕草は中学3年生そのものだ。


そんな彼女が試合になると目つきが変わり一切の隙を見せない。彼女と試合をするまで全てのショットを無効化できるのは自分くらいだと思っていたが、彼女はいとも簡単にそれをやってのけた。おまけに決め球を打たせてはくれない。自分より強いのは平等院くらいだと思っていたし、已滅無があればそう簡単には負けない。そう思っていた。だが彼女には勝てなかった。勝たせてもらえなかった。

この合宿で平等院以外に負けたことのない自分がたった15分で負けた。そんな彼女に興味を持ち、ちょっかいをかけ続け、いつからか彼女が練習するときの相手は自分になっていた。


彼女とする練習は試合であってもただの打ち合いであってもゾクゾクする。次はどんな球が来るのか、どんな球なら決めさせてもらえるか、自分を高めるためにもとてもいい時間だ。


今日は久しぶりに彼女との練習ができるとなりいつもの練習では感じない高揚感に満ちていた………のに。



「毛利ぃ。お前なんでこんな早くおんねん!俺が連絡してから来いって言うたやろぉ!」


彼女と二人きりの時間はたった10分で幕を閉じた。


「え〜だって修さんばっかりずるいわぁ。俺も名前の試合見たいっすもん」
「ずるいとかちゃうやん…」
「まあまあ、来ちゃったのは仕方ないしじゅさくんも修二さんのプレー見て勉強できるし?それにどうせじゅさくんとも試合するんだもんいつからいても一緒だよ」
「なんでや…俺はせっかく久しぶりに名前が練習するって言うから俺との時間やと思ったのに…」

2人はコートで打ち合いながら会話を続ける


「まあ2人での練習は日本出発するまでにしよう?修二さんじゃないと試せない技もあるしね」
「………名前がそう言うなら今回はしゃあないなぁ…」
「そーゆーことっす!修さん!!」
「うっさいわ!毛利!この球当てるぞ!!」
「ひゃ〜怖い怖い」
「修二さん、八つ当たりしないの。ほら、最後の1球いくよ」
「あぁー!あかんって!」


なんとか返したものの結局名前に決められてしまい6-3で負け。しかも3ゲーム中2ゲームは彼女の試す技が失敗したため入ったポイント。故に自分で勝ち取ったのはたった1ゲーム。今回もしっかり負け


「あー相変わらず決めさせてくれへんな、名前ちゃんっ」
「そう簡単に負けられないよ。でも今回は結構やばかった」
「そんなこと言うて新技失敗しただけやろ」
「そんなことないよ。失敗したのだって修二さんの球が際どいとこ来るから打ち切れなかったわけだしね」
「さよか。次はその技すら打たせへんから覚悟しとき」
「ふふっ。わたしももうミスしないからね」


そんなことを話しつつベンチにいる毛利の元へ2人で向かう。毛利はあのキラキラした目で名前をみていた


「名前!すごいなぁ!なんなんあの技!!俺にも打って!!」
「あほ。俺が返せへんのに毛利が返せるわけないやろ」
「そんなんわからんじゃないですか!」
「たぶんじゅさくんには無理だよ〜(笑)これをじゅさくんに打つときはちゃんと完成してから打つから(笑)」
「えぇ〜どくしょいなぁ名前は」
「じゅさくんには負けたくないからね(笑)10分休憩したら試合しよ。じゅさくんアップしといてね」
「おん!今日こそ負けへん!!」



そう意気込んだもののもちろん毛利は負けた。6-0で惨敗した。俺が勝てへんのに毛利が勝ててたまるか。

そんなことを思いながら試合を終えこちらに向かってくる2人にタオルを用意して待つ。仲よさそうに話しながら戻ってくる2人は兄妹のようだとなんだか微笑ましくなったのは俺だけの秘密。

「ほんま名前は可愛えなぁ〜」
「ぎゃっ!!やめろ!汗かいてるんだから抱きつかないで!!」
「んなこと言って涼しい顔しとるやろ〜」
「やめてってば!!!」
「もうちょっと〜(スリスリ)」


前言撤回。全然微笑ましくなんかない。


「毛利いぃぃぃぃぃ!!離れろ!!!!」




こんな練習もいいかもしれない