ギロクル





重たい目蓋を無理やりこじ開け、パソコンの画面へと視線を集中させる。キーボードの横においてあるマグカップの中でカフェインがゆらりと揺れ、空気の震える音を聞く。どうせここまで入ってくる奴は限られているのだから、と気にすることもなく視線はモニターに向けたまま指は勝手にキーボードをたたく。 そのまま全神経をモニターに並ぶ文字の羅列に集中させれば瞬く間にほかの事などどうでもよくなり、0と1の狭間に浮かぶようにキーボードを叩き続ける。
ギィ、と小さくなった安物のパイプベットの軋んだ音でふと覚醒を促された気分に陥り、しぶしぶながら現実世界へと帰還する。やはりというべきか、思ったとおりというべきか、そこにいたのは赤い髪の男だった。
「もう、終わったのか?」
「終わったようにでも見えるのかい?」
「いや、」
「くーっくっくっく、よくわかってんじゃねえか」
「もう何日寝ていないんだ?ひどい顔をしているぞ」
「あ?ああ、3日と16時間だなあ」
「寝ないと身体を壊すぞ」
「何?先輩心配でもしてくれてんの?」
「な!」
「くっくー、気持ちだけありがたくもらっといてやるから早く出ていきな、そこにいられると気が散る。」
「お前な、いい加減にしろ」
その言葉を聴いたのを最後に勝手に身体が持ち上がりモニターの電源がプツリと落とされる。ああ!という抗議の声はどうやら聞き届けてはもらえないようで、無理やりに先程男に乗られて悲鳴をあげていたベットまで運ばれ丁寧に布団までかけられた。
「離せっての」
当たり前のような顔で真横にぴったりと寄り添って身体を横にした男は枕がわりに腕を差し出す。
「休め」
「終わったらな」
「今休め」
わざと冷房を入れて室温を寒いくらいに下げ、眠ってしまわないようにしていたのにベッドの中に入れられてしまってはなすすべも無く意識が睡魔に絡め取られていく。


しかし意思とは裏腹に休息を求めていた身体はその安らぎに身を委ねるように目蓋を重たくしてゆく。2時間だけ、と小さくつぶやき限界を迎えた身体を睡魔に任せれば瞬く間に意識が遠ざかり辺りは闇に包まれ、何かに縋るように伸ばした手の平は温かい何かをつかんでいた。





おまけ
「ん、」「ようやく起きたのか」「今、何時?」「19時だ。」「寝たの3時だから…」「16時間だな」「ちょ、二時間で起こせっていっただろ」「聞いていないぞ」「くそ、あと1時間で提出用の書類纏めなきゃなんねえ」「そうか、」「そうか、じゃなくておっさんも手伝うんだよ」「わかったわかった」「あ ー、くそ!あんたのせいだからな!」

















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