ギロクル/死にたがりクルル。大幅捏造設定あり
「ヒトゴロシ、お前なんて生まれてこなければ良かった」
「急にどうしたんだ」
「俺が物心ついてから戸籍上の親に言われ続けた言葉」
「………」
「なぁセンパイ、一個だけお願い聞いて」
「なんだ?」
「俺が壊れたら、あんたが俺を殺せ。」
「何を…」
「いいから。」
にやりと笑う男は美しかった。
基地の至る所で敵襲を告げるランプが灯り、基地全体を赤く染めていた。常ならば全員同じ場所に集合するのだがどうにも一人足りない。嫌な予感がして文句を言うケロロを押し退けてクルルズラボに走った。
歯の形をしたドアを無理に撃ち抜き、蹴破った。乱暴な開け方だ、とは思うが今はそんな事に構っている余裕はない。一刻も早くクルルを探すべきだ、何故だか嫌な予感ほどよく当たるのだ。
「くく、セーンパイ。ちょっとばかし遅せぇんじゃねぇの?」
「何がだ!それよりも早く行くぞ、ばらけた所を狙われると危険だ」
「クックー、もしかして気付いてねぇの?幸せな頭してんなぁ」
嫌に間延びした下卑た話し方でおかしな事を言うクルル。薄々気付いていた、けれど認めたくなかった。目の前にいるはずの敵を本能が拒否していた。
「何の話だ」
「だからぁ、俺が敵だっての。」
「笑えない冗談は後にしろ」
「冗談じゃねぇんだよ、おっさん。」
「だから何の「分かんねぇなら身体で理解しな」
突き付けられる銃口。ばーん、と半ばふざけた擬音と共に撃ち出されるのは紛れもない実弾だ。やけに鼻につく焦げた匂いと局地的に黒ずんだ足元に敷き詰められた鉄。嫌な予感は当たっていた。
「先輩、敵はここだぜぇ。しっかり狙って撃ちな」
「ふざけるな!」
「ふざけてねぇっての。俺がおかしくなったらあんたが殺してくれるんだろ」
「そんな…」
「ほら、早く」
撃たれる、と思った。
それは一瞬だった。
反射的に体制を崩し、弾丸を避け、すぐにクルル目掛けて走り出した。抵抗しないクルルを床に叩き付け、無力化する。組み敷いた身体は普段から運動しないせいかそれほど筋肉がついておらず、かといって無駄な肉もつかずにほっそりとしていた。
「殴って気絶させればよかったのにだからあんたは甘いんだよ」
「な…」
騒音が鳴り響き、自爆スイッチの起動を教えた。慌てて辺りを見回し、拘束する手が緩んだその隙にクルルの手が伸び、逆に床に倒され、馬乗りになったクルルの身体がやけに重く感じる。病的に白い指先が首に巻き付き呼吸器を圧迫した。
酸欠で揺れる視界の中いつか聞いた話を思い出す(あんたが俺を殺せ…)そんな事できるはずがなかった。愛しい者を殺せるはずがない、仮にそんな事ができたとしたらとっくに地球侵略は終わっていたはずだ。
生理的な涙で滲んだ視界の先で顔を不格好に歪めて笑うように泣くクルルを見る。これは幻覚だろうか、クルルの泣いた顔なんて見たことがなかった。
徐々に指先が揺るまり、やがて真っ白な指は赤い瞳をちらつかせるクルルの顔を塞いだ。
「なんで…殺してくれねぇんだよ…どうして…俺は…」
「クルル、」
抱き締めた身体は幼子のように小さく、震えていた。
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