ギロクル/無機物(PC)視点。喫煙クルル








僕は1と0中に浮かんでいた。それは落ちている最中だったのかもしれないし、もしかすると昇っている最中だったかもしれない。だが僕はそれでも0と1の狭間に揺られていた。ふわりと廻りが明るくなり、ゆらりと煙を漂わせながら僕の方を覗き込む人影がひとつ。赤いマグカップに注がれた黒い液体はゆらゆらと揺れ、名前も知らぬ硝子の向こう側の男の人は煙草の煙をくゆらせている。僕は男の人をえいさんと呼んでいる。アルファベットの一番最初の人。僕が初めてであった一番最初の人。
えいさんのおうちにはもう一人だけ人が住んでいる。僕はその人をびいさんと呼んでいるのだ。これも実に簡単な理由だ。にばんめのひと。でもびいさんはあまり僕に触らない。精々えいさんを無理矢理どこかへ連れて行くときに電源のボタンに触れるくらいのものだ。本当はとっても寂しくなるから嫌なんだけれどえいさんはいつも僕の側にいてくれるから僕は少しくらい寂しくても笑ってまた後でね!って言えるんだ。
えいさんはよく煙草を吸う。その煙が空気に混ざって僕に触れ、優しくとけてゆくのだ。でもびいさんは煙があまり好きじゃないみたいでよく窓を開けている。ぽかぽか差し込む光は暖かくて好きだけれど僕はやっぱりそれでもえいさんの煙の方が好きなのだ。熱を逃がすファンがくるくるとまわって涼しい風が送り込まれるついでにえいさんの煙を空気が運んで僕の中で溶けた。ふわりと優しい温度のそれが身体に悪いのは知っているが僕は何も言わない。えいさんが良いならそれでいいんだ。それでもえいさんは三日に一回くらい煙草の量を減らす。僕の前では自分の身体の為だとぼやいていたけれど僕もえいさんもびいさんもそれが嘘だと知っている。僕はえいさんがびいさんに心配をかけたくないのだ、と思っている。僕がえいさんをすきなようにびいさんもえいさんが好きで、えいさんはびいさんが好きなんだ。



何も言わず側にいる(これが僕の愛の形)









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