クルル+睦美






隣でふわふわ笑いながら何かを話す女の子。ごめんね、とびっきりの電波じゃないと俺には何も届かないんだ。
「それでね、あの先生が…」
「うん」
適当な相槌。だから何にも届いてないんだって、ね
微弱な電波がだんだん大きくなって頭の中を心地よく満たしていく。
腰に何か硬いものが当たる衝撃。予想通りの男がそこにいた。
「クルル、痛いよ」
「知ってたなら避けろよ、馬鹿。ほら」
当たり前に差し出してくるのは朝に持っていくように言った傘と鞄と白い袋に入った何か重そうなもの。
「しょうがないなぁ」
「で?」
「今晩はカレーだよ」
「上等」
「もう帰るの?」
「いや、今からちょっと隊長のとこ行ってくる。夕飯までには帰る」
「いってらっしゃい」
荷物を受け取ればクルルは足早に今来た道を戻りだす。途中で何かに気づいて戻ってきたクルルに鞄の中から素早く携帯を取り出し渡せば、小さくサンキュとつぶやいてまた戻っていく。
その背中がやけにい小さく見えて、女の子と荷物を置いたまま走り出す。
まいているマフラーを外し、後ろからクルルの首に巻きつける。
「クルル、もう寒いからしていきなよ」
「にょー」
「じゃあ家で待ってるから」
急いで荷物と女の子の所へ戻る。荷物が無くなったりしていればクルルが帰ってきてから嫌味のフルコースだ。
「サブロー先輩」
「どうかした?」
「あの…私…」
「うん」
「……やっぱりなんでもないです。今日はありがとうございました。もう家すぐそこなんで帰りますね」
「うん、気をつけてね」
小走りに帰っていく女の子を見つけながらあの子の名前は何だっけと考えるが思い出せない。空を見上げれば、空の端っこに雨雲。クルルが帰ってくるまで振らなければいいのに、面倒くさがって帰ってこないかもしれない。
「とりあえず帰ってカレーでも作ろうかな」





雨に降られたクルルから早く傘もってこいとメールが入るのはまだ先のこと。















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