戯言シリーズ/いーちゃんと玖渚
「あ、猫!いーちゃん、猫だよ!」
そういって僕にがばと抱き付いてくる玖渚。背中に押しつけられた心音とほのかな温もり。ばたばたと足を交互に動かしながらあそこ!と楽しそうに指差している。いや、違うか。楽しそうなのではなく楽しいんだ。こいつは「楽しい」以外を知らないから。ずっと笑っているこいつが羨ましい、とは思わないが。決して。
「みてみて、僕様ちゃんと同じ青い猫!」
「ああ、あいつか。あの猫、僕が飼ってるんだぜ。名前はユウっていうんだ」
「そっか、ユウか。うん、いい名前だと思うよ。」
「嘘だよ」
「うん、知ってる。でもね、僕様ちゃんいーちゃんの言うことならなんでも信じてるから」
真っ直ぐな死線、曇りのない瞳、真正面、やめてくれ、僕はそんな人間じゃないだ、一度逃げたのに、お前を捨てたのに、壊したのに、無くしたのに。
「ねえ、いーちゃん。僕様ちゃんはいーちゃんのこと、信じてるよ。」
玖渚の青い瞳にうつった僕の顔はずいぶんと情けないものだった。
猫はじっとこちらを見ていた(真っ直ぐな視線に僕は溺れ死ぬ)
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