少女と男










ねえ、先生 先生は何を見ているの?


私は私以外の何物にもなれない。そんなことは分かっているし私は死ぬまで私のままだ。生きてきた証を捨て、名前を捨て、全て忘れてしまったとしても私は私を捨てられない。
お前は可愛いな、と言って先生が私の頭を撫でた。ありがとうと言えば先生は笑った。この家には私と先生しか住んでいない。先生は先生で私は私だ。
何の先生をやっているかは知らないし、教えてもらっても理解できる気はしない。けれど家にくる人はみんな先生を先生と呼ぶから私の先生はやっぱり先生なんだ。
私と先生は家族ではあるけれど決して親子ではない。先生は家主であり先生であって、私は居候的な存在であれど断じて娘などではない。強いて言うならペットのような存在だ。
ペット、響きは良くないけ れどこの表現が私と先生の関係に一番近いような気がする。あくまで私の主観での話であって先生は私を娘のように思っているかもしれないけれどそれはそれでなんだか失礼な気がする。
先生は基本的に大きいモニタの前にいる。時折笑ったりしながらも基本的には眉間にしわを寄せて煙草をぷかぷか吸っている先生はお世辞にもかっこいいとは言えない。服は汚いし髪は寝癖でボサボサ、ついでに足も臭い。でも私はそんな先生が大好きで仕方ない。
けれど私が先生の恋人になってあげるとすり寄っても先生はいつもこっちの話なんてまるできかないで適当にあしらってしまう。そんなところまで好きだから救えない。
先生は基本的に私の話を聞いてくれない。いつも私が何を言っても聞こえなかったふり をする。私の話をちゃんと聞いてくれない意地悪な先生は嫌いだけどそのあとに優しく頭を撫でられるとすぐに許してしまう。
私は先生と全くかみ合わない。
先生はお魚が大嫌いで私は大好き。先生は私とは違って柔らかいご飯が好きで身だしなみに気を遣わなくて背が高くて煙草を吸う。
私は常々先生の恋人でありたいと願っているけれど先生は私をただの家族としてしかみていない。
何だか腹が立ってきて私は先生の膝の上に乗って頬に思いっきり爪をたてて逃げた。先生は涙目になりながらも耐えて私を追いかけてきてくれる。
先生は一日中家にいる。たまに外にでている日もあるけれどそれもすぐに帰ってくるし殆ど玄関先くらいの外出で終わる。私は先生と二人っきりで過ごせるこの家が好 きだし先生もこの空間をそれほど嫌ってもいない、はず。
けれど私は知っている。私は死んでも先生の恋人にはなれっこないし先生は私の言葉を理解しない。



私がネコであるかぎり先生は私を理解しない。

















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