ギロクル






今日は3月14日、世間ではホワイトデー等と呼ばれ、ちょうど一か月前のバレンタインデーと対をなす存在だ。
しかしそんなホワイトデーもうちの隊長からすれば今日はお返しに何を送るかを考える日ではなく余りっ放しの在庫を如何に売りきり、侵略予算を増やすかという日らしい。
ぴったり一か月に先輩にチョコを渡した、が正直な所ホワイトデーに期待なんてしていない。まずあの朴念仁がホワイトデーなんてものを知っているとは思えないし、ここしばらく外へ買物に出掛けた様子もない。
折角だから先輩にホワイトデーに関してある事ない事吹き込んで混乱させてやろうと先輩のテント付近まで移動するように作ったプログラムを探し、起動した。
地面からぴょこりと顔を出せば驚いた顔で焚火をつつく先輩の姿。相変わらずだな、と小さく呟き何食わぬ顔で隣りに座った。近頃順応性が高まったらしく既に表情が戻っているのが少しだけ悔しい。やはりそろそろ新たな登場方を考えるべきだろうか。
「どうかしたのか?」
「べっつにー、ただ今日が何の日か分かってねぇ先輩に今日が何の日か教えてやろうと思って」
「今日何かあったのか?」
「クク、やっぱり知らねぇのかよ。先輩そんなんじゃ日向夏美に嫌われるぜぇ」
「な、どうしてそこで夏美がでてくるんだ!夏美は関係無いだろう、夏美は」
あからさまに赤くなった顔に無性に苛立ち、無言のまま先輩の足を蹴った。急に何なんだ、という抗議の声にはしらん顔でぱちぱちと爆ぜる焚火を見つめた。
焚火を突く木の棒がごそごそと火の中を駆け回り、少し焦げた銀色の塊が転がり出る。先輩の手が伸び、銀色の塊が少しづつ剥かれ半分に割られたその側面からはもうもうと湯気が立ち込める。
ほら、と差し出された半分を手に取り一口かじってみたがただただ熱く、いまいち味の認識ができない。仕方なく息を吹きかけ少し冷ましてから口に運べば、焼き芋独特の甘さが口の中に広がった。
「どうだ、旨いか?」
「まあおっさんにしては上出来なんじゃねえの。クク、仕方ねえから焼き芋、ホワイトデーのお返しってことにしといてやるよ、じゃあな」
初めは混乱させてやるつもりだったというのに、いつの間にかそんな気も失せた。まだ熱を持った焼き芋を齧りながら日向家を通り抜け、足早にラボまで戻る。手の中の焼き芋がやけに温かく感じた。



(先輩焼き芋焼くのだけはうまいんだよな)













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