ふたりの男
じわりと熱を持った左肩を庇いながらぼろい安アパートの一室に倒れこむ。てっきり今の時間ならいるだろうと思っていたこの部屋の住人の姿はいない。肝心な時に出かけてんじゃねえよ、と小さく愚痴をこぼし例のごとく俺に銃弾をプレゼントしたくらいで調子に乗っているであろう黒いスーツのザコキャラをお世辞にも綺麗とはいえないフローリングの上に落ちていた拳銃で打ち殺す。
あいつが帰って来たら文句なしに殴られるなとは思いつつもしつこく追って来ている黒服達をひとりまたひとりと打ち殺す。あと一人というところでガチリという鈍い音と血の気が引く音。よりにもよってこんな時に弾づまりかよ…こんなクソみたいな銃使ってんじゃねぇと心の中でこの部屋の住人兼この銃の持ち主に文句を言い、仕方なく部屋の中に引きずり込んで冷たい床に身体を押しつける。
「お兄さんこんにちは、俺に何かご用でも?」
「う、ううう、うるさい!死ね!」
黒服の男が取り出した拳銃からがき、と撃墜の音を聞き反射的にぐちぐちと爪を男の心臓付近に突き立てる。聞いていて気分の悪くなるような男の叫び声とどくどくと、恐らく鼓動の早さとおんなじに溢れ出る血液。
男が絶命したかと思うとすぐに開いたドアに目をやれば随分と機嫌の悪そうな男が立っていた。まあそれもそうだろう、少し買い物に外に出て帰ってきてみれば家の周辺に散らばった生々しい肉塊と死体。それから部屋の中に飛び散った血と身体の器官の一部がはみ出たまま絶命している一人の男。
「あーあー、お前なあ、また人の家ん中散らかしやがって。後で大屋さんに怒られるのだれだか知ってるか?」
「お前。」
「大正解だばかやろー。」
殴られた。しかも普通に痛い。やり返してやろうかとも思ったがどちらかと言うと今回はこちら側に非があるので大人しく座っておく。
「ほら、こっち来い。弾取り出してやるよ」
見抜かれていたのか、と少し驚くがある意味ではみただけでわかるような傷だ。さすがに銃弾は身体に取り込めないので言葉に従い、きていたシャツを脱ぎ捨ててから膝の上に腰掛ける。趣味は悪いが医者としての腕だけは確かだ。
「また派手にやられやがって、だっせえの」
「うるさい」
「ほらほら喋ってると舌噛むぞ」
肩口に何か冷たいものがあたる感触とその後すぐに続く肉を抉られるやけにリアルで生々しい感覚と激痛。下唇を噛んでやり過ごせば次はずるりと音がきこえてきそうなほどに肉が引きずられる感覚。
「ほら出たぞ、ってお前なあ、いつも唇かむの止めろって言ってるだろうが。」
「一回も言われたことない。」
「細かいことは気にするな、そして血をふけ。」
「どこの」
「肩と口。」
「そんなに気になるならお前がふけ。」
適当な言葉をなげかけながらずっと敷いてある布団に転がった。ふと窓の外を見れば晴天、その青色につられて手を伸ばすがもちろん空へは届かない。それから諦めて手を降ろせばそれは鳥が墜ちて行く様にも似ていた。
ああ、空というものはこんなにも美しかっただろうか。(などといってみるもののそれほど空とは美しいものではない。)
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