ギロクル






「はい、あーん」
一口サイズの小さなハート型のチョコを口元に押しやられる。始めは意味が分からず戸惑ったが今日が2月14日だということを思い出し、急に恥ずかしくなる。
「セーンパイ、顔真っ赤だぜぇ」
「う、うう、うるさい!どうしたんだ、そのチョコは」
「ああ、バレンタインだからってサブローの奴がおいていったんだけど俺様チョコ嫌いなんだよ」
「うう、」
「ほら、先輩あーん」
クルルからチョコを貰えるのは嬉しい、がそれが憎き恋敵のサブローが置いていったものとなれば話は別だ。どっちつかずのまま迷っていれば怪訝そうな面持ちでこちらを覗きこむクルル。食べるべきかそれとも捨てろというべきか悩んでいればラボのドアが勝手に開いた。
またケロロの奴がくだらない作戦の為の兵器開発を依頼しにきたのだろうかとドアを覗きみればそこにいたのはケロロではなかった。
「やぁ、クルル。」
そこにいたのはサブローだった。噂をすれば影というのも嫌な言葉でなかなか的をえているものだから尚更腹が立つ。
素知らぬ顔でベッドに座り込んでいればクルルが口をひらいた。
「クク、何しに来たんだ?実体化ペンの調子でも悪りぃのかよ」
「残念でした。今日はさ、バレンタインだからクルルにチョコあげようと思ってさ。逆チョコってやつ?」
「クックック、いらねぇよ。置いていきたいだけならゴミ箱の中にでもいれていきな」
「ひどいな、本命はクルルに一つだけだよ」
「クク、勝手に言ってろ」
「はいはい、分かったよ。じゃあ夏美ちゃんに呼ばれてるしそろそろ帰るよ」
「じゃあな」
「じゃあね」
サブローは嵐のように訪れ、チョコが入っているのであろう小さな紙袋をひとつ残して嵐のように去っていった。開いた口が塞がらないままぼんやりとさっきの会話を頭の中で反復させてみたがどうにも納得がいかない。おかしいのだ、今日置いていったはずのチョコを渡しにくる事が。
「クルル、その…チョコの事だが…」
「うるさい、おっさんなんか知らねぇ、馬鹿、かませ犬、赤ダルマ」
俯いて表情が見えないクルルの口から溢れるのは悪口ばかりだが、髪の隙間から覗く耳は赤く染まっていた。なんだかこちらまで気恥ずかしく思え、何と言葉をかけていいやら迷うばかりだ。
俯いたままのクルルに覚悟を決め、チョコを抱えたままやり場のなさそうに膝の上に丸まった手のひらを強引に掴みあげ、指ごと口に含めば甘ったるいチョコが口の中で溶けた。
「その、だな…ありがとう」
「クックック、ホワイトデーは三倍返しだぜぇ」
ニヤリと憎たらしく笑うその顔はまだほんのりと赤かった。












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