ミナ山









「どうしたんですか?」
んー、と中身のない返事ですらないうめき声をあげながら、鼻梁を指でなぞり頬を手のひらで包み瞼の感触を親指で確かめる。目の前にある好き放題触っている整った顔は何をしても眉間にシワが寄る事もないし、声を荒げる事もない。
「ちゃんと覚えておこうと思って」
口角が下がって頬を膨らませたその姿はただ可愛らしいだけで怖くはないし、怖いというよりは急にキスをして困らせたくなるような顔だ。決して忘れてしまわないように丁寧に顔の形に沿って指を這わせ、肌に触れる感触を身体に刻みこんでいく。
いつかやってくる別れの日に、すぐ思い出せるようにしておかないとどうにかなってしまいそうだ。この鼻の高さは何センチくらいなのだろうか、髪の生え際に指先をやれば力強く手を握られる。
痛いほど握られているわけでもないのに身動きがとれずにいればミナトがまた口を開く。
「また何か悪い事考えてるでしょう」
またって何だよ、と思わず溢れる笑みを隠す事はしない。いつかくる別れの日は今のミナトにとっては悪い事で有り得ない事で訪れない未来なのだから、あながち間違いでもないのだろう。
「じゃあそんな悪い事考えてる大人とワルイ事する?」
ミナトの耳に唇を寄せ、耳元で囁いたあとに鼻先に触れるだけのキスをすれば、ミナトの顔は真っ赤に染まってまるで紅葉だな等と取り留めのない事を考えてしまう。
胸にゆっくりと体重をかけて床に押し倒せば素直に横になるその姿は愛らしく、たっぷり時間をかけてから言葉が絞り出される。
「……シたいです」
「素直でよろしい」
素直な良い子にキスをすれば、良い子は余裕なさげに笑っていた。



咲き乱れる花の名を、僕はしらない


















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