オリジン組
アイドル(練習)



 運動神経が悪いとは言わないが優れてるとも言い難い。リズムに合わせて体を動かすというのは思ってるより難易度が高く、その上で歌うのだから声が乱れるし、ステップは崩れるし。
 他より明らかにズレた動きにストップがかかった。
「ごめん……」
 自分のせいで何度同じところをやり直ししているか。時間が許す限り個人練習もしてきたのだがどうも駄目だ。新曲、すごく好きなのに。
「……っち、いちいち謝んな、やりにくい」
 爆豪にパンッと後頭部を叩かれる。物言いに比べて手つきは優しく、どちらかというと撫でるようだ。
「ここのとこさ、手が逆だったよ、こう……そうそう、そこね」
 ダンスしながらも細かく見ててくれたのか緑谷がミスをひとつひとつ教えて直してくれる。
「それよりその練習着えろいな」
 全然関係ないことを轟がマイペースに言い放ち、フロアの空気が緩和する。
 アイドル、苦手なことばかりだ。人前で踊る、歌う、笑う、話す。目立って人気者になる。どれも苦手。でも、このメンツだから、足を引っ張っていると分かっても頑張ろうと思えるのだ。
 巻き戻された音楽に合わせステップを刻む。
 次は間違えないように……集中。
create 2018/09/25