爆豪×夢主←轟
ファイト



 爆豪という幼馴染はいつだってリーダーシップをとって、自信に溢れてて、それが羨ましかった。自分に一番足りないものを全部持ってる、そう思ってたから。憧れてたかもしれない。
 だけど、雄英に入ってからそれが少しなりを潜めた。鬱屈した背中を度々見るようになって自分からは話しかけにくくなった。
 環境が変わったのだと思うことにした。
 実際、雄英はこれまでの学校生活とは全く違ったし、クラスメイトたちもなかなか非凡で誰と話していても楽しい。
 とりわけ、よく話すようになったのが轟で、授業で分からないところがあれば教えてもらったり、訓練の後のクールダウンを一緒にやったり、お昼ご飯を一緒に食べたり。なんとなく気付くと隣にいる。
「……またこっち見てるな」
 課題のプリントをつついているさなか、ふと轟が呟く。主語がないからすぐには理解できなかったが、顔を上げた途端、爆豪のあからさまに不機嫌な視線とぶつかって、これかと察した。
「ん……かっちゃん、俺が嫌いになったのかなあ」
 何かあるとすぐ睨まれて、それがもう怖い、怖い。
 首をすくめていると轟が呆れたように息を吐く。
「そうだったらいいんだけどな」
 どうしてか少しイライラとした気配が轟の声に混じって、プリントを押さえる手に手のひらを被せてきた。
 教室に盛大な破裂音が響き渡り、音の出所へとクラスメイトたちの視線が殺到する。
「――ほらな……」
 もう一度、呆れた溜息をつく。
 重ねた手を離すどころかギュッと握ってくる轟。何を言ってるのかさっぱり分からないのだが、泣く子も黙りそうな凶相でズカズカとこちらに向かってくる幼馴染を見る限り、この先の展開はきっと洒落にならない。
create 2018/09/25