服の腹の所にクッションを突っ込んで『みてみて、妊婦さんごっこ』とかシャレにならないことやり始めたもんだから、その場にいた全員の目の色が変わった。
　轟がキリッとしたいい顔で『責任は取る』とか言い出したのを皮切りに、爆豪が『ああﾞ！？　なんでテメェが責任とんだよ、部外者がよ』と爆発し、上鳴が『駄目だぜ、体冷やしちゃ』とブランケットをかけてあげて、『やっぱ酸っぱいもんがいいよな！』って冷蔵庫に頭を突っ込むのが切島。
　唐突に飯田のスマホからモーツァルトが流れ出し、緑谷がクッションを優しく撫でては『あ、動いた？』とか、まず正気じゃない。
　ふう、と息をひとつ。
　ソファの後ろから腕を伸ばしてペロッと裾をまくりクッションを引っ張り出す。
「はいはい、ごっこはお終い。…そのうち"本当"にしてあげるから、今はお終い」
　平らになった腹をポンポンを叩いて耳に囁くと、『せろくん……』とへろへろな声が名前を呼び返してきてひどく可笑しかった。

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