障子
体育



 個性は禁止の体育の授業。雄英にそんな授業があるなんて意外だが、あるからには熟すしかない。
 本日の種目は柔道。
 力技じゃないとはいえ最低限の基礎があってこその話だ。組み合って相手の非力さに戸惑う。
 勢い負けして懐に入れてしまうし、襟を掴めばあっさりバランスを崩すし、これで本当にヒーロー科の生徒なのかと疑いたくなるほどの非力。
 おまけに諦めも早く、さほど抵抗もなく畳と仲良くなって手合わせが終了した。
「……いくらなんでもだろ」
 やる気があるだかないんだか分からない相手に困った顔を向けると、
「だって……障子くんとだなんて、ひどい組み合わせだよ」
 口を尖らせてぼやく。
 確かに、大人と子供のような体格差があるが、しかし、これでは授業の意味がない。
「もう一回、腰入れて」
 すっかり終わる気でいる相手に構えを取ると、えーっと嫌そうな顔をつつも同じように構える。
 今度は少し加減をしてわざと襟を掴ませグウッと踏ん張った。
「もっと力いれて、相手のバランスを崩す」
 障子の言葉に頷き引っ張ったり優位になる体勢を取ろうとしたり、様々な試みをみせる。……が、何せ非力だ。襟をつんつん引っ張ってうんうん唸っているだけにしか見えない。
 組手で乱れた髪と相まって、障子の集中力をごっそり抜き取る。
 うっかり、バランスを崩してしまった。
 なだれ込むように畳に揃って倒れる。
「技あり」
 誰が言ったのか。
 ものすごくしっくりきた。
create 2018/09/25