空は晴天。視界は良好。
進路も指針通り。
波も穏やかで、気温も暖かい。
まるで私の気持ちを嘲笑うかのように
文句のつけようもない昼下がり。


「ナミ……ロビン……」


私は、芝生甲板にふかふかのクッションを出して
日光浴を楽しんでいるナミとロビンに重い足取りで
足音も立てずゆったりと近づいた。


「な、なによNAME!?そんな切羽詰まった顔して…」

「どうしたの?誰か海王類にでも襲われたの?」

「真顔でヤバいこと言わないでよ!!」


今の私にはロビンの暗黒大ボケに突っ込む余裕もなかった。


「私…実は…………

サンジの事が

…めちゃくちゃかっこよく見えて………」



「…え!?」

「…あら…」


そう。これは本当に一大事、大事件なのだ。
私達は海賊で、仲間で、いわば家族のようなもの。
今までそんな色恋沙汰が起こったこともないし
特に決まりがあるわけでももちろんない。
けれど、面倒くさい事になるのがわかってるから
そこは一線引いてきたつもりだった。


だけど、はじまってしまったものは仕方がない。
心を止める事などできないのだから。


ただ、これが大事件である1番の理由は
その相手が他でもない、サンジだからだ。


「ちょっ…と待って、かっこよく見えるっていうのは、
つまり…」

「サンジに恋したのね。」


ナミが頭を抱えながら言葉を絞り出そうとしている横で
ロビンがサラッと要点をまとめてくれた。


「うっ……うん…」


はっきりと言葉にされると、なんだか一気に照れる。
私は最初の勢いをなくし、小声で答えた。


「嘘でしょ本気で言ってんの??
よりにもよって…アレ!?」


ナミが指さした方向を見ると
ちょうどのタイミングでくるくる回りながら
こちらに近づいてくるサンジがいた。


「んナミすわぁ〜〜ん!!!!!
ロビンちゅわぁ〜ん!!!!
NAMEちゃぁあ〜〜ん!!!!
おやつだよォォ〜ん♡」


器用な動きでサンジは私たちに
お洒落な器に入ったキラキラしたスイーツを差し出す。


「本日は桃のグラニータです♡」

「あら、とても綺麗」

「おいしそ〜う!」


ロビンとナミがお皿を受け取り
それを見て目をハートにさせて鼻の下を伸ばす
相変わらずのサンジ。


「NAMEちゃんもどうぞ」


ニコッと笑ってこちらに向き直る。
とてもスムーズで洗練された動き。


「ありがとう!美味しそうだね」


そう告げるとサンジはニコッと笑って
何かを言いかけたけど
後ろからルフィが自分の分も早くくれと
せがむ大声がして、
サンジはこちらに軽く微笑んだあと、
怒鳴りながらルフィの方へと歩いて行った。


「………ヤバい……
っっっかっっっこいい……………」


サンジがいなくなってようやくまともに息をした。
サンジに気持ちがバレないようにする為に
感情を抑えるのも限界があった。


「え?あんた今ときめいてたの!?」

「うん…」

「演技が上手ね」

「いや、ここでそれやる必要あんの?」


呆れた顔をしてナミが言う。


「私の性格知ってるでしょ…無意識だよ、これ…」

「難儀な性格ね…」


ロビンの言う通り、難儀な性格なのだ。
私はこの一味に入る前は
自分の本音など見せずに人の懐に上手に入る事で
生き延びていた。
だから、一番得意なのは愛想笑い。
ルフィと出会って、仲間にしてもらってからは
ここでは、自分を偽る必要なんてなくて
命がけの日々でも、毎日が楽しくて最高に居心地が良い。


ただ、恋愛となると話は別で
自分1人でどうにもならない事が、
昔から苦手だった。
生きる為の術として異性と関係することは熟せても、
心を乱される、"恋"をするのは、苦手だ。


「そう…っていうか話戻すけど、
なんでまたサンジくんなわけ…?
あんたああいうの好みだったの?」

「いや。全然。
私、一途で真面目な人が好きだし
ナンパばっかりするような
チャラい男なんて絶対無理。
最初に会った時に言われた口説き文句なんて、
ドン引きしすぎて今でも覚えてるよ…」

「ちなみになんて言われたのかしら?」


凛とした表情ながらも、目の奥に好奇心の光を湛えた
ロビンが尋ねる。


「僕はいま自分の運命を呪っている…
何故だかわかるかい?
それは運命のイタズラ
君と僕が今まで出会えなかったからさ…
とかなんとか…」

「うえ〜っ!」

「あらあら…」


ナミは舌を出して気持ち悪いものを見た時のような顔をし
ロビンは面白いものを見るような顔をした。
その反応は、本当にその通りだと思う。
私だって、最初はそんな感じだった。


「…で?それがなんでこんな事になっちゃってるわけ?」






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