肌を撫でるちょっと乾燥した暖かい風。
目の前に広がるは、断崖絶壁を彩る鮮やかな緑色と
崖に沿うように建てられたレンガの建物群。
木々と建物と空と海のコントラストが美しかった。


「うおォ〜!!!!うめェ肉がありそうな島だ!!」

「イヤどんな島だよ!!」


みんな口々に騒ぎ出し、
あれもしたいこれもしたいと盛り上がり始める。
浮き足立ってくるこの空気感が好きだ。
崖が多い島なので、裏側には
船を停めやすそうな場所がいくつもあった。
ちなみに、島に着くまでの間に
私に船番が回ってきたら困るので
船番を買って出てもらうように
サンジにおねだりして高い酒を買ってもらって
それを渡すと言う約束で
ゾロを買収しておいた。


「NAMEちゃん、もう行けそうかい?」


そう呼ばれて、後ろを振り向くと
白のリネンシャツにネイビーのストライプパンツに
サングラスをかけたサンジがいた。
…死ぬほどかっこいい……
目眩がしそうになるのをぐっとこらえ、
笑顔を作り、大丈夫だと答える。


サンジは相変わらず、私の髪型や洋服を
よくそんなに次々言葉が出てくるなあと
感心するくらい褒めてくれている。


「ありがと。サンジも、その格好…」


格好良いと褒めるのがなんだか照れくさくて
上手く言葉が出てこなかった。
褒め言葉なんて、
いつもならどれだけでも出せるはずなのに。


「NAMEちゃん…?も、もしかして惚れちゃったァ〜!?♡♡」

「さ、行こうか〜」


いいタイミングでスイッチが入ってくれたので
変な空気にならなくて済んだ。
ここぞとばかりに私はさっさと船を降りる。
サンジは最後でなにやら騒ぎながら、船を降りてきた。


船をつけた岩場の目の前には雑木林があって
そこを抜けたところに街があるようだ。
木々の隙間から、賑わう街の様子が既に伝わってくる。

船から降りた瞬間、ふわっと心地よい風が吹いて
その風にのって爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。


「…レモンかなあ」


サンジが呟く。


「レモン!!ここの特産品かなあ?」


確かにこの香りはレモンだ。


「NAMEちゃん、レモン好きなの?」

「うん。大好き!香りも好きだし、味も好き。
なんなら見た目も好き」

「そうか…それは知らなかったな。」


俺としたことが、とサンジがあまりに深刻な顔をするから
なんだかおかしくなって笑ってしまった。


「そんな大袈裟な」

「NAMEちゃんの事で
おれが知らない事があるのが嫌なんだ。
君の事ならなんでも知っていたい」


誰にでも、どんな女の子にでも言っているセリフなのは
わかってる。わかってるけど…こんなのはずるい。
なんかもう一周回って怒りが湧くレベルだ。


「食べ物のことなら尚更ショックさ」


本当にショックを受けてるように見えて
なんだか申し訳ない気持ちになった。


「じゃあ今度好きな食べ物リスト書くね…?」


我ながら謎な提案だなと言った後に思ったけど
サンジは嬉しそうに笑った。


「それは宝物のリストになりそうだ」


相変わらず大袈裟だなぁ、と笑いながら歩いてたら
雑木林は終わり、道がひらけた。


目の前に現れたのは
真っ白でこじんまりとした四角い建物群。
古くからあるような年季の入った
建物でとても趣がある。
表の港で見たカラフルな景色とはまた違って
白の建物の合間から覗く
木々の青緑色のコントラストがとても綺麗。
その白い建物は民家のようで、
窓には洗濯物が見える。
それもまた、景色のアクセントとなっている。
民家の奥に、金色と青のタイルでできたなめらかな
アーチの大聖堂が見えて
それはそれは神秘的な景観だった。
人々の雑踏と、虫の声がBGMとなって
ノスタルジーに胸が震えた。


「わぁ〜!!綺麗…!!」

「こりゃァすげェ……!」


私もサンジも
目の前に広がる美しい景色に圧倒されていた。


「…買い物の前に…少し、散策するかい?」


サンジからの素敵な提案に、心が弾む。


「…したい!」


じゃあ行こうか。とサンジが笑って
2人で足を踏み出した時、自然と距離が近くなって
私の肩がちょっと、サンジの胸に当たる。


こういう時に、いつものセクハラモードのサンジなら
肩を抱いたり腰に手を回したりしてきそうだけど
今はそういう事も素振りも見せない。
近いけど触れるまではない
適度にドキドキする距離を保ったまま
私の歩幅に合わせて歩いてくれている。
こういう、空気を読んでるときのサンジが、
やっぱりかっこいいなと思う。
こういうサンジはそれこそとってもレアだけど。








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