この島はレモンだけでなく、シーフードも名物みたいで
大きいエビや貝、絵の具で塗ったかのような鮮やかで
色とりどりの魚たちが市場に並んでいた。
食材を選ぶときのサンジの顔を
こんなに近くで見たのははじめてかもしれない。
とても真剣だけど、目がキラキラと輝いていて
動きも話し方もいつもより高揚しているのが伝わる。
店員さんとの会話も楽しんでいるみたい。
たまに専門用語みたいなのが飛び交ってて
詳しくはわからないけど、そのテキパキとした様子は
見ているだけで楽しい。
時々、食材の新鮮さを見極めるコツや
保存のコツを教えてくれて
(サンジがいてくれる限り私がそれを実践することはないけど)
お気に入りのおもちゃを自慢する子供のように
無邪気な表情が可愛かった。
「いやァ〜ここは楽しいな。
ついつい買いすぎちまった」
「本当はもっと欲しいくらいだったよね。
早速今日のごはんが楽しみだな〜」
そろそろ船に戻ろうかと、
さっき来た道を引き返そうとした時
ドォン!!!!!!
建物が破壊されるような音と
怒鳴り声と銃声が聞こえた。
音がした方を見ると、
小さいレストランらしき建物から
砂煙が上がっている。
「…あれって…」
「いやァ…まさか…」
サンジと私は嫌な予感がしてお互いに目を合わせて
その予感が外れる事を祈った。
「うわァ!!こいつ銃弾弾いたぞ!!!!」
「手が伸びたーー!!!!」
その祈りは虚しく
当初の嫌な予感が的中してしまったこと悟って
私とサンジは同時にため息をついた。
ルフィであれば助けに行く必要はないかなあと思って
少し様子を見ていると、
私達の背後からスーツ姿の男達が走ってきた。
応援を呼んだのだろうかと少し気を引き締めていると
スーツの男達の1人が私を見て立ち止まった。
「お前…マローノのところの…?」
「…!!」
もう捨てていたはずの
忘れかけていた名前を突然呼ばれて身体が強張る。
「…ア?…なんだ?」
サンジが不思議そうな顔で男を見る。
「行こう、サンジ」
そう言って私はサンジの袖を掴んだ。
早くその場から立ち去りたかった。
「おい、女!お前…名前は確か…
NAME。そうだ、NAMEだ!」
サンジは私のただ事じゃない様子を察したのか
私を庇うように背中の後ろに隠し
スーツの男を睨みつける。
「テメェなにモンだ?」
男は、面白いものを見つけたように笑い出す。
「オイオイ、まさか今度は海賊…
しかも麦わらの一味にいるとはなぁ?
相変わらず悪ィ女だ…
あァ…今度はこの男がカモってワケか…?」
もう2度と関わりたくなかった
捨てたはずの過去。
私は、サンジの顔を見ることができなくて
言葉を発することも出来なかった。
「おい、テメェ…口には気を付けろよ」
サンジは重く低い声で呟き、男を鋭く睨みつける。
男はサンジの言葉を無視して続ける。
「お前がいなくなってから、ヤツは血眼で探してたぞ?
今ここでお前を捕まえてヤツに差し出せば…」
サンジが勢いよく足を蹴り上げ男の鼻先で止める。
「捕まえるだと…?彼女は俺たちの仲間だ。
テメェなんぞに手出しはさせねェ。」
男は、サンジの迫力に圧倒され
顔を引き攣らせながらも負けじと声を荒げる
「お前、その女の正体、知らねえんだろ!?
その女はなァ…
西の海の5大マフィアの最大勢力のうちの1つ
マローノ・ファミリー
アンダーボスの愛人で運び屋、
"裏切り"のNAMEと呼ばれてた女だ!
どんな手ェ使ってたかは言うまでもねェが…
その女に関わると、ろくなことがないって噂だ。」
過去をあえて隠していたわけではないし
真実でないことも混ざっていた。
それでもそれをいちいち説明する気にもならなかった。
そしてこのたちの悪い噂を
大好きな人たちに知られたくなかった。
次々と暴露し続ける男の言葉から
少しでも心を遠ざけようと
私は黙って目を閉じた。
「俺達パティーニ・ファミリーにとっちゃァ
その女の逃亡以来、マローノ・ファミリーの勢力が
衰えた事はラッキーだったがな。
とにかく西のマフィアの間じゃァ悪女だと有名な女だよ…!」
心のどこかで、いつかこういう時が
来るんじゃないかと思っていた。
麦わらの一味として過ごしてるこの、
眩しくて温かくて、輝きに満ちた毎日は
長く続かないんじゃないかって。
私は、サンジの袖を握りしめていた力を緩め、
手を離そうとした。
けれどその瞬間、サンジが私の手をぎゅっと握り返した。
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