私は驚いて、サンジに握られた手を見て
それが勘違いでないとわかると
サンジの方へと視線を送った。
サンジは男を見据えたまま、口を開いた。
「それが何だ?
今はウチのクルーだ。
昔の女のケツをしつこく追いかけ回すような
ダセェ真似はやめとけとそのマロ…ナントカとかいう
男に伝えやがれ」
「…!」
サンジの言葉に、胸がいっぱいで言葉が出なかった。
何か言わなきゃ、と思い口を開いた時、
「おおォ〜〜い!!!!!!サンジィ〜!!!!!
NAME〜〜!!!!!!」
例の砂煙の場所からルフィの声が聞こえた。
さっきのレストランからこちらに向けて走ってくる。
ウソップも一緒のようだった。
「お?なんだそいつ?なんか問題か?」
「いや、問題ねェ」
ルフィに聞かれ、
サンジはどうって事ないと言ったような顔で答える。
「そうか!顔がバレた!逃げるぞ!」
そう言ってルフィは私達の横をすり抜けようとする。
その瞬間サンジは私の手から荷物を取り、
自分の荷物と共にルフィとウソップの方へ投げる。
「おいお前ら、それ船まで運べ!!」
「おう!」
ルフィはサンジが投げた大量の荷物を
腕を伸ばして上手にキャッチし、
ウソップも慌てながらも全て受け取り
そのまま止まる事なく走った。
「さて、俺たちも行こうか」
サンジが言うと同時に、
私の視界は急に下がり、ふわっと体が浮いた。
そして、目の前にはサンジの顔。
サンジは、なぜか私を抱き抱えて
そのまま走り出そうとした。
まさかわざわざこのために
ルフィたちに荷物を渡したの!?
「!?さ、サンジ!お…おろして」
「嫌だ」
サンジは拗ねたような表情で顔を背けた。
なんでサンジがそんな顔してるの!?
「おい!お前ら何無視してんだ!!!!ナメんなよ!」
パティーニの男は私達に無視された事に
腹が立ったのか先程よりも更に大きな声で叫んだ。
ルフィたちを追いかけてきた男達も数名集まってきた。
「ハァ…。NAMEちゃん、ちょっと待ってて」
そう言ってため息をつき、
私を地面に下ろして、後ろへと下がらせる。
「テメェら…しつけェんだよ。
人が忠告で終わらせてやってるてェのに…」
「うるせェ!!お前ら全員ブッ潰してやる!!!」
そう言って、マフィア達が一気にサンジへと襲いかかる。
サンジは焦る事なく敵を一瞥し
「ブッ潰されんのはテメェだ」と呟き
男たちの方へ走る。
「"パーティーテーブルキックコース"!!」
回転し飛び上がって1人の男の頭を片手で掴み
華麗な動きで大勢の男達を一気に蹴散らす。
そしてそのまま流れるような動きで
例の男に向けその長い足を思いっきり振り落とした。
「"コンカッセ"!!!」
一瞬の出来事だった。
サンジとの実力差が圧倒的なことは
戦わずとも見るだけでもわかる程だったけれど
実際に目にするとやっぱり、
その強さは桁外れだと実感する。
「さ、戻ろうか」
サンジは何事もなかったかのような顔をして
こちらに歩み寄り
私の腕を引いて、歩き出す。
いつもよりも強い力で握られた腕が熱かった。
早足で、何も言わずに私の腕を引くサンジの後ろ姿は
怒ってるようにも悲しんでるようにも見えた。
「サンジ…!待って…!」
市場を抜けて、人気が少なくなってきた所で
ようやくサンジの足が止まる。
そして、私の腕からゆっくりと手を離す。
「さっきの男が言ったこと…
何も…聞かないの?」
そこに立ち止まったままのサンジは何も言わず、
懐から出したタバコに火をつける。
そして、ゆっくりと煙を吐き出して
少しの沈黙の後、口を開く。
「…誰にでも、話したくない過去はあるモンだ。
大切なのは、今だと、俺は思う」
サンジの顔を見た。
その目に嘘はなかった。
「NAMEちゃんが過去にどんな事をしていようと
そんな事は大した問題じゃねェ。
もしNAMEちゃんが極悪人だろうとなんだろうと
俺達は君を絶対に手放さないよ」
サンジはまた真面目な顔で言う。
口調はとても優しかったけど、力強い声色だった。
「もしかしたら、マローノ・ファミリーに
今回のことが伝わって
私を追って報復しに来るかもしれない」
「その時は、奴らをブチのめすまでさ。
むしろ俺としちゃァ直接対決、願ったり叶ったりだ」
そう言ってサンジは笑う。
「帰ろう。みんなが待ってる」
「…うん。」
今度は、抱き抱えられることも
手を引かれることもなくて
サンジはゆっくりと歩き出した。
私はそれ以上何も言えずに
サンジの背中を追いかけた。
戻る
Titolo