サンジの顔は、なんと…笑っていた。
にやけていたと言うべきか。


「何笑ってんの…?」


苛立ちを含んだ声になったのを
察したサンジは慌てて訂正した。


「いや、違ェんだ、ごめん。
その…嬉しいなと思っちまった」

「嬉しい?」

「アー…なんていうか……
正直言って妬いてたんだ。
NAMEちゃんが、
何処の馬の骨かもわかんねェ男と
あんな事やこんな事してたかと思うと……!!」


そう言ってサンジは鬼の形相になり
文字通り燃え始めた。
本気なのか冗談なのかわからない様子に
私はなんだか、気が抜けてしまって
少し笑えてきた。


「なにそれ…」

「いや、ほんとに。
あと…今、俺だけには勘違いしてほしくないって、
言っただろ?」

「あ…言った…か、な?」


しまった、と思った。
確かにそう思ってたし、
多分無意識で口に出してたんだろう。


「期待しちゃうなァ〜」


サンジは得意気に笑う。
期待するも何も、と思ったけど
もしここで本当の気持ちを伝えたところで
同じ気持ちが返ってくるとは到底思えなくて
私はなんとも言えない顔で笑うしかなかった。


サンジはカウンターに寄りかかって
タバコの煙を細く吐いて
腕を組みながら、私を見て言った。


「まぁでも、ちょっと残念だったかな」

「残念って、何が?」

「せっかく俺だけが知ってる
NAMEちゃんの秘密になると思ったのに」

「…そんな秘密いる?」

「俺はNAMEちゃんと
2人っきりの秘密ならなんでも嬉しいけど」


私は、少し苛立った。
期待するとか、秘密を共有したいだとか
気をもたせるようなこと言うけど
そんなのみんなに言ってるくせに。
私だけが特別じゃないくせに。
どうせ、断られる事を前提に言っているくせに、と。

だから少し、仕返しをしたくなって
サンジの目をじっと見つめて言った。


「じゃあ…作る?
…別の秘密。」


「えっ」


サンジは、目を開いて
笑った口の形のまま、固まっていた。

それを見た途端、自分がとんでもないことを
口走ってしまったことに気づいて
サンジと目が合わないように顔を伏せた。

私はみるみる恥ずかしさと後悔が湧き上がってきて
恐らく、顔は真っ赤になっていただろう。


「ごめん」


私は咄嗟に謝って、立ち上がった。


「NAMEちゃ…

「…紅茶もらっていくね!
レモンジャムもありがとう!」


サンジが私の名前を読んだけど
私は頭が真っ白でそれどころじゃなくて
サンジの言葉に自分の言葉を重ねて、
食器の乗ったトレーを受け取って
急いでキッチンを後にした。

後ろからサンジが何か言ってたような気もしたけど
振り向く勇気はなかったし
何を言ってたか正直全く耳に入っていなかった。


その後、真っ直ぐ女部屋に戻る気にもならなくて
また展望室にいるゾロのところに向かった。

ゾロは比較的小さなダンベルを持ちながら
軽いトレーニングをしていた。
傍に置いてある酒瓶の中身は半分くらいになっていた。


「ゾロ、そのお酒ちょうだい」

「あァ?…どうした」


嫌そうに返事をしてダンベルを床に置いたゾロは
私の顔を見て、すこし口調が柔らかくなった。


「…失敗した」


私はそう言ってゾロの隣に座って、手を差し出す。
ゾロは無言で酒瓶を手渡してくれた。

一口煽ると、口の方が焼けつくようだった。
元々お酒も強くないからというのもあるけど
これはストレートで飲むもんじゃないでしょ、と思った。
強っ!と言いながら瓶をゾロに返す。


「だからお前、趣味が悪ィんだよ」


ゾロはそう言って酒瓶を受け取って、
そのままそれを煽り
うめェ、と呟いて壁にもたれかかる。


「だよねー…」


ゾロは特に追及もしてこないけど、
意外と突き放したりもしない。
本当は優しくて面倒見のいいやつで
なんだか不思議と居心地がいい。
いつからかは覚えてないけど
あんまりお酒が強くないのに
たまにほんの少しだけお酒が飲みたくなると、
こうやってゾロを探して
お酒を分けてもらうようになった。

ゾロはチラッと横目で私を見て
何も言わずにまたトレーニングを始めた。







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