慌てて服を着て、髪も乾かさないまま急いで
ダイニングへと向かった。
待たせてるのではと思った瞬間、焦ってしまう。

ダイニングについたとき、
サンジはバーカウンターにもたれかかって
タバコを吸っている所だった。


「ごめん!待たせたよね?」


勢いよく走ってきた私に
サンジは少し驚いた様子で目を丸くした。


「全然。急いで来てくれたの?」


サンジはタバコを灰皿へ押しつけて
私の方へと歩いてきて
手を伸ばす。


「髪、濡れたままだ。」


更に一歩私へと近づいて
首に垂らしたタオルをとって
私の髪をくしゃくしゃと拭いてくれる。


「い、いいよ、自分でやれるから」


恥ずかしくなってサンジからタオルを奪おうとすると
サンジはいいから、と言って
そのままタオルを動かし続けたので
私は諦めてされるがままにした。

顔をあげたら、私をじっと見るサンジと目が合って
恥ずかしかったから目線を下に落として
恥ずかしさを誤魔化すように
持て余した手でサンジのネクタイを弄った。
サンジが軽く笑って、
なんだかくすぐったい気持ちになった。


「おしまい」


そう言ってサンジは両手で私の頭を優しく掴んで
手櫛で髪を解かす。


「ありがと…」


「どういたしまして」と笑って
バーカウンターに私を誘導する。
一つ一つの所作が出来上がりすぎていて
なんだか少し悔しい。

サンジはキッチンに入って、
冷蔵庫からお皿を出してきた。
バーカウンターのテーブルに置かれたのは
生ハムやオリーブやブルスケッタなど
色とりどりのおつまみ達。


「おいしそう〜!!!」


にっこりと笑って「先に食べてて」と言い
カウンターでお酒の準備をしていた。
お言葉に甘えて、食べながらその姿を眺める。
お酒を作る姿が様になりすぎている。

「でへ♡」と突然にやけた顔になったサンジのおかげで
見惚れてしまっていた事に気づいて
慌てて明後日の方向を見たけど、多分手遅れ。


「お待たせしました」


そうこうしているうちに、
カウンターに出されたカクテルは
ふわっとレモンの香りがして
しゅわしゅわと細かくて綺麗な泡を立てていた。


「おいしそう!これ、スプモーニ?」

「そう。手作りのリモンチェッロで作ったんだ」

「えー!すごい!絶対好きなやつだ」


サンジは嬉しそうに、どうぞ、と言った。
でも私は、すぐには口をつけなかった。


「どうしたの?」

「サンジも隣にきて。
今日は、一緒に飲むんでしょ?」


そう言って、私の隣側をぽんぽんと叩く。

そうだった、と笑ってサンジはカウンターから出て
私の隣に座る。
サンジは白ワインを持っていた。


「じゃあ」

「乾杯」


かちん、と小気味良い音がダイニングに響く。

スプモーニは、きつすぎない炭酸の刺激と
鼻を抜けるレモンの香りと少しの苦味が
絶妙なバランスで最高に美味しかった。


「おいしい」

「それは良かった」


最初は他愛もない話をして
30分もすると、私はあんまりお酒が強くない事もあって
少しふわっとした気持ちで
ちょうど良い酔い具合になってきた。

話もひと段落して、少しの沈黙が訪れた。

サンジが身体の向きを変えて
こちらを向いた事が横目で見えた。


「NAMEちゃん」


真剣な声で名前を呼ばれて
ふわっとした気分の中で
ああ、ついに来たな、と
少しだけ酔いが覚めた気がした。


「うん」


サンジが、じっと私を見つめる。
私の顔はグラスを見ているけど、
痛い程の視線でわかる。


緊張を少しでも解そうと、
私はひとつ、息を吐く。
視線を左横にずらして、
遅れて顔も左の方を向いて、
サンジの顔を見つめた。






戻る


Titolo