「そういやあんたたちってさ…
2人でいるときどんな感じなの?」


事は、ナミの何気ない一言からはじまった。


とある昼下がり。
本でも読もうと、女子部屋に取りに戻ると
そこにはナミとロビンがいて各々
調べ物やストレッチに励んでいた。

ごそごそと本棚を漁っている背後から
突然、そんな事を言われたので
一瞬、何の話かわからなかった。


「いや、だからさぁ、サンジくんは
だいたい想像がつくけど、
イチャイチャするとき
NAMEがどうなるのか想像つかなくて」

「はっ!?」


私が来るまで、2人で一体何の話をしてたんだろう。


「何照れてんのよ今更」

「いや…だって…突然そんな話してくるから…」

「例えば…サンジに甘えたりとかするのかしら?」


ロビンも、面白そうな顔をして言った。
やっぱり人の色恋沙汰の話は1番盛り上がるのだろう。
というか、私だって人のそういう話は好きだから
誰かの恋愛噂話をしたい。
この船では、今のところ私達以外に浮いた話がないから
出来そうな気配はないけど。


「うう〜ん…どちらかといえばサンジの方が甘えてるような…」

「うっ…想像できすぎるわ…」

「…甘えるサンジ、可愛いよ」

「はいはいごちそうさま」


私が遠慮がちに、でも真顔で答えると
ナミは呆れたような顔をして手をひらひらと動かした。
ナミは、サンジに対して厳しすぎる。


「じゃあ、あんたから甘えたりする事ないって事?」

「うーん…、ないかも?
…まずいかな?」


改めて指摘をされて、ドキッとした。


「まずいってことはないでしょうけど
男なら甘えられたら嬉しいもんなんじゃないの?」

「サンジは確実に、喜ぶでしょうね」


そう言われて考えてみたら、私は
サンジに愛情表現をしてもらうばっかりな気がする。
私がサンジを好きな分の、
果たしてどれくらいがサンジに伝わっているのか
突如、心配でたまらなくなった。


「別にサンジくんのことだから
気にしちゃいないだろうけど
ある程度気持ちは表したほうがいいんじゃないの?」

「まぁ…確かに…
でもそれって…どうすれば?」

「言葉よりも、行動の方が伝わることもあるわよね」

「行動…」

「かわいく甘えてみればいいじゃない。
簡単なことでしょ。
あんた、前の仕事の時にそれくらいのこと
やったこともあったんじゃないの?」

「あった…けど、仕事だとそういうことも
無意識で出来てたけど
いざプライベートでやるとなると、
全く頭が回らない。
逐一指示出しして欲しいくらいだよ…」


自分でも、サンジを目の前にすると
完全にポンコツと化してることは自覚してる。
そしてそれは、目の前にいるナミとロビンも
悲しいことに実感してくれている。


「理屈じゃ動けないくらいに、
サンジの事が好きなのね」

「…いかにも…」

「ほんと、面白すぎるわよ、あんた」


私はサンジに恋をしてからというもの
一気にそっち方面で頭が回らなくなってる。
前は、生きる術として異性に媚びて、
自分の性別を利用してきた事もあった筈。
それなのに、もうどうやっていたか、
全く思い出せない。
そんなに昔ではないのに。
私はここにきて、一切自分を取り繕う必要がなくなって。
万が一、この一味に
いられなくなるような事が起こったとしたら
(そんな事ありえないし、絶対あってほしくないけど)
もう2度と、以前の生き方をする事は
出来ないだろうなと思った。
それはある意味弱くなったし、
でもある意味では強くもなった。


「ちょっと…外の風に当たって考えてくるわ…」

「真面目ね。」

「ストイックというかなんというか…
ほんと、見てて飽きないわ」


部屋に残ったナミとロビンが呆れたような
笑っているような
複雑な呟きを漏らすのを背に、
私は考え込み過ぎて重さを増した頭を抱えて
ふらふらとした足取りで、芝生甲板へと向かった。


芝生甲板の手すりにもたれかかって
目の前に広がる広大な大海原を眺める。


なんてくだらなくてちっぽけな悩みなんだろう。
でも、くだらなくたって小さくたって、
今の私にとっては深刻だ。
そういえば、前に読んだ本で誰かが、
全ての悩みは対人関係の悩みである、
って言ってた気がする。

そんなことを考えながら潮風に当たっていると
左横に、キラキラと輝くグラスが現れた。


「!!」


あまりに驚いて、咄嗟に声が出なかった。
でも一瞬で、犯人が誰かはわかった。


「サンジ」


私はそう言いながら、振り向く。

そこには、ニコニコと優しく微笑む、サンジがいた。


「どうかしましたか、プリンセス?」


そう冗談めかして首を傾げるサンジの姿が
私の胸をきゅっと締め付けた。


「なんでもないよ、プリンス」


気持ちを悟られないように笑いながら、
グラスを受け取った。


やっぱり、私はサンジから、もらってばっかりだ。
私が気持ちを素直に表現したり、甘えることで
サンジが喜んでくれるかはわからない。
でも今、私ができることって
それくらいしかないと思った。


私は大真面目にそう考えていたものだから
どうやらじっとサンジの顔を見つめていたらしい。
「そんなに見つめられたら照れるな」
と、サンジにそう言われて、我に帰った。


「…サンジ。ありがとう。
私、決めたから!」

「ど、どういたしまして?」


私はサンジから受け取ったグラスを持ってない方の手で
サンジの手をぎゅっと握りしめた。
サンジは突然のことに、何の話をしてるかわからない
と言った顔をしていたけど(そりゃそうだろう)
グラスを持ったまま、私は女子部屋へと走って戻った。


私は女子部屋に駆け込み、サンジからもらったドリンクを一気に飲み干した。
私好みの酸味と苦味の効いた爽やかな
強炭酸ドリンクだった。
女子部屋のドアを勢いよく開け過ぎたので
ナミに怒られたけれど
私はそのままの勢いで、
まだ部屋にいたナミとロビンに宣言をした。


「私、やるだけやってみる。
サンジに喜んでもらえるように…
可愛く…甘えてみる!!!」


「あ、そう…」

「ふふふ、素敵じゃない?」


私はひとりで、轟々と燃えていた。


2人っきりになれる時間を狙うため、
夕食後、片付けがひと段落したタイミングで
サンジに声をかけようと決めた。
それだけならいつものことだけど
今日は気持ちが違うから
緊張しているのと気合が入っているのが相まって、
妙なオーラを出していたらしく
夕食時にゾロに気持ち悪いと言われたので
鳩尾に一発パンチをかましたら
少しすっきりして気分が晴れた気がした。


夕食を取った後、
サンジが片付けを終わらせるまでの間に
髪を整えて化粧も直して、服も着替えた。
これは、アドバイスをくれたナミによると
計算し尽くされた"大人あざとかわいい"
ルームウェアとヘアメイクらしい。


一体ナミはなぜこんなものを知っていて、
そして持っていたんだろう。
今度タイミングを見計らって聞いてみよう…


最初こそ私の珍しい勢いに少し引いていたナミだったけれど
私の準備を手伝ってるうちに
何故かテンションが上がってきたらしく
なんだかんだでナミが1番楽しそうにしている。


「さぁ!行ってきなさい!」


何故か鼻息荒く見送られて、逆に緊張してきたけど
その後ろでニコニコと手を振るロビンを見て、
また少し安心した。


女子部屋を出て、芝生甲板を通って、
ダイニングへと続く階段を登る。
肌を撫でる潮風は昼間より随分温度が下がっていて
ほんの少しだけぬくもりを求めたくなる風だった。
ダイニングの小窓から少し覗くとまだ、サンジはキッチンにいた。

少し早足でドアへ向かって、ダイニングのドアをノックする。


「サンジ〜?」


ゆっくりとドアを開けて、顔だけ覗かせて声をかけると
サンジはすぐに振り向いた。

「NAMEちゃん!どうしたんだい?」


声をかけるまでは、何故だか少し緊張していたけど
サンジの顔を見たら、そんなものは一気に飛んでいって
いつものように、ふわっとした気分になる。
心が、一気に安心感で満たされたのがわかった。


「もう片付け終わった?
時間があるなら一緒にお茶でもどうかなーと思って」


そう言って、顔だけ覗かせてた状態から
ダイニングの中へ入った。


「うん、もちろ…」


するとサンジの顔が目を見開いた状態で固まった。
どうしたのかと思い、急いでサンジの近くへ駆け寄る。


「サンジ?どうしたの?大丈夫??」


サンジの顔の前で、手をひらひらと揺らすと
意識を取り戻したかのように
サンジの目がぱちぱちと動いた。


「NAMEちゃん…そんな服、持ってたっけ…?」

「あ、これ?ナミが貸してくれたの。
似合いそうだからって言ってくれたんだけど…
…変かな?」


サンジの反応がどっちの反応なのかよくわからなくて
少し不安になった。


「めちゃくちゃ……可愛い。
さすが…ナミさんだ…」

そう言ってもらえて、ホッとして
最後は何故か顔を覆って下を向きながら親指を立てる
サンジの様子が面白くて、笑った。


「よかった。」

「…今、お茶淹れるから座って待ってて。
紅茶でいいかな?」

「うん!ありがとう!」


そう言って、私はカウンターに座って、
サンジがお茶を淹れる様子を眺めていた。
ただお湯を沸かすだけでも
洗練された動きで、かっこいい。
私は自然と、自分の顔がにやけていることに気づき
そして、ハッとした。
これじゃあ、いつもと変わらない。

だからといって、具体的にじゃあどうしたらいいか
などというのは思いつかなかった。
というか、夕食前に色々自分なりに
考えていたはずなのに
すっかり頭から抜け落ちていた。
本当に、役立たずの頭。

少し冷静に頭を動かそうと、
カウンター席から立ち上がって
少しウロウロして、ソファへと移動した。

サンジはそんな私を見ていたのか
ふっと軽く笑って、「どうしたの?」と尋ねてきた。

私はどう答えていいかわからず、
「いつもカウンターだから、気分転換に…」
と答えた後に、なんじゃそりゃ、
と脳内で自分にツッコミを入れた。


「お待たせしました」


そう言って、サンジは近くにあった椅子を引いて
テーブル代わりにトレーを乗せてくれた。
ソファに座ってしまったばっかりに
申し訳ないな、と一瞬思ったけど
ふわっと香ってきたアールグレイの香りに
すぐに夢中になってしまった。


サンジが隣に座るのを確認して、紅茶を飲む。
相変わらず、香りも味も、温度も完璧だった。
ふう、と一息はくと、
にっこり笑って、サンジが首を傾げてこちらを見たから
「最高」と答えた。

そしてまた、次の一口を飲んでいると
サンジの手がそっと、私の髪に触れた。

私はつい、思いっきりごくんと紅茶を飲んでしまって
少し、喉が熱かった。
でも、それを悟られまいと、平気なふりをして
サンジの顔を見たけど、もしかしたら目が少し
涙目になってたかもしれない。

サンジは、片手で私の後れ毛を弄りながら、
もう片方の手で持った紅茶を口に運んだ。
その間もサンジの目は私を見つめ続けていて
紅茶を飲むときにゆっくりと動く
サンジの喉仏がやけに目についた。


「なんか、いつもと雰囲気が違うね。
服だけじゃなくて」

「そ、そう?
…どっちがいい?」


少し勇気を出して聞いてみると
サンジは少しも間を空けずに、
真面目な顔で返事をした。


「どっちも。
NAMEちゃんは、いつでも可愛い」


私は、ため息をついた。
サンジめ…と、少し恨めしくも思った。
ずるい。サンジはいつだって。
私が言おうと思ってても言えないことも
しようと思ってるのにできないことも、
いとも簡単にしてしまう。


「…サンジ、カップ置いて?」


私は自分のカップを椅子に置いて
サンジの手をぎゅっと握る。


サンジはどうしたの?と言いながら、
私に言われるがまま、
手に持ってたカップを椅子の上に置いた。


私は、カップを置いたことで空いたサンジの左手も
右手と同じようにぎゅっと握って、
サンジの顔を見つめた。

サンジは少し、驚いたように眉毛を動かした。

私は握っていた手を解いて
そのままサンジの背中に回してサンジに抱きついた。

サンジはゆっくりと、私の背中を撫でた。
サテンの生地のガウン越しの、サンジの手の温もりと
さらさらとした肌触りが気持ち良い。


「サンジ…すき」


そういうと、私の背中を撫でるサンジの手が止まった。

私はサンジの背中に回していた手を
私とサンジの間に入れて
サンジの胸を軽く押して、2人の間に隙間をつくった。
そして、サンジの顔を見上げた。

こんなこと、自分から言ったことない。
でも、もうどうにでもなれ!
そう思って、私は口を開いた。


「キスして……
ほ、しい」


最後の言葉が余計なのはわかってるけど
私にはこれが限界だった。
途中まではサンジの顔を見ていたけど
恥ずかしくて、最後の最後で下を向いてしまった。
多分、いや確実に、
私の顔は、耳まで赤く染まっているはず。

サンジからの返事も反応もなくて、
いてもたってもいられなくなって私は顔を上げると
サンジは、私に負けず劣らずの真っ赤な顔をしていた。


「さ、サンジ…」

「ご、ごめん、ちょっと…待って」


そう言って、サンジの大きな手が
やんわりと私の目を塞いだ。
分厚くて、すこしかさついた、
でもあたたかい手のひら。


「…サンジ?」


私はサンジの手のひらに、自分の手を乗せた。
サンジの手は、力を入れなくてもすぐ動くくらい、やさしく当てられていた。

目だけが見えるところまで少しだけ動かして
サンジの顔を見ると、サンジの顔はまだ赤かった。


「NAMEちゃん………、反則だ」


そう言って、サンジは眉毛を下げて、項垂れた。
目だけが見えるくらいに下げたサンジの手は
まだ私の口元にあって、
私はその手をぎゅっと握りしめて、
少しだけ動かした。


「私…、やっぱり自信ないや」

「え?」

「私、いつもサンジにしてもらってばっかりだし
私の気持ちの半分も、サンジに
伝わってないんじゃないかって思って…
どうしたらサンジが喜んでくれるか色々考えたけど…
…上手にできない」

「NAMEちゃん…」

「私、サンジが思ってるのよりも何倍も
サンジのこと…想ってる」


サンジがどうしたら喜んでくれてるのか
どうしても黙っていられなくて
ついつい白状してしまった。


「私にして欲しいこと、言って」


思ってた以上に、上手に出来てない自覚はあった。
でも、いつもよりすこし、
自分に素直にサンジに触れたら
自分の中に無意識で堰き止めていた感情が
少しずつ漏れ出して
じんわりと、ほとばしり濡らしているような感覚。

まだ握ったままのサンジの手のひらを
私の唇に押し当てる。
サンジが、ぴくっと揺れたのがわかった。

本当はすごく恥ずかしい。
でも、少しでも私の想いが伝わるようにと願いを込めた。


「NAMEちゃん、これ以上…おれをどうするつもりなんだ」


サンジは困ったように眉を下げて
私に握られてない方の手で自分の額に手を当てて
そのままの状態でため息をついた。
しばらくそうやって頭を抱えたり
静かに唸っていたサンジは
ゆっくりとわたしの方へと向き直った。
たっぷりと、時間をかけて。


「…おれは、NAMEちゃんにそう思ってもらえてるだけで
これ以上ないくらい幸せだよ」

「…そういうんじゃない」

「えー…」

参ったなァ、なんて言いながら
また髪をかき上げるサンジは
なんだかすごく嬉しそうに笑っていた。


「そうだな、じゃあ…、おれの好きなところ、教えて」


そんな事でいいの?と思ったけど
いざそう言われると、わざわざ本人に向かって
言葉にするのは、とても恥ずかしかった。
でも、今まで一度も言ったことなかった事に気がついた。


「料理がめちゃくちゃ上手なところと…」

「うん、それと?」


サンジはにこにこと笑いながら、相槌を打つ。
もっと、と促される。


「…優しいところ」

「へえ…具体的には?」

「…仲間思いなところ。
あと、情に厚くて、人のために
命を危険に晒すこともあるでしょ?
そんなとこも、優しいなって思う。
それに、すごく強いけど、
人を傷つけるためじゃなくて
守るために闘うところ。
ピンチの時にいつも助けてくれるところもかっこいい。
あと、女に弱いところも…
たまにちょっと度を越してるなって思うけど
やっぱり、優しいなって思うし、かっこいいなと思う。
あ、あと頭が良くて
ピンチの時も冷静に判断できるところとか、
あと…」

「ちょ、ちょっと待ってNAMEちゃん」


一度口にし始めるととめどなく溢れてきて
気づけば早口で捲し立てるようにサンジの褒め言葉を
並べ続けていた私は
それを静止するサンジの声で我に帰った。


サンジの顔を見ると、また、
顔が真っ赤に染まっていた。
頭を抱えて、あー、とかうー、とか
声にならない声を上げているサンジが
とても可愛く見えた。


「どうしたの…?」

「い、イヤ…思いの外…多いね…」

「まだ半分も言えてない」

「そ、そう…」



サンジは相変わらず顔を赤くしたまま、
ぽりぽりと頭を掻いた。
これは、照れてるときのサンジの癖。


「まだ続ける?」

「…イヤ…今日はこれくらいで…勘弁してくれ…」


褒めたのに、打ちのめされたように項垂れたサンジが
可笑しくて、私は笑った。

サンジは私の背中に腕を回して、
力強く私を抱きしめた。
そして、私の肩にサンジの顎が置かれる。


「いやァ…参った。お手上げだ。」

「私、サンジを倒したかったわけじゃないんだけど」


そう言って私が笑うとサンジは私を抱きしめたまま
背中に回した手を私の頭に回して、
緩く結った髪の、項から指を差し込んだ。


「そういえば…さっきのNAMEちゃんからのお願い、
まだ叶えてなかったな」


何のことだろうと思って、首を傾げると、
笑いながらサンジが言った。

「なんだ、忘れちゃったの?」

そう言ってサンジは私を抱きしめて
私の頬を大きな手で包み込んだ。


「あ。」


そこで私はようやく、
自分のした恥ずかしいお願いを思い出した。


「思い出した?」

「…うん」


サンジは私の頬に添えた手に優しく力を入れて
私の顔を上に向かせて
数秒、私の目を見つめた。
サンジがキスをする前に、
私の目をじっと見つめるのも多分癖で
私はこのサンジの癖が、
とても照れくさいけど、大好きだった。


サンジの唇が優しく私の唇に重なる。
肌と肌が触れるぬくもりと、
サンジのにおいと
少しかさついた唇と髭の感触で、
一瞬で脳が溶けるような感覚に陥る。
角度を変えて2,3度繰り返して、
ゆっくりとサンジの顔が私から離れていった。
サンジはまた私を抱きしめて、私の頭を撫でる。


「…なんで急にこんなに可愛い事、
しようと思ったの?」

「かっ…、可愛くは、ないけど」


耳元で、サンジが少し笑う息遣いが聞こえた。


「私もたまには素直に…
サンジに甘えてみなきゃって思ったの。
でも慣れてないから…色々考えてたらこんな事になった」


「…これは真面目な話だけど。
NAMEちゃんは、変わる必要なんてない。
毎日、充分に、おれを幸せにしてくれてるよ。
これ以上ないくらい。」


私の頭に置いてあったサンジの手が、項へと移動する。
緩く結った髪の毛に何度も手が触れて
髪が少し解けたのがわかった。


「NAMEちゃんが笑って、
おれの隣にいてくれるだけで
他には何もいらねェ。
それくらい、おれは君に夢中なんだ」

「サンジ…」

「いつも通りのNAMEちゃんで、
充分すぎるくらいさ」


胸が締め付けられてどうにかなりそうだった。
サンジは、どうしてそんなに、
私の欲しい言葉ばかりいつもくれるんだろう。


「ありがとう…サンジ」


私はサンジの首元に、頬を擦り寄せた。


「まァでも…たまにはこういうのもいいな」

「たまに?」

「あァ。いつもだと、おれが保たねェ」


なにそれ、と言って私は笑ったけど
渾身の甘え作戦は、どうやら私の不安とは裏腹に
サンジにしっかりと効いてくれたみたいで、
ほっとしたし、嬉しかった。

提案と協力をしてくれたナミとロビンには
ちゃんとお礼をしなくっちゃ。





リクエストいただいた、「甘える夢主とそれにノックアウトされるサンジ」を書いてみました…!
ご希望に添えたかはわかりませんが…
リクエスト、本当にありがとうございます!

ただこれ、シリーズ夢主じゃなくてもいいかな…って思えてきて途中で悩んだんですが、こっちにおきました!


そして結局いつも同じようなパターンですみません…!

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