「……おい、ウソップ」
「おう」
「NAMEちゃんはいつも…あんな話を…?」
声を震わせながらおれの方を振り向くサンジの顔は
面白いほどに真っ赤だった。
「おォ、毎回だぞ。」
「マジか………」
サンジは顔を赤くしたまま、
頭を両手で抱き抱えるようにして蹲った。
実はサンジもNAMEの事が好きだった。
最近おれがNAMEと仲が良いからと
気になって探りを入れてきやがったから
(というか最初は勘違いして
メンチ切りながらオロすぞと言われた)
何の話をしてるか直接確かめに来いと言った。
タイミングを見計らって
紅茶のおかわりを持ってきたサンジは
NAMEがサンジの事をアホみたいに
べた褒めしてる所に
ガッツリと遭遇しちまったってわけだ。
「で、感想は?」
そう尋ねると、
サンジは頭を抱えてた腕を解いて顔を上げた。
それはそれは、腹が立つほどに、
嬉しそうな顔をして。
「ヤベェ……」
「ま、そうだろうな」
自分が惚れてた女が同じように自分の事を好きで
なおかつあんなにも
ベタ褒めしてるところを目の当たりにして
嬉しくねェわけがねェ。
クソ、なんでコイツこんな幸せな思いしてんだ?
しかもおれが協力して??
「サンジ。お前が早く気持ち伝えねェと、
おれァいつまで経っても
アイツの惚気話聞き続けなきゃなんねーんだよ」
いくらおれ様が仲間思いの良いやつだからって
こう毎回毎回惚気話聞かされちゃたまんねェ。
それに、毎日のようにキラキラした目で
サンジへの想いを話してくるNAMEを見てるうちに
おれもアイツの想いが早く叶えばいいと
素直に応援する気持ちになってきていた。
「さっさとくっつきやがれ」
おれがそう言うと、サンジは立ち上がって
頭をぐしゃぐしゃとかいた。
踊りながら「おれも好きだァ〜♡♡」とかなんとか
言うかと思ってたけど、少し思ってたのとは違う反応で
サンジの本気を見た気がした。
おれはなんだか無駄に
むずがゆいような照れ臭いような気持ちになった。
「ウソップ、恩に切るぜ」
そう言って、サンジは階段を駆け上がっていった。
アイツら、青春しやがって!!!
サンジにはぜってェ次の島でなんか奢ってもらう。
慌ててウソップ工場を飛び出してきたものの
何をする予定があるわけでもない私は
甲板の手すりに寄りかかってぼーっとしていた。
こんな風にぼーっとするときはいつも、
サンジのことを考えてしまう。
でも私、やらなきゃいけないこともあるんだよな。
なによりもっと、強くならないといけない。
さっきウソップにも言ったばっかりだけど
トレーニングしなきゃ。
筋トレ、痛いから嫌いなんだけどしなきゃだよぁ…
トレーニング室にでも行くか、と思っていると
突然背後から、名前を呼ばれた。
「NAMEちゃん」
「ぎゃっ!」
驚きのあまり、変な声が出てしまって
口を押さえながら振り向くと
そこにはサンジがいた。
よりにもよってサンジに
変な声を聞かれてしまったショックと
大好きなサンジが目の前にいるという嬉しさが
行ったり来たりして、心が大忙しだった。
散々好きなところを声に出して話した後は
やっぱり特に、だめだ。
サンジの顔を見るだけでドキドキして
大好きだと言う気持ちが溢れて切なくなる。
燦々と降り注ぐ太陽の光に反射する
サンジの金髪が、潮風で揺れて
キラキラと光って眩しかった。
サンジは、ゆっくりと歩いて私の隣に立った。
そして、手すりに背中を預けて、
大きく息を吐いた。
緊張しているようにも見えるけど
サンジが緊張することなんて、あるのかな?
サンジは、私の隣に立って凪いでいる海を眺めていた。
遠くで、変な形のイルカみたいな
生き物が飛び跳ねていた。
「今日のおやつも、すっごい美味しかったよ!
やっぱり食べ過ぎちゃったかも」
なんだかいつもと違う雰囲気に
少し気まずくなって私は口を開いた。
無言の時間が耐えられなくなるのは、私の悪い癖だ。
「それはよかった」
そう言って、サンジは嬉しそうに笑った。
サンジの笑顔はいつも胸が締め付けられるけど
今日はいつもよりそれが強い気がする。
「ねえNAMEちゃん」
サンジは、遠くを見ていた視線を私へと動かした。
真っ直ぐ目を見るのが気恥ずかしくて、
わざとらしくならないように、
私は少し視線を外した。
「…何?」
「最近、毎日…ウソップの所に何しに行ってるの?」
「えっ」
予想外の質問に、心臓が飛び出そうになった。
咄嗟にサンジの顔を見ると、
逃げられない程まっすぐな目で私を見ていて
元々嘘をつくのがあまり得意ではない私は
上手に誤魔化すことが出来なかった。
でも、ウソップのところに何しに行ってるかなんて
そんな事絶対に言えるわけがないよ。
なんで、そんな事聞くの?
私が帰った後にウソップに何か言われたの?
でも、ウソップはわざわざ
そんな事話すとも思えないし…
頭の中でぐるぐると考えを巡らせて
私はひとつの考えに至ってしまい
その瞬間胃のあたりがぶわっと湧き上がるような
嫌な気持ちになった。
「…も、もしかして…、さっきウソップ工場で…
話……き、聞いてた…???」
恥ずかしくて、サンジの顔を見る事ができなかった。
「なんのこと?」そう返事が来る事を祈った。
「…うん」
でも、願っていた通りの返事ではなくて。
サンジの返事を聞いた途端、身体中の血がざわざわと
騒ぎ出したような感覚に陥った。
不安がひととおり全身を駆け巡ったあと
全身の体温が一気に上昇した。
顔は、絶対に真っ赤になっている。
ここじゃ他のみんなに見られるしまずい、
と咄嗟に判断して
私はサンジの腕を引いて、
極力一眼につかないように
ダイニング傍のバルコニーへと走って向かった。
バルコニーについてサンジの腕を離して
サンジの方を振り向くと
私は息を切らしているのにサンジは
最初からここにいたかのように全く息も乱れてなくて
それどころか、にこにこ…いや、どちらかといえば
にやにやと、嬉しそうに笑っていた。
「…ど、どこから…聞いて…?」
「う〜ん…巨乳になる悪魔の実、らへんかな?」
「めちゃくちゃ最初の方じゃん…!!」
私は思いっきり項垂れた。
恥ずかしくて恥ずかしくて、逃げ出したかった。
よりにもよってそこ!?
「NAMEちゃん。
ナミさんやロビンちゃんと比べたりしなくても
おれはむしろそれくらいの大きさも可愛くて
ちょうど良いと思ってるからそんな悪魔の実なんて食べなくても…」
「いやーー!!!やめてその話しないで!!」
サンジは謎に大真面目な顔をして私を慰めはじめた。
よりにもよってなんでそんな
アホみたいな話覚えてるの!
いや、それよりもっと聞かれたくない話、
私してたよね!?
私は未だにサンジの顔が見れずに
顔を隠してバルコニーの手すりに体重をかけて
ずっと下を向いていた。
隣から、サンジが優しく笑う声が聞こえた。
「NAMEちゃん、こっち見て?」
「いや。無理…恥ずかしくて死んじゃう」
「それは困るな」
そう言って、サンジの手が
私の頭の上にそっと置かれた。
それだけで全身がびくっと跳ねてしまって
またさらに恥ずかしくなった。
「見ないで…」
絞り出すように放った声は
なんだか情けなくて変な声だった。
「そんな可愛いこと言われたら
見ずにはいられないよ」
サンジの、いつも以上に甘い言葉に
思わず顔をあげてしまった。
しまった、と思った瞬間目に入ったサンジの顔も
いつも以上に甘くて、真剣な顔だった。
なんで、そんな顔してるの?
私の事、笑い飛ばしにきたんじゃないの?
「やっと見てくれた」
サンジの手が、今度は私の手に触れた。
私のドキドキはさらに加速して
それなのにサンジの顔はほっとしているように見えた。
「私の…あれは…気にしないで、
変なこと言ってごめん」
私は目線をサンジから思いっきり離して言った。
目を見てたら、どうにかなりそうなくらい
優しい顔をしていたから。
「嬉しかったよ、おれは。」
そりゃ、嬉しいだろう。
女の子からだったら。誰だって。
私の好きとサンジの好きは違う。
だから、もどかしくて切なくて、直接言えないのに。
「…おれも実は、ウソップに相談してたんだ。
NAMEちゃんの事が好きだけど
どうしたらいいかって」
「え?」
私は耳を疑った。
考えてもいなかったサンジの発言に
また思わずサンジの顔を
真っ正面から見つめてしまった。
サンジは、照れくさそうに笑っていて
その顔が、今のサンジの発言が
冗談なんかじゃないと物語っていた。
「盗み聞きなんて卑怯な真似して本当にごめん。
勇気が出なかったんだ。情けないよな」
サンジは私の手の上に重ねていた手を動かして
今度は指と指を絡ませた。
ドキドキがまた強くなった。
「NAMEちゃんにお願いが2つあるんだ。
聞いてくれる?」
私は何も言わず頷いた。
サンジが嬉しそうに笑ったから
今度は心臓がぎゅっと締め付けられた。
もう、私の心臓どうにかなっちゃうかもしれない。
「1つは、盗み聞きした事を許して欲しい」
「…もう1つは?」
こほん、とサンジは軽く咳をした。
サンジの緊張が伝わって、私まで緊張してきた。
「おれの、彼女になって欲しい」
今日1番の、ドキドキだった。
体中の血が、どくどくと音を立てて
体を巡るたびに少しずつ、
その言葉も体に沁みていくようで
どんどん大喜びして飛び跳ねてるみたいに動き始めた。
夢みたいだし嘘みたいだけど
目の前のサンジは
嘘をついているようには見えなかったし
サンジは、流石にこんな時に
嘘をつくような人じゃない。
サンジの言うことは全部本当だって、わかったから。
「…うん」
「ほんと!?2つとも!?」
驚いたように、なぜか少し心配そうに
確認してくるサンジが可愛く見えて、
私は笑いながら答えた。
「うん、2つとも」
サンジは嬉しそうに、はしゃぐように
肩を揺らして私の正面に立つ。
そしてゆっくりと、私を囲むように
両手を私の両側の手すりへと置いた。
まるで抱き締められる寸前みたいに
視界がサンジだけになった。
「嬉しい」
サンジは本当に嬉しそうだった。
嬉しそうで、甘くて、温かい目をしていた。
その目を見て、やっと実感が湧いた気がした。
私がサンジの事を好きだという事が伝わって
サンジが私のことを好きだと言ってくれた。
それをサンジが嬉しいと言ってくれた。
私、サンジの彼女になるんだ。
突然身体中の血が沸騰したかのように
顔とか耳がぶわっと熱くなった。
サンジはきっと真っ赤であろう私の顔を見て
より一層嬉しそうに笑った。
「おれのことかっこいいとか、
王子さまみたいだとか
あんな褒め言葉は今度から直接言ってくれよ?」
「…!!そ、それはいや…!!」
サンジにあれを聞かれていたことを思い出して、
また恥ずかしさがぶり返した。
私はサンジの胸を両手で押し返すけど
サンジはびくともしない。
サンジの顔をそっと見上げると
これでもかというほどにだらしなく
目は垂れ下がって鼻の下は伸びて
にやにやとにやけていた。
それでも可愛いと思ってしまうから、
もうどうしようもない。
ぽん、とサンジが私の頭に大きな手のひらをのせる。
そのやさしい衝撃で一瞬目を瞑って
次の瞬間目を開けた時には、
真剣な顔のサンジに変わっていた。
「NAMEちゃん」
ひときわ甘い声でサンジが私の名前を呼んだ。
それからゆっくりと近づいてくるサンジの顔に
私の心臓は、ついに今日1番の大きい脈を打った。
end
−−−−−−−−−−−
リクエストいただきました、
ウソップにサンジへの恋バナや惚気をしまくるヒロイン
を書いてみました…が!
最初はアーティーチョーク主人公で書いていたのですが
ちょっと難しかったので主人公は固定無しに変更しました…!すみません…!
ご希望に添えた自信はまったくないのですが、
世話をやいたり、巻き込まれたりするウソップ
大好きなので楽しかったです!
サンジくんとウソップが仲良しなのも大好きです!
ありがとうございました!
戻る
Titolo