リクエスト作品
「花火大会?」
「そう、この島では毎年、五穀豊穣を願うお祭りがあって
景気づけに打ち上げるすごく大きな花火が有名みたい」
「なんでも、夜空が明るく、虹色に染まるみたいよ」
船首の方を見やると、予想通り
ルフィが目をキラキラを輝かせていた。
ウソップとチョッパーと肩を組んで
踊りながら「不思議空!不思議空!」と
オリジナル曲で大はしゃぎをしていた。
その姿に頬を緩めながらも
私自身も心を弾ませていた。
夜なのに虹色に明るく染まる空なんて
どんな景色なんだろう。
「みんなで、見に行くんだよね!?」
私は、隣にいるナミに尋ねた。
「ええ、それに合わせて出店が
並んだりもするみたいだから…
まあ、アイツらは確実に行くだろうし…
私も行くつもりよ。」
「おれはここで酒でも飲みながら眺める」
ナミの向こうで、ゾロが答える。
芝生の上でゴロゴロしていたから
また昼寝しているのかと思った。
ゾロが船に残ってくれるなら船番の心配はいらないけど
ちゃんとゾロも見ることができるのだろうか。
「ここからでも見えるの?」
「ええ、島のどこからでも見えるくらい
大きいらしいわ」
「へえ〜!!すごい!!!楽しみ!!」
どんなものなのか全く想像ができないけど
期待は増す一方だった。
「街で話を聞いたときにね、これ、買ってきたの」
じゃーん!と、嬉しそうに
ナミが大きな袋の中から取り出したものは
どうやらこの土地の衣装のようだった。
綺麗な布の全体に柄が描かれていたり刺繍されていたり
華やかだけど落ち着いた雰囲気のものだった。
「浴衣ね」
「浴衣?」
私は聞いたことはなかったけれど
主に夏島のお祭りの時に着られる衣装で
ワノ国から輸入されて伝わったものらしいと
ロビンが教えてくれた。
「へえ…!着たらどんな風になるんだろう?」
その島独特の衣装が着れるのも
上陸の楽しみの一つだった。
それの楽しさを教えてくれたのは
ナミとロビンだった。
ロビンも、洋服を楽しみ出したのは
この船に乗ってからだと言っていた。
私も同じで、嬉しくなったのを覚えてる。
「早速着てみましょ」
私の腕を引っ張って女子部屋へと戻っていきながら
「あ、お代は宝払いでいいわよ」とナミは耳打ちをした。
当然そうなるだろうと思っていたので私は笑ったけど
とっても綺麗な生地と柄で、値段の想像がつかなかった。
ナミが選んでくれた浴衣は
夜の海のように深いオーシャンブルーに
アイボリーや淡いベージュを使った
大輪の花が描かれていて
あまり派手な色味を使っていない
落ち着いた雰囲気のものだった。
それに淡い水色の帯を合わせて、
その上からまた青い、帯締めと呼ばれる紐を締めた。
私の大好きな青のグラデーションのチョイスは
さすがナミだと思った。
こんなにややこしい衣装の着方をよく知っているなと思い
ナミにそう告げると、
購入した店で教えてもらったとのことだった。
「それだけで覚えられるなんてすごくない?
さすがナミ!頭いい〜」
「ええ〜?
まあ…確かに私は頭も良くて可愛くて美人だけど…」
素直に褒めると、ナミは照れながらも
にこにこしてとても嬉しそうに
私の浴衣を整えてくれた。
その姿が可愛くて、私の髪を結ってくれているロビンと
鏡越しに目を合わせて笑った。
「まあ、簡単な着方を教えてもらっただけだから
激しく動くと気崩れしちゃうから、
今日はおしとやかに振る舞いなさいよ」
まるで私が普段ガサツだとでも
言われているようだったけど
ガサツとまでいかずとも
おしとやかとは確かに程遠いので
大人しく頷くことにした。
「さ、できたわよ」
そう言われて、姿見の前で全身を見ると
体をすっきりと真っ直ぐ見せてくれるラインと
独特なレトロな空気を漂わせるデザインが
とても素敵で、落ち着いた雰囲気で
いつもの私じゃないみたいだった。
その土地の衣装を身につける時の独特の高揚感だった。
「かわいい…!」
思わず口にすると、ナミもロビンも
よく似合ってるわよと褒めてくれた。
それから、ナミに教えてもらいながら
2人の着付けの手伝いをして
お互いに、浴衣姿へと変身した。
浴衣の色に合わせた草履と小さな巾着を持って、
少しドキドキしながら、女部屋の扉を開けて
甲板へと出る。
「じゃーん!!どう?かわいいでしょ?」
溌剌としたナミの声が甲板に響く。
口々に私たちの衣装を褒めてくれるクルーのみんなも
いつの間にか浴衣に着替えていた。
「みんなの分全部、ナミが買ったの?」
「私とウソップと、サンジ君の見立てよ」
みんなそれぞれの雰囲気にあった
色や柄の浴衣を選んであって
とてもよく似合っていた。
特におしゃれな3人の見立てはさすがだった。
そんなみんなの姿を見たら、ますます心が弾んできて
早く出かけたい気持ちになったけれど
ふと、そこにサンジがまだいないことに気づいた。
「あれ…?サンジは?」
「サンジならおれ達の浴衣着せてくれたから
まだ部屋で準備してるんじゃねェかな?」
てくてくと私の元へ歩いてくるチョッパーも
ペット用なのか、絶妙なサイズの浴衣を着ていた。
あまりに可愛くて、私はその場に座り込んで
着崩れない程度に撫で回した。
「そうなの?1人で?」
「あー、ついはしゃいでさっさと出てきちまった」
やべェ、と頭をかきながら気まずそうに
後ろから顔を覗かせたウソップにため息をついて
私はチョッパーを撫で回してる手を止めて、立ち上がった。
「じゃあ私サンジ見てくるね。
手伝い必要で困ってるかもだし」
そうしてちょうだい、とナミはひらめいたような顔をして
私に手を振って送り出した。
着慣れない衣装で明らかに舞い上がってる皆は
お互いに褒めあったり、
上陸後の行動の計画を立てたりと盛り上がっていて
ルフィに至っては既に船から姿を消していて
それを追いかけるようにウソップやチョッパーも
早々と船から降りていった。
まだ船にいるナミが、みんなの背中に向かって
問題起こすんじゃないわよ、とか
目立った行動したらダメよ、などと叫んでいたけど
本人たちに聞こえている可能性は限りなく低そうだった。
聞こえていたところで
言うことを聞くかどうかという問題だけど。
私は早足で、サンジがまだいるであろう
男子部屋へと急ぐ。
浴衣はとてもタイトなシルエットだから
足がちょっとずつしか開かなくてすごく歩きにくかった。
着崩れるからと念押しされたナミの顔が頭に浮かんで
狭い歩幅を崩すことができなくて
ちょっとの動きでももどかしさを感じた。
「サンジー??着替え終わった?」
男子部屋にノックなど必要なのかという思いが
一瞬頭を過ったけど
中にいるのはサンジだし
着替えの真っ只中だといけないと思い
控えめにノックをして
閉じたドアの奥にも聞こえるように
大きな声で呼びかけた。
「NAMEちゃん???
ちょうどよかった、入ってきてくれる?」
中から聞こえてきたサンジの声は少し焦っているような
でも安堵しているような声色だった。
やっぱり、1人で困ってたんだなと思って
私は急いでドアを開けた。
ドアの向こうにいたサンジは
私の姿を確認すると、困ったような顔から
突然目をカッと大きく見開いて、
恐ろしい顔になったので
私は一瞬、たじろいだ。
なにか、とても深刻な問題が
起こってしまったのだろうか。
「NAMEちゃん……」
「ど、どうしたの!?」
「綺麗だ……!!!!」
「は?」
ごくりと息を呑んだサンジは
私の全身を舐め回すように見終わると
全身からハートを撒き散らし、
相変わらずよくもまあそんなに
次々と褒め言葉が浮かんでくるなと
感心してしまうほどに、私の姿を褒め称えてくれた。
「ありがと…」
サンジから褒められるのは本当に嬉しいけど
なにかあったんじゃないかと
一瞬割と本気で心配したので
心配を返して欲しい。
そう思ったけど、お決まりのこの流れに
いちいち反応してしまった
私にも多少問題はあるなと反省して、気を取り直した。
「浴衣。1人じゃ着れなかったんでしょ?」
そういうと、サンジは今思い出したかのように
そうだった、と言った。
「アイツら真っ先に出て行くから
ちょっと焦ってたんだ」
さっきまでそんなことも忘れてデレデレしていたくせに
今度はとても困ったような顔をするサンジが
少しおかしくて、そして可愛くて
私は笑ってしまった。
「だよね、ルフィなんかはしゃぎまくって
もう着崩れてるんじゃないかな」
「確かに」
咎めるような言い方をしながらも
嬉しそうに笑うサンジ。
サンジの言葉の端々や表情から溢れ出る
仲間への愛情を垣間見るのが、私は大好きだった。
「私たちも急いで行こう」
そう言って改めてサンジの浴衣を整えようと
サンジの顔から浴衣の方へと視線を下ろすと
着付けの苦戦の様子が窺える
はだけた胸元が目の前に広がっていて
その滑らかな肌と筋肉の起伏に
心臓がどくんと激しく脈打った。
同時に顔が熱くなったのも感じて
サンジにバレないようにと、少し俯いた。
頭上から感じる気配から
無駄な抵抗であったことはすぐにわかったけど。
「NAMEちゃん、今、やらしいこと考えたでしょ〜?」
「、!?考えてない!!!」
へたくそな否定が、逆にそうだと認めているようで
ますます恥ずかしさが増した私は
力一杯サンジの襟元を引っ張って、形を整えた。
「変なこと言ってないで、早くしよ!」
「ごめんごめん」
笑いを堪えるように震えた声で返事をするサンジの顔を
直視することができなかった。
サンジからの視線が痛くて
何度も気が散りそうになったけど
頭をフル回転させて、さっきナミから教えてもらった
帯の巻き方を思い出して私はなんとか、
サンジの浴衣を着付けることができた。
「一応…できた」
そう言って顔を上げると
優しく柔らかく笑うサンジの顔が
思ったよりも近くにあって
またどきどきがぶり返しそうになった。
「ありがとう。
人にやるのと自分にやるのじゃ全然違って
流石に焦ったから、本当に助かったよ」
改めて、着付けの終わったサンジの姿をまじまじと見る。
和服と、サンジの金髪は
一見アンバランスになりそうなのに
鍛えられたバランスの良い体つきと
サンジが元々持っている、
(黙っていれば)落ち着いて見える雰囲気とが
とても絶妙にマッチしていた。
なんというか…とても、色気があった。
私を見て綺麗だと言ってくれたサンジも、
今の私みたいに心臓がぎゅっと締めつけられるような
胃のあたりが少しもやっとするような
意も言われぬ気持ちになってくれたのだろうか。
同じような気持ちだったら嬉しいな、と思った。
「よかった。
その……すごく、似合ってる」
素直じゃない、褒めるのが下手くそな私の
精一杯の言葉だった。
優しいサンジは、それを理解してくれているかのように
とても嬉しそうに笑って
照れたように、自分の鼻の頭をぽりぽりと掻いた。
「ありがとう。
えっと…じゃあ…、行こうか?」
そっと差し出されたサンジの手の上に
私も手を重ねた。
「うん」
手を繋いで甲板に出ると、そこはもぬけの殻だった。
「みんないなくなってる…」
「まァ、予想通りというかなんというか…
マリモはいるみてェだから、おれ達も行こう」
サンジは展望室の方を顎でしゃくって言った。
私には見えなかったけど
サンジが言うならきっとゾロは展望室にいるのだろう。
あたりはもう薄暗くなっていて島からは
いかにも祭り、といった雰囲気の
音楽や人々の騒めきが聞こえてきて
気持ちが自然と湧き上がってきた。
「うん!」
サンジに抱えてもらって船から降りて
少し歩くと、出店がずらっと並んでいる通りに出た。
夏島ならではの、むせかえるような熱気に乗って
魚介や肉を焼く香ばしい香りや
飴細工のような甘い匂いや
スパイスの匂いなど色んな匂いが漂ってくる。
それでいて渾然一体となって、しっくりと収まるようで
妙に心地が良くてなんだかお腹が空いてきた。
1番最初に目についたのは
虹色の大きなソフトクリームだった。
どうやら、ロビンが言っていた空が虹色に染まる花火をイメージしたものらしい。
巨大な花火だからソフトクリームも
普通よりも大きめに作っていると
屋台の主人が自信満々に語っていた。
美味しそうだけど1人で食べられるか不安で
どうしようと悩んでいたら
物欲しそうに見ていた私に気づいたサンジが
一緒に食べようと言って買ってくれた。
「でもサンジ、あんまり甘いもの食べないんじゃ…」
「大丈夫だよ、NAMEちゃんが食べさせてくれたら
どれだけでも食べられるから」
謎の原理をさも当たり前かのように真顔で言われ
私は思わず吹き出してしまった。
笑いながら受け取ったソフトクリームは
確かに写真の通り虹色をしているけれど
いかにもどぎついカラーリングというわけではなく
不思議と透明感があって、優しい色味だった。
サンジはその色味がどうやって作られているのか
興味をそそられたようで
店主に材料や作り方を尋ねていた。
専門用語が飛び交うその会話に
私は混ざることは出来なかったけど
料理の話を夢中でしているサンジの姿が
私は大好きだったから
うきうきが迸るその背中を見守っていた。
いつまででも見ていられるくらい、愛おしい背中。
しばらく話をした後に、はっと思い出したかのように
こちらを振り向いて、
ごめん、と謝るサンジの姿もまた可愛くて
私は笑いながら、サンジの口に
ソフトクリームを突っ込んだ。
いたずら心で少し強引に
ソフトクリームを食べさせたのに
唇についたクリームを舐める様がかっこよくて
見惚れてしまって、少し悔しかった。
その時、大きな破裂音があたりに響いて
いつの間にか暗くなっていた空が
少しだけ明るくなった。
少しびっくりして空を見上げると、
花火の打ち上げが始まっていた。
澄んだ夜空を背景に鮮やかな丸い花火が次々と炸裂する。
力強く華やかで弾けるたびに
きらきらと煌めく火の粉も綺麗だった。
ソフトクリーム屋のおじさんが
虹色の花火まではまだ時間がある、と教えてくれた。
「やべェ。うっかりしてた。
NAMEちゃん、行こう」
少し焦った様子のサンジが
私の腕を引いて、早足で歩き始めた。
「どこ行くの?」
「とっておきの場所だよ」
そう言うサンジに腕を引かれながら
人混みをすり抜ける。
浴衣が足にまとわりついて自然と歩幅が狭くなることで
なかなかいつも通りの速度で歩くことができない私に
サンジがこちらを振り向いた。
「ごめん、歩きにくかったよね?」
少し息切れをする私の顔と
いつもより遅いスピードの原因である足元を
交互に見るサンジは
とても申し訳なさそうな顔をしていて
珍しく、少し焦っているようだった。
それから、少し考えるような素振りを見せて
それから小さな声でまた、ごめんと呟いた。
なんの事か分からなくてうまく答えられずにいると
視界が動いて、体が急に軽くなって
気づいたら、私はサンジに抱き抱えられていた。
「えっ!??ちょっと」
「ごめんね、NAMEちゃん。ちょっと急ぐから」
いくら人混みで溢れているとはいえ
大の大人が抱き抱えられる姿は
流石に人目を引いてしまって恥ずかしかった。
私は外からの視線や感覚をシャットアウトするために
目をつぶって体を丸めて、
サンジの首元に、おでこをくっつけた。
「ナミに、目立つことするなって怒られる」
サンジが走るたびに揺れて身体に伝わる振動と
浴衣の薄い生地から感じる体温。
そして背後で、ひゅうっと花火が打ち上がる音と
ドン、と花火が花咲く、盛大な破裂音。
その全てが相まって、なんだか夢うつつのように
ぼんやりとふやけた気分になっていたようで
思ったよりも、甘ったるい声が出た。
「ははっ、そりゃ、見つからねェように急がねェとな」
サンジは嬉しそうに笑った。
私が恥ずかしさを誤魔化すために言ったってことを
お見通しみたいに。
サンジの圧倒的な脚力のおかげで、
私達はあっという間に目的地についた。
そこは、人々がわいわいと騒めく祭り会場からは
少し離れたところにある高台で
生い茂った木々と剥き出しの岩などがあるものの
少し人の手が加えてあるようで
足元は簡単にではあるけれど均されていた。
祭り会場あたりが覗けるように
絶妙に木々が分けられていた。
こんな穴場スポット、地元の人が知らないはずないのに、
周りには誰もいなかった。
「サンジ…ここ、
勝手に入って大丈夫なところなの?」
「あァ、それは問題ねェ。
昼間買い出しの時に知り合ったじいさんの
私有地らしいんだが、もう使わねェからって
今日だけ貸してもらった」
「…脅したわけじゃないよね?」
「ははっ、人聞きの悪ィ事言わねェでくれよ」
はっきりと否定するわけではない返事に
少し訝しんだけど
サンジの表情からすると、恐らく、
安心して良さそうに感じたので少しホッとした。
「それにしてもNAMEちゃん。
おれはずっとこのままでも嬉しいんだけど…
…暑くないかい?」
「えっ?あ!」
そのサンジの声で私はまだ
サンジに抱き抱えられたままであることに気づいた。
「ご、ごめん!」
私は急に恥ずかしくなって、
焦ってサンジの腕の中から降りた。
この暑さの中抱き抱えられて少し汗ばんでいるくせに
名残惜しささえ感じてしまった。
「ごめん。重かったよね」
「いいや?全然。」
サンジはにっこりと微笑んで、タバコに火をつけた。
もっと太ってもいいくらいだよ、
なんてウインクをしながら。
サンジの方を見ると、浴衣が少し乱れていた。
あの人混みの中、私を抱えて走ってきたから
当然といえば当然だった。
「サンジ、浴衣はだけてる。直すね」
「お、すまねェ」
サンジに向かい合って、帯の周りや襟元を正す。
サンジは私の顔に当たらないように
顔を逸らしてふうっと煙を吐く。
それから、ごめんねと言って
携帯灰皿にタバコを押し潰した。
ひととおり浴衣を直した後、
それを知らせようと目線を上へと動かすと
私をじっと見つめるサンジと目があった。
「な、なに?」
私を見つめるサンジの目は優しくて、
甘くって、真剣で
大好きだけど、少しだけ苦手だった。
ドキドキしすぎて
どうしたらいいかわからなくなるから。
だから、ちょっと強めに言い返してしまうのは、
本当に私の悪い癖だ。
サンジは、いつも優しく笑って
返事をしてくれるけど。
今日も、いつも通り優しく笑って
そのうえ私の頭をゆっくりと撫でた。
「いや?可愛いなァと思って」
「!?」
サンジがこういうことを言うのは
日常茶飯事とはいえ、何度言われても慣れない。
「あら、ありがとう」なんて軽くあしらえたら
かっこいいなと思うのに毎回過剰に反応してしまう。
それはきっと、
私がサンジのことを大好きな証拠なんだろうけど。
上手い返事ができずにいると
サンジの顔がゆっくりと近づいていることに気がついた。
その時のサンジの目の色を、私はよく知っている。
この目をしたときの後に起こることも。
私は、ばくばくとさらに動きを早める心臓を押さえながら
そっと目を閉じた。
サンジが嬉しそうに笑うのを感じて
それから恐らくもうすぐにでも触れ合うところに
近づいているであろう気配を感じた。
ドォン!!!!!!!!
一際大きな爆発音が聞こえて、咄嗟に目を開けた。
至近距離にいるサンジも
驚いたように目を見開いていて
サンジの光る金色の髪の毛が、
虹色に変わったように見えた。
一瞬、その色に見惚れていた。
キラキラと光る虹色が、あまりに美しくて。
「NAMEちゃん!空!!」
サンジのその声で我に返って
弾かれるように空を見上げると
さっきまで深い海のような青くて黒かった夜空が
あたり一面、きらきらと輝く虹色に変わっていた。
ちょうど、私たちの目から真正面に見える空が
虹色に染まっていて
首を上げて真上から背後にかけては
元々の夜空とのグラデーションになっていて
幻のように鮮やかで、美しかった。
「わあ…!!!!すごい…!!」
虹色の空だけでなく、その光に照らされた街も
まるでさっきのソフトクリームみたいに
透明感のある虹色のベールに包まれて
煌めいて光を放っていた。
かと思うとまた、口笛のような細い音と
破裂する大きな音が鳴り響き
空や街が虹色に輝き煌めいた。
何度も何度も繰り返されて、
思ってたよりも長い間、虹色に染まり続けた。
その間も、私達は無言で
目の前に広がる美しすぎる景色を
ただただ眺め続けていた。
言葉が出てこない。
けれど心は浮き足立ってドキドキと脈を打つ。
いつの間にか指と指を絡ませ合っていた
私の手をサンジが引っ張る。
私はそこで初めて、
虹色の空と街から目線を動かした。
私と目が合ったサンジは、
何も言わずににっこりと笑った。
「綺麗だね。なんか、夢でも見てるみたいな景色」
私はそう言って、また空へと視線を動かした。
「あァ。きっとこの世界には、
おれたちが見たことねェ景色が
まだまだたくさんあるんだ」
「うん。私…サンジと…みんなと
もっといっぱい、見たことない景色を見に行きたい」
「おれもだ。
ま、ルフィといる限り、
見たくねェつったって
連れて行かれるだろうけどな」
「確かに」
私達はそう言って、一緒に声を出して笑った。
みんなと一緒なら、どこまでだって行ける。
そう思って心が熱を持った。
なんだか無性に、みんなに早く会いたくなった。
空が、徐々に虹色の光を失って、
元の夜空へと戻っていく。
花火大会は、これで終わりのようだった。
一瞬だからこそ魅力的なのは分かっていても
やっぱり終わると、
寂しくて独特の切なさが残るものだ。
「終わっちゃった」
「だな。
…NAMEちゃん」
名残惜しくて思わず呟くと、
サンジが私の名前を呼んだ。
呼ばれるがまま顔をあげると
サンジの唇が、そっと私の唇に触れて
それから、そっと離れた。
私はなんだか切なさが増した気がして
サンジをぎゅっと抱きしめた。
サンジの腕が私の背中に回って
優しい力を込める。
顔を少し動かして、
サンジの胸元に耳をくっつけると目を閉じた。
サンジの鼓動が聞こえる。
少し早めの鼓動の音と
背中からじわりと伝わるぬくもりに
心が解けるような、ほっとした気持ちになった。
体を離してサンジの顔を見ると
サンジも安心したような顔で笑って
今度はさっきよりもゆっくりと口づけをした。
下唇を優しく噛んで、形を確認するようなキスは
あたたかくてとても親密な気持ちになる、
大好きなサンジのキスだった。
「連れてきてくれてありがとう。」
唇同士が離れた後、
サンジの目を見つめて心からのお礼を告げた。
細かいことは言わないけど、
絶対、一生懸命ここを見つけてくれたのだろう。
「喜んでもらえたならよかった」
「うん。こんな特別な場所で見れるなんて、
最高だよ」
サンジは、にいっと無邪気な顔で笑って
よかった、と言った。
「じゃあ…名残惜しいけど。帰ろっか」
「…うん」
手を繋いで、今度はゆっくり、
2人で話をしながら帰路についた。
船に帰った頃にはみんなもう船に帰りついていて
虹色の花火についてそれぞれ話に花を咲かせていた。
「ちょっと〜!遅いわよ!」
「お!サンジとNAME!帰ってきたな!
よーーーしっ!!宴だ〜!!!」
花火大会で散々はしゃぎまくったはずなのに
まだまだ元気が有り余っているようだった。
でもあの花火を見た後、
なんだか仲間と一緒に
騒ぎたくなる気持ちがわかるような気がした。
私も、そんな気持ちになったから。
サンジの顔を見ると
サンジも同じ気持ちなのか
2人で顔を見合わせて笑った。
花火はすっかり終わって、
いつもの顔を取り戻した夜空に
みんなの乾杯の声が響き渡った。
リクエスト、浴衣デート!でした!
ご希望に添えたかはわかりませんが、夏のうちにアップできてよかったです…
浴衣に対する感覚をどうしようかすごく悩んだんですが
民族衣装的な立ち位置?にしてしまいました…
そしてまたまた文章が長くてすみません!!
そして最終仲間〜!な終わりかたですみません…!
リクエストありがとうございました!!
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