君のために



9つ目の魂に移り、この生を全うすれば猫又になれる…そんな時だった。
ドジを踏んだ私は車に轢かれそうになった。
ライトで目がくらんで動けなくて、ああ、猫又への夢もここで、と覚悟をした時だった。

「…!いった…、お前、危なかったよ。気をつけろよ」

突然何かに抱えられ、そのまま暗転した世界で転がる感覚がした。
視界が開け、目の前に見たのは気だるげな目に、眉間にシワをよせた人間の顔だった。
どうやら私は、この人間に助けられたらしい。
私の体を支える手に、怪我をしているのを見つけてしまった。

「にゃー」

「ああ、これ。大丈夫」

そう言って頭を撫でられる…気持ちいい、温かい。
しばらく撫でたあと、彼は立ち上がった手を振りながら歩きだす。

決めた。私は、彼に恩返しをするために九つ目の魂を使おう。



back


ALICE+