自分で決めていることは多くある。最善を尽くすために。
最近の俺は、おかしい。なんだか気持ち悪いような感覚がして、やっぱり勘違いなような。嫌な感じだ。変わらず全てやり尽くす努力はやっているはずなのに、だ。
手首をぐにゃりとストレッチしながら考え事をしていると、古森が隣でストレッチを始める。
「で、今日はなに考え込んでんの?」
「……古森はインフルエンザ毎年打ってるだろ」
「急すぎじゃね?お前が部員全員に打て打てしつこいんだから、聞かなくてもわかるだろ」
「子供んときの予防接種は打ってんの?」
「いやいや!さすがにそれはわかんないし!打ってるんじゃないの?普通」
簡単に寄越した返事に妙にしっくり来ながら、同じことをみょうじさんに聞いた自分に呆れる。調子が狂っていたのか。彼女は一体。何故なのか。細切れの言葉に疑問符がたくさんついた。未だにわからないまま。
「バレーには影響でてないしいっかと思ってたけどさー、最近なんかあった?割と機嫌良いだろ」
「は?機嫌良い?やっぱおかしいよな?なんで?いつから?」
「そこまでは観察してないからわかんないわ。まぁ大事なエースがバレーに影響でたら困るし?ほら、言ってみ」
深くため息をつき、考える。確かにこんな話できるのはコイツしか浮かばないと、磨かれた床に腹を着けながら。
「席近い女子がYシャツに糸ついてるって言ってすぐ取ってくれたんだけど。いつもなら絶対無理じゃん」
「そうだろうな」
「……でも嫌な感じ全然しなかったんだけど、なんで?」
「え?佐久早が?」
「やっぱりおかしいんだよ。昨日の朝練は早く終わっただろ。教室入ったら、その女子最初で、次が俺で。なんか普通に話し込んでんの。俺あんま女子と喋らないよな?だよな?」
「そっかそっかー!ふーん……」
「気持ち悪い顔やめろ」
ニヤニヤニヤニヤ。古森の反応にいちいちムカつきながら話を続ける。さっきの質問もした、と口にすると、ヘラヘラが一転、可哀想とでもいいたげな顔で俺を見てくる。それのせいで俺の眉間にシワが寄った。
「それ引かれるやつ!」
「……母親に聞いてみるって言われたけど」
「なに?その子すごくない?てかなんでそんなこと聞いたわけ?」
「気づいたら言ってただけ」
「……普通は聞かないからね?」
話をしているだけで心臓がざわざわする。久しぶりに感じたようなざわざわの正体はなんだ。
切り替えて、部活。いつも通り、やるべき事はできている。間違いない。でもまた制服を着ると、頭の中は元通りだ。Yシャツのボタンをとめて、コロコロをかけているとおもちゃでも見つけたような古森に小声で話しかけられる。
「なー、その子。なんて名前?」
「……みょうじさん」
「えっ!俺去年同じクラスじゃん!そっかー!みょうじなー、なるほどなー!なんかわかる気がしてきたなー、佐久早が思ってる感じ」
「あ〜〜なんか嫌だ、理解するな」
「ブハッ!そーとーみょうじのこと気になってんなー!」
「…帰る」
「図星だな!否定できてないじゃん!」
爆笑する古森を置いて部室を出るはずが、気づくとまた隣にやってきて、追い討ちをかけてくる。古森のせい、いや、言いたくないが古森のおかげか。頭の中の疑問符が一気に整理されたところで、一気に多分それが膨らむ。ざわざわは気持ち悪くて、しっくりきてて。そっからの古森の話はほとんど聞いていない。多分、どうでもいい茶化しだろ。