インスタントのお味噌汁、ベーコンエッグに炊きたてのごはん。着替えを済ませた遊児くんと、パジャマの私。セットされた髪と、とかしただけのちょっと寝癖のついた髪。週に何度か、対照的な朝がある。

 休みが合わないことは仕方ない。もちろん悲しいけれど、それでも毎日ゆっくりの朝を迎えられることは、遊児くんと私にとってかなりラッキーなことだった。
 平日休みの遊児くんと、土日休みの私。少し早起きをし、許された2人の時間は1時間半ほど。苦手な早起きも、遊児くんとならなんのそのだ。

「今日って勉強会だっけ?」
「そーそー、だから先に寝てて」
「……でも待ってようかな。明日も休みだし。見たい映画もあるし。遊児くんと寝たいし」

 向かいのお皿はすっかりきれいになっていて、ごちそうさまと手を合わせた遊児くんが目を見開いたあと、太陽みたいに笑った。
 優しさを受け取らなかったのは、朝が来て隣に寝ていたことを知るよりも、一緒に目をつむって一緒に朝を迎える方が私にとって幸せなのがわかっているから。

 お皿を下げた遊児くんがきれいになったお皿を重ねる私の後ろに立ち、ゆるく空気を含ませるように手櫛で髪をといた。

「映画見ながらソファで寝落ちしてたりして」
「じゃあいっぱい昼寝しとく」
「いいなー、俺も昼寝したい。もうねみーもん」

 揃って昼寝をしたのは、かなり前だったっけ。この部屋での思い出は、朝と夜のことばかりだ。いってらっしゃいとおかえりを言い合ってばかりだ。それでも不幸でないのは、遊児くんの明るい性格のおかげだと思う。

 シンクに置いたお皿やコーヒーカップはそのままに、玄関まで遊児くんの背中を追えば、お気に入りのスニーカーを履いた遊児くんが振り返って私を抱き締めた。

「んじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい」

 光をまとうその背中に、扉が閉まるまで私は今日も願った。遊児くんが今日も幸福でありますように。

ストロー × イエノー / 照島遊児

モドル