雨は嫌いだ。すごく寂しくなるから。

 傘を差して隣を歩いても、手は繋げないし声は通らない。影山くんは所謂バレーボールバカだと日向が言っていた。居残り練習が多いから待たなくていいと言われて、次は朝練で早いから一緒に行けないと言われて。正直落ち込んだ。いちばん大切なものが決まっている彼に、恋人としての態度や言葉を求めてはいけないような気がした。
 体育館の点検日は私にとっては幸福で、影山くんにとっては絶望なんだと思う。

 その幸福のはずの今日、久しぶりに一緒に帰るというのに雨が降るなんてつくづくツイてないなぁ、私。

「影山くん」
「……」
「影山くん!」
「あ、悪い」
「この間の試合のサーブすごかったね」
「別にすごくないだろ。もっと練習しないと」

 今はバレーの話をするべきじゃなかったかな、なんて思ったのは後の祭り。影山くんの声は掻き消されずに私の耳に届いたけれど、そのまま雨と一緒に地面に落ちたんだと思う。

 返す言葉が思い付かなくて黙り込み、こっそりと下唇を噛んだ。私が告白をしたとき、確かに影山くんは満面の笑みではなかったけれど、縦に首を振ったのだ。
 バレーに明け暮れる姿も、勉強に頭を抱える姿も、自販機で2つ一気にボタンを押す姿も、何をしていてもそこに居れば見てしまう姿さえも好きになった私に。

「影山くんは、私が別れたいって言ったらどう思う?」

 足を止めて声を出しても影山くんの足は止まらなかった。影山くんのせいじゃない、雨のせいだ、それに私の狡く狭い心のせいだ。本当は別れたくなんかないけれど、別れた方がいいのはわかっていた。どこかで聞いた言葉を借りるなら、住む世界が違うんだ、きっと。

 横断歩道の白を踏んで道の向こうへ行った影山くんは、そこでようやく振り返って私に気づく。
 一生一緒にいれるなんて思っていたわけじゃない。どうせ高校生の恋愛だ。そして相手は影山くんだ。赤になった信号が青になったら言ってしまおう、さっきの言葉を少し変え、疑問符をなくして。

 一秒でもいいんだ。私のことを好きだった瞬間があったなら。それでもう、背伸びをやめて笑顔で手を振るから、あの時みたいに頷いて見せてよ。

雨踏むオーバーオール × 影山飛雄

モドル