両脇にあるゆるく畳まれた膝すらも愛しく思う。
肩の重みはさほどなくて、私の膝の上で包み撫でられる手はすごく嬉しそうに熱を持っている。3年になって部活はより一層忙しくなると、学校以外で会う時間は格段に減った。だからこうして一緒におうちでのんびりする時間は以前よりもっともっと貴重な時間になっていた。
これからがこの先も続くのなら、もっともっと、会えなくなるのかもしれない。正直、そうなったら悲しくて泣いてしまう日が必ずあるだろう。
「1年生の女の子が声掛けてきてね、言われたの。佐久早先輩と付き合ってるんですかって」
「……は、」
「あ!違うよ。普通に質問って感じでね」
「ああ、」
「付き合ってるって言ったら、すごい羨ましがられちゃった」
くるりと振り向いて臣くんを見れば黒目に私が映り、薄い唇が動く。出てきたのは興味のなさそうな一言だけだけど、それで私の頬はへらりと緩む。側に居る時間が増えるほど臣くんへの知識は高まって、心のシャッターがきられていくのはとっても幸せなことだ。
手洗いはきちんと指の間や手首まで手を洗い、ハンカチを内側に畳むようになったことも、前よりも綺麗好きになったことも、臣くんと一緒にいる時間が増えなければなかったことだと思うと嬉しさを我慢できるはずもない。
「1年もあっという間だったもんね」
「……なまえちゃんだからじゃないの」
「うん?」
「残りの一生分の1年と思えば、まだまだだけどな」
いまこの瞬間、この空間は6畳の世界に思えた。2人だけがいれば成り立つ世界。臣くんと私にはお互いがいちばん輝いて、それこそお互いしか見えないほどに恋をし合っていければいいなと思った。
星のない世界 × サイレント / 佐久早聖臣
モドル