まだ1年の頃。忠の背が高いのに目立たなかったのは、もっと背の高い月島の隣にいつもいたからだったけれど、進級するたびに瞳や雰囲気が変わっていくのは周囲も気付いた。
目立たない付き合いをしていた忠と私の関係を知る人はそう多くなくて、知らずに忠に告白をした子が何人かいたというのは知っている。優しく、周囲に気を使えて、背が高く、側にいて落ち着ける、そんなのは誰しもがわかっていることなのだけど、いちばんに気付いた私って本当にすごいと思うのだ。
「せっかくなまえといるのに俺の買い物しちゃってごめんね」
へにゃりとした笑顔は、弱々しくて柔らかくて、どこかくすぐったい気分になる。サポーターを手にとってレジに向かう後ろ姿を眺めながら歩けば、心なしか心配そうに忠が振り向いて立ち止まった。
「なんで後ろ歩いてるの?」
「……知ってる?忠の背中、見てると安心するんだよ、抱き付きたくなるのも我慢しなくちゃいけないけどね」
「そ、そうなんだ」
長い人差し指でほんのり染まった自分の頬を触り、お手本のような照れ隠しをして笑う。どこが好きとかじゃない、全部好きなの。伝えても伝えても、伝えきれないくらい。
柱に寄りかかりながら爪先を上げ下げしてお会計が終わるのを待っていると、大きな歩幅のまま足早にやってきた忠がサポーターの入った袋ごとバッグにしまってそっと私に手を伸ばした。
「手、繋いでもいい?」
ちょっと恥ずかしそうに、かっこつけずに言う忠に見とれ、それは反則だと胸をときめかせながら思った。
「ううう……すき〜〜〜」
「え、なまえ?俺へんなこと言った?」
「言ってない〜〜〜」
しゃがみそうになりながら手を掴めば曲がった膝を伸ばすようにゆっくりと引き上げられとき、きゅーん、とときめきの止まない心臓が音を出した。
首をかしげる忠を見上げ、繋がった手を見て思う。大好きだよって。
きらっきらに恋をするのって、どうしてこんなにも楽しいんだろう。大好きな恋人を全力で大好きだと思うのは、どうしてこんなにも満たされるんだろう。
好きの量がどっちが多いかなんて気にしない。だってつまんないもの。忠が恋人であるというその事実だけで、最強な私になれちゃうんだもの。
ボーイフレンド × 山口忠
モドル