じんわりかいた汗が夏のせいかそうでないか見分けはつかなかった。だって色は同じだもの。グレーのボックスシーツに清潔感のある黒い髪がさらさらとなびき、筋の入った腕が目元を覆っている。高揚する気持ちはなかなかおさまらなくて、目を瞑るのも勿体ないと思っているところだった。それに隣で眠る治の寝顔はまだしばらくは見ていられる。

 Tシャツ焼けの下は思っていた以上に綺麗な筋肉がついていて、とろりとした目が私をとらえているという事実さえも背中をつーっと撫でられるように静かで後をひく刺激が襲った。

 朝が来なければいいのにと思い、朝が来てほしいとも思う。その間ずっと静かな部屋に治の寝息と壁掛け時計の秒針の音が響くのは、あまりにも幸せで倒れこむように枕に頭を預け直した。



 扇風機のスイッチを入れた音で目が覚めると、いつの間にか朝が来ていた。いつ寝たのか、その答えは出ないから考えないことにして、扇風機で涼む治を黙って堪能する。
 私が起きたことにまだ気付いていないからと気を抜いていたところに治が振り返って、視線が絡んで唇は弧を描いた。どうしよう。すごく愛しい。

 扇風機の首をまわし、私に向けてくれた治は緊張のない瞳を向けながらベッドに戻ってきた。比例するように、私の方がばくばくと緊張するというのに。

「……おはようさん」

 霞んだ声が色をつけ、私を染めていくと同時に、昨日初めて触れた肌の記憶は鮮明に残り、塗り重ねるように色は濃くなっていった。

「よう眠れた?」
「……ぐっすり」
「俺も。扇風機忘れるくらいやしな。おかげで暑くて目覚めたわ」

 幸せはどこにでもあるけれど、この幸せはどう足掻いても特別だった。髪をといたその手が包むように片耳を塞ぎ、ゆったりと瞬きをする。うん、やっぱり特別の幸せだった。

 昨日から今日のこと。新しく知ったことを私の記憶のまるいかたまりにひとつずつしまって転がせば、カラフルに色を付けてはねていく。
 そして、軽く高く軽やかなその記憶にそっと名前をつけることにした。

恋のスーパーボール × 宮治

モドル