なんであんたが合コンなんて来てるの、と初っぱなで口にしなかった私はすこぶる偉いと思う。うん、まじで。

「じゃあ私達こっちだから」
「うん、またね」

 小さくなっていく甘ったるい雰囲気を醸し出す2つの背中に早々に背を向けると、隣で貼り付けたような笑顔をしていた月島が私のよく知った表情にくるっと表情を変えた。そして、悔しながら懐かしいと思ってしまった自分にちょっと腹が立った。

「あんたなんでここにいるの」
「いやいや、僕のセリフ取らないでくれる?」
「せっかく高身長のイケメンが来るっていうからおしゃれして来たのに」
「あはっ」
「ちょっと。その腹立つ顔で見下さないでくれる?」

 高校の3年間ずっと同じクラスで過ごした月島とは、あーいえばこーいう、的な会話ばっかりしてきた。そのせいかクラスメイトには何度も似てるだの付き合えばなどと言われてきた仲だった。まあ、そう言われるたびに2人揃って苦虫を噛み潰したような顔をしていたからその点においては意見は一致していただけましな気もするが。

「久々に会ってこんなこと言いたくないけどほんとに彼女いないの?その顔で?」

 高校時代から引く手あまたな月島がわざわざ合コンなどに来るわけもないと思い不本意ながらそう聞けば、笑い声を殺してお腹を抱える月島が我慢できなくなったのかちょっとむかつく感じで声を出して笑う。うわ、懐かしい。

「褒めるのかけなすのかどっちかにしなよ」
「……まぁいいや。友達が上手くいくのが今回の第一目的だったし」
「そういうとこ、相変わらずだね」

 そういうとこって、どういう意味で言ってるんだか知らないけれど、表情は思ったよりも嫌味じゃない。

「それにしても人生初の合コンで月島に会うとは思わなかったわ。最近恋愛してなかったからさ、誰かと誰かが喋ってるのを見て胸の奥がざわざわしたりやきもきしたり、あれもしかして私あの人のこと好きなのかなとかそういうやつを久しぶりに味わえると思ったのに」
「……あのさぁ、よくそんな恥ずかしいこと言えるよね」
「うわあ懐かしいその表情。……あ、そういえば今日のお店のごはん美味しかったよね。また来ようかな。あと、店員さんイケメンでビックリしちゃったよ」
「……へぇ。料理運んで来るたびにやたらにみょうじに話かけてたしイイ感じなんじゃないの。せいぜい頑張ってみれば」
「なにそのあからさまに嫌な反応。イケメン目当てで行こうとはしてるんじゃないんだけど。ていうか私がどうなろうと関係ないって思ってるくせに」

 言葉通りの応援している顔とは程遠い月島が、別に、と嫌味のこもった表情に戻り私を見下ろすと、昔のあーいえばこーいうの感覚がみるみるよみがえっている気がする。

「あれ〜さては私がイケメンと話してるの見てやきもきしてたんでしょ、月島」
「……はぁ?」

 あーいえばこーいうの仲も時が経てばなくなるもんか、と斜め上を見上げたら月島が私の覗けない更に斜め上を向いていて、表情はちっとも読み取りようがない。

「いやいや今は自惚れるな的なことを言うとこなんだけど……って、おーい聞いてる?」
「……ちょっと今黙ってくれない?」

 月島ってこんな感じだったっけ、と思いながらとりあえず黙ったけれど。結局なんで月島が合コンなんか来たのかわからず仕舞い。

20220522