ソースのいい匂いが充満した店内には、知った顔の男がたくさんいる。卒業式を終えた今日、きっと最初で最後となる大勢の集まりは学校から少し離れたところにあるお好み焼き屋で行われ、ほぼ貸しきり状態。
「10年後とかこうやって同窓会とかすんのかな」
「……鎌先の夢を奪うようで悪いけど。工業の同窓会って滅多になさそうじゃない?」
「たしかに……男だけで集まったとこでな」
「そうだよ。マドンナだったあの子もっと綺麗になってるかなとか、あのイケメン立派な企業に勤めてるらしいよーとかそういう男女のあれこれを楽しみにしてやるもんなんじゃないの?同窓会って」
「まーなー……って!違うわ。お前今のは私は女だし!って言うとこ」
「え」
目を開いてヘラを持つ手を止めれば、鎌先の発言に驚きである。一応私も女として認識されていたとは思わなかったな正直。
「じゃーあれだ、みょうじが眩しい大人の女になってたら同窓会行った甲斐があったなと思えるかもしれん」
「それを言うなら鎌先がエリートサラリーマンになっておいてもらわないとこっちも割りに合わないじゃん」
「ほんと図太くなったよなぁ、入学したての頃はただのちっこい女子だと思ってたけど」
「なんかいろいろ失礼な発言が聞こえたきがするんだけど」
「気のせいだ」
「ああそう。はい、焼けたよ。ソースとか全部かけて良いの?」
ちっこい女子って。鎌先がでかいんだからそれ言い出したら大体の女子ちっこいってことになるじゃん。
テーブルごとに盛り上がる中、同じテーブルにいたクラスの中でも目立った存在の男子は楽しそうに真ん中の方でまとまり、数人しかいない女子も各々楽しそうに会話をする。鎌先はバカみたいに仲間想いで、燃え移りそうなくらい熱い一面もあるけど、優しさが根底にある。3年間クラスが一緒だったことは本当にラッキーだった。
切り分けたお好み焼きを食べる鎌先を見ながら、ちょっとだけセンチメンタルな気分になって、楽しい高校生活だったな、と改めて思えてきた。
「鎌先のさ、その無駄な筋肉もこれから見れなくなると思うとちょっと寂しいわ」
「……は?」
はふはふと口から湯気を漏らしながらお好み焼きを食べていた鎌先は、ぎょっとした様子でウーロン茶を半分ほど一気に流し込み、胸を叩きながら好み焼きを飲み込もうとしている。
「今の私、ちょっと可愛かったでしょ」
「それ自分で言わねえだろ普通」
あれ、いつの間にセンチメンタルはどっか行ったみたいだ。
20210922