キャベツを一口大に切ると、人参を千切りにする。もっと適した切り方があるのかもしれないけど、私はあんまりその辺のことは考えずに料理している。いいか、千切りで。みたいな。ふらりとやってきた旭が用意されていくそれらを見て言った。
「なまえ、肉ある?」
「ごめん今豚肉ないや。ウィンナーでいい?」
「出しとく?」
「お願い」
もやしをざっと洗って適当に水を切ると、全部使うのはさすがに多いかと3分の2を密閉袋に入れて冷凍庫に入れた。ごま油をひいて、適当に乱切りしたウィンナーを入れる。
……ん?じゅじゅう音がしないな、と思うと火を付け忘れたことに気づき、唯一汚れていない小指で火をつけた。
後ろのレンジからはブーン、とモーター音がし、温めている麺の匂いがしてきて、火力を強めた。人参、キャベツ、もやしの順に野菜を炒めていくと、ピーピーと麺が温まったのを知らせる音がした。
「旭ー、目玉焼きやるー?」
「やるー」
「紅しょうがまだあったはずだから冷蔵庫から出して、お箸出しといてー」
「おー」
麺を入れる前に付属の粉末ソースを具に和えると、じゅわじゅわと小さな泡が立つ。やばい、焦げそう。レンジで温めたお陰でしっかりほぐれた麺を入れてまんべんなく茶色が広がるように炒めると、棚からお皿を出して盛り付けた。
「あー多かったなぁ。野菜入れすぎた」
「え、じゃあ俺大盛りがいい」
「その発言なんかうける、高校生の息子がいる気分になっちゃった」
フライパンを軽く洗い、水気を切ってからサラダ油をひく。ちゃんと水気を切っていないせいでぱちぱちと水と油が喧嘩しているけど、こういう性格なのでいつものことだし、びくっと肩を揺らすだけに留めておく。これがノースリーブの時期なんかは一旦遠くまで避難するが、今は長袖の時期だからそこまでの避難は必要ない。
卵を落とすと、白身の丸の端っこが少しずつ茶色くなっていく。究極のめんどくさがりな私は、蓋をするつもりはこれっぽっちもない。洗い物をなるべくしたくない。表面がぷるぷるしているけど。
水を入れ、腰に手を当て、じーっと黄身の具合を見る。これは一種の本日の目玉焼き占いとでも言うべき儀式だ。時々フライパンを揺らし、絶妙な黄身になっているかを確認していると、中央だけがふるふるとしているのがわかり、さっと目玉焼きを焼きそばの上に乗せた。
「できた!」
「いえーい、持ってくよ」
「いいよ!」
後回しにするとよりめんどくさいので、ささっとフライパンを洗うと、紅しょうがのちょびっと残ったタッパーと、小分けの鰹節と、マヨネーズと、チューブのからし。それと自分たちのお箸が綺麗に並んでいた。お気に入りのランチョンマットの上には目玉焼きの乗った焼きそば。お揃いのグラスには烏龍茶が入っている。
「食べよ食べよ」
「いただきまーす」
そんなわけで、今日のお昼は焼きそばです。
2020