「山田どないしよ〜!もう1ヶ月後クリスマスやん!」
「……はや〜、この間やろ!夏休み終わったん」
「あ〜〜〜彼女欲し〜〜〜」

 高校入ってからずっとつるんどる友達は、2学期あたりから好きな女子が居って、いっつもみょうじと2人で教室でお喋りをしてる。こいつの好きな女子はいわゆるふわふわ系の、守ってあげたくなる感じ?の女子。
 俺んちのこたつでぬくぬくと温まり、オカンの出したみかんの3つ目をむく姿を頬杖をついて見ながら声をかけた。

「……お前、クリぼっち回避できるとええな」
「なんで他人事みたいに言うねん」
「え〜他人事やし。うち、オトンがウキウキでフライドチキン買うてきて、オカンがウキウキでケーキ焼くし。弟もまだちっさいしな。家族パーティーや」
「……幸せか!!!」
「え、幸せなん?」
「……アホ!幸せや!」
「マジで〜〜知らんかった〜〜」

 確かに俺んち、仲ええかもしれへんな。オカンのケーキとか女子に言うたらマザコンとか言われるんやろか。別に俺が頼んでるんちゃうし、うちのオカン弟の世話で大変そうやし。そう思たらマザコンちゃうか。

「今度遊び誘うか…?いや、でも2人は無理や!恥ず〜」
「独り言がデカいねん!」
「山田考えてみ?2人て!2人きりてことやで?」
「……何話せばええねん」
「せやろ!?」
「女子同士やったら盛り上がったりしてるけど……あ!ええこと思い付いた!」

 なんか知らんけど、めっちゃ俺のこと見てくんねんけど。え、なんなん?なに?こわ。にやついとるし。みかん食いすぎやし。

「Wデートしたらええわ!」
「……いや、まて。お前ら上手くいったらめでたいけども。別行動〜とかなったらどうすんねん。残された俺とみょうじ。え、ほんまに言うてんの?」
「Wデートなら誘える気がすんねん。頼むわ!クリぼっち回避協力してや〜、なぁ山田〜」

 俺にはわかる。絶対こいつ首を縦にふるまで帰らへんし、みかん食い続ける。ほんまにそうなったらどうすんねん、と思いつつも仕方なく首を縦にふった。
 まぁええか。女子の中ではみょうじが一番話しやすいしな。



 遠巻きに見てた。極寒の地にでもいるんかと思うくらいにガッチガチになりながら「驚かせたらごめんやけど、その。こ、今度みんなで、遊びに行かへん?」と声をかける友達の後ろ姿を。

「なー、ちなみに聞いてええ?」
「おう」
「みんなって、山田くんも来るの?」
「山田も来んで」
「なんや、Wデートみたいやなぁ」

 みょうじは花でもふわふわ飛ばせそうなほど楽しそうに笑い、どうする?と女子で相談をしている。あの子、ほとんど喋ってへんけど大丈夫かな。みょうじはなんや楽しそうやけど。
 ていうか、なんなん。あいつがWデートて言うてもなんも思わんかったのに、みょうじが言うと妙にドキドキするとか……女子だからか?Wデートて言うただけやんか。どうした、俺。
 ぼけっと考えてる間に回りが賑やかになって、山田くん、と女子に呼ばれて。誰かと思えば遠巻きに見てたはずの3人のうちのみょうじが居って。

「山田くん、楽しみやね」
「……え?なに、ごめん!考え事しとった!」
「動物園行くことになったから忘れんとってな、日曜日」
「せや!覚えとけよ!」
「まてまて、俺そんな薄情者やないから!」

 ええ方向に進んでるな。クリぼっち回避Wデート計画。なんなら順調すぎて怖いくらいやけど、正直俺も楽しみなってきた〜!動物園かぁ。動物園行くなんて言うたら、弟が絶対羨ましがるやろな。言えへんな、絶対。





 女子たちは愛でるような視線をしゃがんで送り、友達は「来たんか〜」と笑顔で頭を撫でる。その相手は、俺の弟。

「ペアルックて。親子か」
「…たまたまや。それより、ばれてもうた。悪い」
「ええよ、そら聞いたら行きたなるよな……ええよ」

 しょぼくれる背中にほんまに悪いことしたと思いつつ、よくよく見ていればその背中を小さな背中が追いかけている。イメージ通りのワンピースを着て、デニムジャケットを羽織って。ふわふわした雰囲気を纏わせながら。

「俺来んくても良かったんちゃう?」
「……なんで?」

 みょうじがしゃがんだまま俺を見上げて、首を傾げながら問いかけた。ヤバッ!口に出てたんか!今の!

「……今の、聞かんかったことにしてって言うのアリ?」
「ええけど。……ところで弟くん。名前なんていうん?教えて」
「……兄ちゃん」
「ごめんな、こいつ恥ずかしがり屋やねん。名前はって聞かれとるで」
「保育園では言える、けど……」
「恥ずかしいか〜!初めましてやもんね。私な、みょうじなまえっていうねん!なまえちゃんって呼んでな」
「なまえちゃん……」
「かわいいなぁ」

 弟の頭を撫でながら、みょうじがむっちゃ笑顔で居って。みょうじって。知らんかった訳やないけど。ええ子やな。話しやすいし。気さくやし。いつも自然体やし。
 そんなん思ってたらぱっと目があって、そのままの笑顔で声を漏らすようにさらに笑われたら、ぎゅん!ってなんか、とにかくぎゅん!てなって。

「……わたる。やまだわたる」
「わたるくんていうの?かっこいい名前やん!有り難う、教えてくれて」
「なぁ兄ちゃん。友達、待ってんで」
「ほな行こか」

 わたるが俺と手を繋いだまま、もう片方の手をみょうじとちゃっかり繋いだ。やりよるな、わたる。いや、ませとるの方が合ってるか…?

「失敗したなぁ」

 歩きながら視線を下ろし、楽しそうに笑いながらみょうじがわたるに言う。

「私もわたるくんみたいなグレーのパーカー持ってるから着てくればよかった。お揃いやんな、そしたら」
「兄ちゃんもお揃いやから、3人お揃いになるで」
「あはは、確かにな」
 
 みょうじすげ〜!恥ずかしがり屋のわたるが一瞬で打ち解けとる。即効で帰りたいとか言われたらどうなるかと思ったけど全然平気そうや。

「今さらやけど。山田くん、」
「おん、なに?」
「私服かっこええな。背高いからかな。私ももっと可愛い服着ればよかったわ」

 ちょい前のWデートという言葉が押し寄せて、ぎゅん!てまたなんか心臓が痛なって。

「男の子と出掛けるん初めてやから、これでもめっちゃ迷ってん」

 もっかい。追い討ちをかけるように、ぎゅん!てなった。




モドル