木兎光太郎とユニフォーム


 本当にわかりやすい人だ。なまえのことをチラチラ見ては、何やらもじもじそわそわ、わくわくしたような顔で声を掛けてほしそうにする光太郎に、家事を終えたなまえが麦茶をいれたグラスを持ったまま声をかけた。

「……今日なんか良いことでもあったの?」
「おお!!すごいななまえ!なんでわかんの!?」

 わかるもなにも、アピールしてきたのは光太郎だけど。なまえは頭の中で思うだけでやめて、光太郎のきらきらした大きな瞳を見て頷く。
 すごい勢いでソファから立ち上がり、鞄をガサゴソする光太郎の背中を見ながらなまえは笑う。ああそういうことか、って。このパターンから推測するに、きっと出てくるものは。

「じゃじゃーーん!今日もらった新しいユニフォーム!かっけーよな!」
「わぁ!かっこいいね〜!見せて見せて」

 ここのラインがあーでこーで、なんて楽しそうに説明する光太郎は新しいおもちゃをプレゼントされた子供のようにはしゃいでいた。なまえが一言褒めると、その倍、いや。何倍かにして返される言葉にテンションの上がり具合が伺える。ひとしきり話して満足した光太郎は急に着ていた服を脱ぎだして、鍛えられた綺麗な逆三角形の上半身をなまえに披露したまま一度開けたらしい封を再度を開け、袖を通した。

「どう!?どう!?似合う!?かっこいい!?」
「かっこいー!背中の方も見せて!」

 本人は気づいていない。なまえは光太郎を子供みたいだと思うけれど、なまえも大概子供っぽい所があるということに。光太郎と生活を共にするうちに移ったと言っても過言でないとは思うが。
 ユニフォームファッションショーが終わると、満足気な表情でユニフォームを脱ぐ光太郎の上半身をなまえは堂々と見る。旦那さんの良い体を見れるのは奥さんの特権だ、なんてしみじみ思いながら。
 持ったままだったし、時間も経っていたからグラスに入っていた氷は半分以上溶けていて、とりあえずソファに座ろうと動き出すと光太郎がなまえのグラスを奪ってテーブルに置いた。

「はい!じゃあ次はなまえの番!!」

 屈託のない笑顔。なまえは思い出した、そういえば前回もこうだったと。誰の入れ知恵だか知らないが、彼女や奥さんにユニフォームを着せるのが流行ってるって前回は言ってた気がする。順を追って考えると確かに。光太郎は前回ですっかり味をしめたみたいだ。

「ええ〜また着るの?光太郎のサイズ大きすぎなんだもん」
「それがいーの!奥さんが着てんの見たーい!なまえ着てよー!な〜な〜、頼むからさー!」

 パチン!と両手を合わせて光太郎にお願いされたなまえは、結局折れることとなり、薄手の部屋着の上にユニフォームを頭からすっぽり着せられて、気付いたら袖を通していた。

「ぶかぶかー!なまえちっさー!」
「私は普通!光太郎が大きいんだよ〜〜」

 前回同様、丈は長いし、首もとは少し緩い。もともと着ていた七分袖の袖口は見えていたけど、短パンは穿いていないように思えるほどしっかり隠れている。光太郎は一貫してすごく楽しそうだ。

「あれだな!なんだ……あ!彼シャツっだっけ!?」

 宮くんだな、絶対そう。それしかない。なまえは吹き込んだ人物を予想した。ちなみに、正解である。女の勘は当たるものだ。
 俗に言う彼シャツの裾をひらひらしながらなまえは光太郎を見る。

「でもさー、光太郎。これじゃあ彼氏のシャツじゃなくて、旦那さんのユニフォームだよね」
「………じゃあ旦ユニってこと!?」
「え〜なんかダサいよそれ」
「そーか?」
「うん」
「……んん?」
「…もう脱ぐよー?」

 コミカルな会話にケラケラ笑いながらなまえがユニフォームを脱ごうとすると、裾に手をかけた光太郎が、なまえばんざーい、なんて言いながら裾を上へ持ち上げる。言われるがままに万歳してユニフォームを脱がせてもらったなまえが丁寧に再度受け取ったユニフォームを畳みなおしてビニール袋に戻すと、光太郎に返した。

「最高だな!旦ユニ!」
「もー!笑っちゃうから言わないで〜〜」
「なまえ〜旦ユニ流行るかな?」
「それ言うの家の中だけにしてね。絶対流行んないから」

 口を尖らせる光太郎と、ようやく麦茶を口にしたなまえ。それからこの2人がどう過ごしたのかは、残念ながら内緒である。


モドル