宮くんは興味津々

 呪い。その言葉は「まじない」とも「のろい」とも読む。両方の意味は似ていないようで似てる。青春に呪いがあるならば、私はどちらの呪いにかかるんだろうか。


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 うちの高校には、宮ツインズという有名な双子がいる。ファンクラブもあるほど彼らは顔が良くて、彼らの所属するバレー部は強豪と言われてる。
 侑くんと治くん、どちらが格好いいかなんて会話は日常茶飯事で、彼女ができようものなら学校中に一瞬で広がるし、大事件になるのだ。
 幸か不幸か、私は治くんとよく話す。ウマがあうのかもしれない。応援の花形のチア部は彼らの応援に行くけれど、私はダンス部なので彼らの試合をきちんと見たことはなかった。ダンス部はダンス部で練習や大会があるから、結構忙しかったりするし。
 一方の侑くんとはほとんど接点がない。治くんに用があってうちのクラスに来ると、何故かここ最近私に話かけてくるという七不思議があるのだけど、なんでかはわからない。一瞬私のことを好きなんだろうかと思ったことがあるけれど、そんなのは恐らく私の勘違いだ。接点もなければ、会話の糸口もない。自由な侑くんのことだから、きっと気まぐれなんだと思う。

「みょうじさん今日ポニーテールやん!」

 そう突然言われた今の言葉の意味だってわからない。しかもなかなかの笑顔で。
 ポニーテールに何か思い入れでもあるのかな。なんて返せばいいのかわからない私と、答えを待つ侑くん。通りすぎるのかと思っていたら私の前の席に座った侑くんと、どう盛り上がるべきか考える。
 浮かぶ言葉どれもこれも、私と侑くんの距離感で返すには軽く感じて、おん、ととりあえず一言だけ返した。とりあえず返したとはいえ、そこから先の言葉がまったく浮かばないのが次の問題なのだけど。

「……ツム、みょうじが困ってんで」
「振る話題間違えたか?俺」
「せやろな」
「あ!もう鐘鳴るやん!また出直すわ、ほなな、みょうじさん」

 相づちしか打ってない私と助け船を出してくれた治くん、目を見合わせて笑う。やっぱり、侑くんの意図はよくわからない。しびれを切らし、席に戻ろうとする治くんに問う。

「最近話しかけてくる気がするんやけど、宮くん。なんなんかな?治くんわかる?」
「まぁな。正直うっとうしいやろ」
「それはないよ。でもよくわからへんから困る時はあるで」

 困る、正直な気持ちはうっとうしいよりもそっちの方が格段に大きい。色々と考えを進める末に思うのは、私のことが好きなんじゃないかという考えだったものの、やっぱりその理由がわからない。いや、好きとかじゃないと思うけど。興味があるとか?それもなんでって思うし、やっぱりよくわからない。侑くんの外見しか知らなすぎて、やっぱり何をもって声をかけてもらっているのか、さっぱりだ。


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 ゆるくなったゴムをほどき結び直して部室を出ると、体育館から声がする。そんなに大勢の声はしないから、残って自主練しているところかもしれない。通り過ぎるついでに視線だけでちらっと中を除くと、ツインズの侑くんの方が私に気付き、こちらに向かって動き出す。………私に用があるってことでいいのかな。待ってるべきかな。考える間に解放された扉に下げられたネットの向こう側までやって来た侑くんは、しゃがんで少し休憩でもするかのようにこちらを見る。

「ダンス部もう終わりなん?」
「おん。もう帰るとこ」
「お疲れさん、暗いから気を付けて帰り?」
「ありがとう。宮くんもお疲れさま」
「あ。ダンス部や。みょうじ、今から帰るん?」
「治くんもお疲れ〜」
「……ちょお待って。俺は宮くんでサムは治くんて!なんでやねん!」
「なんや。うるさいでツム」

 突如ジタバタと主張をはじめた侑くんを不思議に思いながら見ていると、わからないが増えていく。あとやっぱり増えていくのは侑くんが私を好きなんじゃないかという本日何度目かの疑惑だった。

「今の隙にもう帰った方がええで」
「……また明日な、バイバイ」
「隙ってなんやねん!……あ、みょうじさんまた明日なー」

 治くんと仲の良い友達なのはみんな知っていたものの、まさか侑くんとまで接点を持っているとは思わなかったダンス部の仲間に根掘り葉掘り聞かれたのはこの後の話だ。

 なんで?どうして?いつから?……そんなのわからんし。そもそも侑くんが私をどう思ってるかもよくわからんし。私は侑くんを今のところなんとも思ってへんし。色々聞かれたところで、全然説明できへんし。そもそも、みんな聞く耳持ってくれへんし。