くちぶえラララ 借りてきたDVDをテーブルの上のノートパソコンに入れ、再生ボタンを押す。ノートパソコンの下には雑誌を沢山重ね、首が痛くならないように高さを出している。
小さな裂け目の入ったソファに二人で座ると、遊児くんの腕が私の肩を抱いて髪をさらさらと触った。
時刻は午後3時、まだまだ明るいというのに昼間からいちゃいちゃしているのは自覚している。たまの休日が重なることは滅多にないことなのに、今日は雨が降ってしまったせいでお出掛けは次回に持ち越しとなり、おうちデートへと変更になったのだ。
今度見に行こうと話していた映画は公開を終了し、新作DVDとなってレンタルショップに並んでいた残りの一本を運良く借りてこれから見るというところ。
「なまえの今日の服、買ったばっか?かわいーね」
「……ありがと。お出掛けだから気合い入れたのになぁ」
「雨降んなきゃなー」
他の映画の予告映像が流れる中、カーテンの隙間から覗く窓につく水滴を見ると、遊児くんも私の視線の先を辿るように窓を見た。
沢山歩くからと緩めの雰囲気の服を選んだけれど、おうちデートにも向いているようなコーディネートになっていたのは不幸中の幸いだ。
遊児くんはさっさと私に視線を戻し、にかっと笑って髪ごと私を引き寄せながら近づく。
「出掛けられなくなったのは残念だけど、外じゃチューできないじゃん」
「……そうだけど」
「俺ね、家でデートすんの好きなの」
熱を帯び、お互いに近付いてキスをして離れ、肩をすくめて遊児くんに頷いた。楽しそうにしている遊児くんは、長い長い予告映像がまだ終わらなそうなのを確認して、かぷりと私の唇を食べるようにキスをする。すごく楽しそうに。
「決めた!」
「なに……?」
「今日はいっぱいチューしよ」
とんでもない宣言が出されると、早々に押し倒されるんじゃないか。そう予想を立ててバクバクと心臓が大きく音を立てた時、ノートパソコンから軽快な洋楽が流れてきた。
「はじまっちゃったね」
「ちぇー」
「返却期限明日でしょ、まず見ないと」
「今、まずって言った?」
「……言ってない」
しまった。言ってしまった。認めないけれど。
残念ながら時は戻せないから、始まった映画に視線と意識を移すと、私の肩に乗ったままの遊児くんの手はとんとんとリズム良く指先だけ動いていて、何気なく遊児くんの肩に頭を預けた。
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恋愛とコメディのうまいこと混ざった洋画。どこかで見たような内容でもキャストが豪華で、フランスの街並みが綺麗だとそれだけでも見応えを感じる。とにかく、面白い。あと少しで終わってしまうのがもったいないほどに。
画面の中の二人は、遊児くんと私のようにソファに並んで座っているけれど、私たちのいちゃいちゃなんて序の口だと言わんばかりにいちゃいちゃしている。ねっとりと唇が吸い付き合うキスは、まるで化粧水のCMの肌のしっとり具合に似てるだなんてぼけっと思った。幸せの溢れる部屋の中から見える窓へ画面が移動し、綺麗な青空と街並みが映ったところでエンドロールが流れ出して、幸せの溜め息が溢れる。
「あ〜、面白かった〜」
「な〜!」
すっかり温くなったコーヒーを飲み干すと、エンドロールの途中で映画を停止した遊児くんと目が合い、新作シールの貼られたクリアケースを開いて渡すと、DVDを持ったままパソコンをシャットダウンした遊児くんは、もう5時か、と呟いて大きなあくびをした。
「なんか、眠くなってきた」
「…わかる」
「じゃー昼寝しちゃう?」
「あはは、今から?」
楽しそうにベッドに寝転んだ遊児くんが私に向かって手を伸ばして、私も隣に寝転んだ。スプリングが軋み、シーツは心なしかしっとりとしている。きっと雨のせいで。
立てた片ひじの上に頭を乗せた遊児くんと、体を丸めて遊児くんのいる方を向いている私。確かに眠いし、ベッドは心地良いけれど、もう5時だし。静かにとろりと瞼を下ろすと、遊児くんが私の耳たぶを唇で挟み、キスが下に下りていく。慌てて目を開けると、いたずらな視線が私をまどろみから引っ張って、掬い上げるように唇が重なった。
「……遊児くん」
「んー?」
「夕飯、作らなきゃ」
「あ、」
「せっかく材料買ったからごはん作らないともったいないよ」
「あー…」
キッチンに置かれた常温のものの入ったスーパーの袋を眺めて少し考えた遊児くんがいたずらに笑う。
「まず、飯にするか」って。そう。まず、ね。
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