004



 引退した3年生がゾロゾロと帰っていくのが当たり前になったころ。お昼休みにドア付近にいたクラスメイトに名前を呼ばれたのがことの始まりだった。

「みょうじさん、今日の放課後って時間あるかな。話したいことあるんだけど」

 上履きの色で3年生なことはわかったけど、名前もクラスも何も知らない人だった。なんで私の名前知ってるんだろう。話···?これって告白されると思っていいのかな。いや、ていうかほんと誰ですか。

「放課後は予定あるんで、明日の朝のHR前でもいいですか?」
「あ、うん。じゃあそれで。校舎裏でいい?」
「はい」

 ド定番の場所に呼び出されることになった私は、二口と青根くんの元へ戻ることにした。ちなみにビックリしすぎて今さっき話していた先輩の顔をよく見るのを忘れていた。

「誰。今の」
「···わかんない。誰だったんだろうね?」
「何年?何の用?」
「3年生。話あるんだって。明日の朝。校舎裏」
「は?お前告られんの?」
「やっぱりそう思う?」

 間違いなく私が二口の立場だったら同じように質問攻めにするだろうな。ただ絶対的に違うことは二口みたいに半ギレにはならないということだ。そこは茶化すところじゃないの?なぜキレる···?


 放課後、本当に予定があった私は家にまっすぐ家に帰って時間指定の宅急便を受け取るという母からの任務を果たした。先輩も宅急便のために放課後の誘いを断られたとは思っていないだろうけど。

 そして問題の朝である。ついついいつも通りに学校に到着した私は、下駄箱の先で壁に寄りかかっている3年生に見覚えを感じた。多分あの人だ。心なしか昨日より髪型が決まってる気がするけど、多分そうだ。
 目が合って緊張の面持ちで壁に寄りかかるのをやめた先輩と挨拶を交わすと、結局人目の少ない体育館と校舎をつなぐ渡り廊下で話をすることにした。私が早めに来なかったせいである。

「ずっとみょうじさんのこと可愛いなって思ってて。彼氏とか気になる人とかいなかったら、付き合ってほしい。俺こないだ就職も決まって踏ん切りついたっていうか···突然言われても困るかもしれないんだけど、ちょっと考えてみてくれない?」

 案の定、告白だった。そして名前も結局言われなかった。あの状況で「お名前は···」なんて聞けるほど私は強いハートの持ち主じゃない。
 そう思って頭を悩ませながらようやく4時間目を終えたところ。今まさにここである。


「弁当一口も食ってねーじゃん」
「全然おなか空かない」
「···そんな真剣に返事考えてんの?」

 すっかり机のきれいになっている二口と青根くんが私の顔を見て様々違う表情をしている。二口は昨日からずっと半ギレで青根くんはちょっと心配そうな顔。人の一生懸命な告白をベラベラ喋るのも良くないような気がして誰にも詳しく言えずにいた私は今、他人からしたらどうでもいことに頭を悩ませて、大量のモヤっと感を募らせていた。

「青根コレ食っといて」
「え。いやそれ私のお弁当···まぁいいけど」
「みょうじと話あるから」
「にろ、なんで怒ってんの」
「とにかく来て」

 手首を掴んで引っ張られると、廊下の隅に連れていかれた。今のところなにがなんだかさっぱりだ。


モドル