001
帰りに寄り道をしてファーストフード店で恋バナなんていうのは夢のまた夢。むしろ夢でしかない。そんな女子高生っぼいことをするような相手はうちのクラスにはいない。まず女子がいない。悲しいことに興味すらなくなっている自分もいる。
学年でも数少ない女の子に借りた雑誌を一通り読み終わって閉じると、だらんと腕を伸ばして机に頬をくっつけた。
「あーーー、ポテト食べたい」
「うるせー独り言」
「デートしたい……」
「は?」
「女の子とデートしたい……」
「お前さぁ。二度と紛らわしい言い方すんな」
「にろ」
「んだよ」
「なんで怒ってんの」
「みょうじがバカだから」
「は!?ひど!青根くんにチクってやる」
「おー言え言え」
そんなくだらない会話の横にいる青根くんに二人で顔を向けると、我先にと声を出す。
「にろがバカって言ったよ!青根くん!!」
「青根、バカはほっといていーぞ」
「聞いた!?青根くん!!」
「···」
「バカはだめだよね!!」
「···そうかもしれない」
「ほーら!」
本当、バカみたい。そうわかっていながら鼻高々にそう言って席を立つと雑誌を返すために教室を出た。女子高生らしい日々には憧れたりするけど、何気に毎日楽しめている。
男子ばかりとはいえ、変に気を使うわけでもなくみんな仲良くしてくれるからネチネチした話もなくサッパリしすぎなほどに楽ちんな関係性が築かれているからだと思う。
読み終わった雑誌を返して軽い足取りで教室に戻ると、誰もいない。次、教室移動だったかも。時間割表をみて慌てて机まで駆けていき教科書をひっぱると、反対の手でペンケースを持って教室を出た。
移動があるときは自然と二口と青根くんが一緒に行ってくれるのだけど、さすがにギリギリすぎて先に教室を出たらしい。D組の前を通ると、舞ちゃんがバレー部の1年生と話している。私に気付くと「チワッス!」と挨拶をしてくれて躊躇なく「ちわっす!」と返すとこれは正解だったのか疑問になった。
「舞ちゃんやっほー」
「あれっ!次オーラルだよね!?」
「よく知ってるね」
「二人がどこいったって心配してたよ」
「え!わかった!」
とはいえ廊下は走ってはいけない。階段の踊り場から慌てて降りていると、無口な先生とすれ違ったがなにも言われない。階段は廊下に入らないんだ、きっと。
チャイムと同時に教室に入ると先生はまだ来ていなくて、空いていた青根くんの隣に座るとじーっと視線を感じる。違う。青根くんじゃなくて、その奥の二口。
「ギリまで待ったわ」
「···ハイ、ゴメンナサイ」
程なくして先生がやってきて授業を始める。それからやっと気付く。ルーズリーフを忘れたことに。青根くんのワイシャツをちょいっと引っ張るとコソコソと聞く。
「ルーズリーフ余ってる?」
顔を横に降った青根くんの手元にはノート。そっか、青根くんノート派だった。にろー、と青根くんの先を見て声をかけるとルーズリーフ1枚近くにきた。さすが。
「足りなくなったら言って」
「ありがと」
でた。イケメンモード。きっと女の子達はこういうところに落ちるんだろう。急に発動されるとさすがに、くる。
先生の英文の発音に耳を傾け、真似して声に出しながら、受け取ったルーズリーフとホワイトボードを交互に見てはシャーペンを動かす。一気にやろうとするとどれもいまいちなことになるんだけど、仕方ない。
授業を終えて教科書を抱えて教室を出ると、みんなゾロゾロ帰るせいか二口が近くにいた。ちゃんとお礼を言わなきゃ。
「さっき、ルーズリーフありがと。あとで返すね」
「おー、1枚で足りた?」
「後半ぎゅうぎゅうだけど足りた!最初余裕持たせすぎたっぽい」
「それ計画性も足りないんじゃね?」
「······もー!青根くん!」
「ほら、青根ばっか頼るなよー」
「にろが正論言うからでしょ!イケメンが台無しなんだからね!」
「なにそれ。誉めてんの?けなしてんの?」
正論とイケメンが誉めなら、けなしワードは台無しだけだから、どっちかといえば多分誉めてる気がするけど、絶対に言ってやらない。