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「さぁっむ……」
冬服にも関わらず、どう考えても防寒機能が低すぎる制服。今日だけにしても一人で朝を過ごす私には、どうにも心許ない。
……尾形さん、いつ起きるかなぁ。久々の休みらしいから、多分昼近くまで寝ているはず。それゆえ、彼の分も朝ごはんを作るか作るまいか考えあぐねている。少しばかりうんうん考えて、とりあえず二人分作って、尾形さんの分は取り分けておくことにした。『おはようございます。これ食べてください』なんて書き置きも付けて。
それにしたって、一人で朝ごはんを食べるなんて久々で、やっぱり少し寂しい。尾形さんの仕事の関係で晩ご飯は一人で食べることもあるけど、朝からっていうのはなんだか、元気が出ない気がしてくる。寒いし。もそもそ食べて、のそのそ準備をして、気付けば結構ギリギリの時間。やばいやばい、なんて独りで慌てて靴を履いているところに、ふと、声がかかる。
「おい」
「ぅわっ、……!」
突然かけられた声にそこまで驚いたわけでもないのに、何故か転びかける。なんとか起き直した。
「……不審者だとでも思ったか」
「いやちょっと、びっくりしちゃって……おはようございます、尾形さん」
寒そうに少し顔をしかめて、私のドジっぷりに呆れている。その上相当眠いらしく、ほとんど目が開いていなかった。
「まあいい。送って行くからさっさと準備しろ」
「え、」
起きたばかりで、いつもより更に脱力感のある声。なんだかどきりとした。
「あー、と……大丈夫ですよ…?せっかくのお休みなんですし、寝ててください」
「いいから」
「う、……、わかりました」
ハンガーにかかっていたジャケットを着ているし、既に車の鍵も持っているようだ。申し訳ない気持ちもありつつ、少し嬉しい気持ちもありつつ、改めて靴を履きなおした。
*
「すみません、せっかくのお休みなのに」
「構わん。目ェ覚めただけだ」
いつものように、タバコの煙をくゆらせながら運転してくれている。眠気はほとんど覚めたらしい。
今日みたいなことがない限り、尾形さんが職場に行くついでに送って行ってくれるわけだけど、休みの日まで車を出してくれるとは思わなんだ。
と言っても、家から学校はそこそこ近い。いつもよりは長く感じたものの、あっという間に着いた。あまりに校門の近くだと他の人に見られてしまうかもしれないから、校門の少し前の曲がり角で車を降りる。
「ありがとうございました、」
「ん」
「行ってきます」
こそっと言うと、軽く手を振ってくれる。誰かに見つかったら諸々面倒だから話はできないけど、こういう時間はなんだかんだ幸せな気もする。
「……尾形さん」
「あ?」
「…………大好きです」
行ってきます、よりもさらに小さな声で、その上早口で告げた。尾形さんがどんな表情をしたかすら見ずに駆け出して、一人で勝手にどきどきしている。
これは帰ったらいじられるだろうなぁ、なんてことを思うけど、それすら恋しくて、さっき離れたばかりなのに既に彼に会いたい。
「ふふ、」
そのひ一日、友達にやたらと「今日機嫌良いね」と言われたのは、多分友達の勘違い。
*
学校終わりにスマホを見ると、一件だけメッセージが入っていた。尾形さんからの。送られてきた時間は、午前九時前くらい。
『学校終わったら連絡してくれ』
と、これは……迎えに来てくれるんだろうか。朝に続いて申し訳ないなと思いつつ、電話をかける。尾形さん出ないかなぁ、とも考えたけど、四回ほどでコールは止まった。
『…終わったか』
「はい、今しがた」
『今向かう。そのまま飯行くぞ』
「えっ、いいんですか」
『おいおい、自分が朝言ったこと覚えてねえのか』
「う、……」
『覚えてんだろ。付き合ってもらうぜ』
「ぇあ、……はい…………」
絶対スマホ越しににやにやしてる。そう分かっていても逆らえないし、そもそも逆らう気もないんだから、私も惚けてしまってるんだろうな。
*
「連絡しろとは言ったが、わざわざ電話かけてくるとは思わなかったな」
「あ、それはその……ですね…………」
「なんだよ」
「……尾形さんの声、聞きたく、て……」
「…………」
「あの、何か言ってください……」
「は、可愛いとこあるじゃねぇの」
「ちょ、……ありがとうございます、?」
「疑問形か」
「いや……尾形さん好きです……」
「言うと思った」
「確信犯ですか……!!!」
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