私が東くんの告白を断るのは、彼のことが好きだからだ。
「ごめんなさい」
私は彼に好きになってもらえるような人間ではない。私は特別でも何でもない、取るに足らない人間なのだ。
「なにも泣くことはない」
「泣いてないよ」
「...今にも泣きそうだ」
私に悲しむ資格なんてありはしないのに。告白は断るくせに、私以外を好きになって欲しくないと思っている。醜くて、矮小で、どうしようもなく自分勝手な私のことを好きになってくれたこの人はいつも優しくてみんなに必要とされる人だ。
「みょうじは、そんなに俺のことが好きなのか」
「......うん」
「どれくらい好きなんだ?」
「東くんってちょっとイジワルだよね」
やっぱり彼は知っていたんだ。私が彼のことがどうしようもなく大好きなこと。もしかしたら断られるのも想定のうちなのかもしれない。それもどうかと思うけど。
「東くんと話してるとすごく楽しくて幸せで、家に帰った後も次はいつ東くんに会えるのかな、って思ってる。気がつくとにやけちゃうから、いつも気を張ってる。東くんに好きって言ってもらえて、私は本当に嬉しいよ。だから、終わりなんて考えたくない。いつか別れることになったら、それこそ私は生きていけないよ...」
「.........」
東くんは珍しく驚いた顔をした。東くんでもびっくりしたりするんだなあ。何だか不思議。
「ごめんね、重いよね」
「いや...違うんだ。...あー、その、何だ。そこまで言ってもらえるなんて思ってなくてだな。嬉しいよ」
照れ臭そうに頭を掻く東くんは私と同じ若者みたいだった。いや、同い年なのだけど、なんというか東くんって大人以上に大人なんだよね。やっぱりかっこいいなあ。いつも落ち着きがあって、データ分析だって的確だし。私も東くんみないな研究者になれたらなあ。
「私は、終わりが来るのが怖いんだ」
「...それでも俺はみょうじと一緒にいたいと思っているよ。断られても素直に引けないくらいには、俺もみょうじが好きなんだ」
また泣きそうになる彼女の顔を見て東春秋は、自分は卑怯だとつくづく思う。告白をすれば彼女が断ることは分かっていた。それでも想いを告げたのは、今以上に自分に縛り付けるためだ。ただの友達のままではいられない。今のままでは、彼女と手を繋ぐことさえ許されないのだ。
「俺と一緒に幸せになってくれないか」
「...何だかプロポーズみたいだね」
「俺はそれでも構わない」
「...ずるいよ東くん。もっと好きになっちゃうじゃん」
なればいい。俺だってお前のことが好きなんだ。
「春秋くんって呼んでもいい?」
「ああ。俺もなまえって呼ぶよ」
嬉しい。私はずっとなまえと呼んでほしかった。心臓の音がうるさくて、もしかしたら彼にも聞こえているかもしれない。私がどれだけ彼のことが好きなのか、彼には分かってもらいたいからそれでもいいと思った。

Ash.