ずっと追い掛けている人がいる。素敵で凛々しくて、綺麗な人。靡く髪の毛も、微笑んだ時に細められる目も全てが愛おしいと思っているのだ。

けれど、俺がどれだけその人を愛おしいと思ってもその人は俺のことを見てくれないと思う。だって、いつも俺に言うんだ。迅ってかっこいいよね、と。俺のことを見て、そんなことを言わないでよ。俺の気持ちわかってるの?どれだけ俺が我慢してると思ってる。
周りから頑張ってるねっていう声も、嬉しく感じなくなった。違うんだ、違うんだ。俺は結構前に、大きくなったらなまえさんと結婚するって言ったんだ。そしたら、なまえさんは「君が大きくなるころには私なんか忘れているよ」とからから笑っていた。そんなわけないのに。

一度、タイプの人は誰ですかって聞いたことがある。即座に迅かなあ、って頬を赤くして笑ってた。同い年がいいな、それで、とっても強くて優しい人。そこで俺は玉砕した。よく、漫画とかでハートが壊れる描写がある。がらがらと崩れていくのが描かれているが、ようやくわかったような気がする。確かにそうだ。崩れ去っていったんだ。でも、それでも、俺はこの人が好きだって。



「なまえさーん、模擬戦しましょー」
「うん、いいよ。でも、もう時期テストじゃなかった?」
「げえっ。嫌なこと思い出させないでくださいよー」



こうやって、笑い合うことが何よりも楽しい。でも、実感するんだ。いつもいつも。俺は今制服なのに、なまえさんは私服で、義務教育だけどなまえさんはバイトもしてるし、休みの日だってある。俺達には必ず違いがある。歳の差がよくわかる違いがあるんだ。どれだけ足掻いても、俺がどれだけ誕生日を迎えても歳の差に変化は生まれない。痛感するだけだ。俺はなまえさんに追いつけないって。



「なまえ〜、後で俺んとこ寄ってって」
「オッケー、じゃあ、迅。また、後でね」



なまえさんの迅さんを見る目も、迅さんがなまえさんを見る目も、どちらも愛おしそうな目をしている。歳の差をこれ程恨んだことは無かった。早く大きくなりたいと思っても、あくまで願望から変わったことは無かった。けど、これは、恨みや僻みだった。大きくなれないことが恨めしかった。あと五年早く生まれていればなまえさんに好きになってもらえたかもしれないのに。

若いやつはいいよなあ、って迅さんが頭を撫でるけど、だったら変わりましょうよって何度も言ってきた。俺と変わって、俺が大学生になるから。そうしたら、なまえさんと、って。なまえさんと言葉を零せばあからさまに驚いた様子で、やっぱり、大学生ってのもいいよなって言うんだ。



「迅さんが、俺は若いから伸びしろがあるっていうんだ」
「まるで、私たちに伸びしろがないみたいな言い方するんだな」



あながち間違いでもないのだろうが。
若い方がトリオンが多いは事実だ。でも、私たちって、それは迅さんとなまえさんのことを指してるように感じて切なくなる。なまえさんが、もしも、年下でもいいというのなら俺はきっと今以上頑張ることが出来る。



「迅さんなんで呼んだんでしょうね?」
「さあ、今度レポート作らなきゃだからそれについて聞きたいんじゃないかな」
「それなら嵐山さんでもいいんじゃ」
「うーん、アイツ頭いいからねー、それに、学科が違うんだよね、レポート書く学科が」



今回は国文学科なの。迅は確か国文学科取ってるから、となまえさんは俺の知らない世界を語る。俺だって中学で古典やってるんですよ。でも、なまえさんがやってるのと比べると全然、簡単なのかもしれない。俺はなまえさんのどんな話を聞いても、全部、自分との差を恨む言葉にしか変えられない。


早く大きくなりたいっていえば、誰もが言ってきた。大人っていいことないよって。勉強が嫌いでも、今は大事だよって。違うんだ。全く違うんだ。俺が大きくなりたいのはそういう理由じゃない。俺は大きくなって、なまえさんに認められたいだけなのに。誰もわかってくれない。子供扱いして、なまえさんでさえも、俺のことを年下だと思って。



「だから、歳の差って嫌いなんだ」



でも、それでも、俺は気にしない振りして頑張る。早く大きくなりたくても、たとえ早く大きくなっても、埋まりっこない歳の差なんて俺は大ッ嫌いだ。

Ash.