「なまえ、おまえ、その…総悟とはもう決めたのか?」
いきなりなんだこの人は。今朝朝食を食べていると、食べ終わったら俺の部屋に来いと土方さんに言われた。この前マヨネーズの中に辛子入れてミックスしてたのバレたかな。でもあれは私だけじゃなくて総悟もだ。いざとなったら逃げればいっかと言うことで鼻歌歌いながら土方さんの部屋へ向かった。おかしい。部屋に入った瞬間思ったこ。なんだろうかこの、娘に彼氏はいるのか?みたいなことを言いだしそうな雰囲気を醸し出していた。そこに座れと前に座らされたと思えば、冒頭の台詞を吐かれた。
「はい…?どういう事です?」
「あのだな、その、なんだ…あーチクショウ!!総悟とはもう将来を決めているのかと聞いてんだ!余計なお世話とは思ったがお前に見合いの話が出てんだよ!お偉いさんだが、どこの馬の骨とも分からん奴におまえをやるよかあのドエス王子にやったが千倍マシなんだよ!!」
「待って土方さん、私まず総悟と付き合ってない…」
「…は?お前、昔から総悟大好きじゃねーか、総悟も」
「総悟も?」
「土方アアアアア!!」
襖がスパンっと開いたかと思えば、バズーカー構えた総悟。やばいと思った瞬間、私は総悟に手を引かれたと同時に引き金を引いた総悟。いつも通り笑って走って逃げて、その間、土方さんの怒鳴り声が後ろから聞こえてくる。道場の中に入り息を整える。
「びっくりした!」
「いつでも土方の近くにいる時ァ構え時なせェ」
アハハッと笑いながら汗を拭く。そういえば、土方さんの話の続きはなんだったんだろう。ふと隣をみれば、あれ、なんか大人になった?昔は顔が隣にあったのに、今の私の目線は顎くらいだ。顔は相変わらずだけど、それでも大人の男性になっている。じっと見ていると、総悟が嫌そうな顔してこっちを見た。
「なんでィ気持ち悪ぃ…」
「なんか、大人になったね、総悟」
そういうともともと大きい目をもっと大きくさせた総悟が居た。どうした?と聞くとなんでもねぇと言って前を向いた。なによ、こっちまで恥ずかしくなるじゃんか。
「なあ」
「な、あに?」
「おまえ、お見合いどうするんでィ」
「え?ああ、受ける気ないよ。私死ぬまでみんなと居たいし!」
「そうかィ」
すっと立ち上がった総悟に、自然と私も立ち上がる。水でも飲みに行くんだろうか。歩き出そうとすると、ぶつかった。隊服に。鼻痛い。
「どうしたの?」
「お前と俺、これからどうするか近藤さんに聞かれた」
「私も、土方さんに聞かれた」
「………」
間が、気まずい
「なまえ」
「っはい」
「好きだ」
「…えっ?」
「もう言わねえ」
そう言って道場を出て行く総悟の後ろをまだ混乱しながら追いかけた。なにか言わなければ
「総悟!!」
「す、き!!むかしから!だいすき!!」
立ち止まった総悟の背中に思いっきり抱きつく。
「昔から声でかいんでィ、アホ女」
フッと笑って私の腕を解いたと思えば、次はぎゅっと総悟から抱きしめられた。
「近藤さんに報告しないとだけど、なんか恥ずかしいね」
「その必要は無いみたいでさァ、お前のデカイ声のおかげでな」
総悟の胸板から顔を離すと、廊下の角から出てきたのは笑顔が3倍増しの近藤さんとボロボロの土方さんだった。またその後ろには山崎さんや原田さん、隊員たちが現れた。
「なまえ、今夜土方さんの寝込みを襲うぜィ」
「了解!」
付き合って初日からソレ?だと思うかもしれないが、私と総悟はこれでいいのだ。総悟の手を繋ぎ、私はみんなの元へと向かった。