仲間のあかし

 宴から数日後。
 なまえはすっかり疲労を忘れた快調で風に身を化し、兎丼常影港へ海賊達の見送りに来ていた。

「あら、なまえよ‼︎」

 船から手を振るナミになまえは手を振り返した。

「なまえちゃ〜ん‼︎なんて麗しいぃんだ〜!」

 サンジの瞳を焦がした熱いラブコールになまえは少し身を引きつつ、手を振り続けた。

「なまえ〜‼︎またワノ国の遊び一緒にしような‼︎」
「うん‼︎」

 チョッパーと共に折り紙をした記憶が脳裏によぎる。

「モモはどうした」
「モモの助さまには黙ってきましたよ!きっとルフィさま達の出航に泣いてしまいますから」

 困ったように笑うなまえにゾロは、ふっ、と鼻で笑った。
 そしてなまえは腹から声を張り上げた。

「ルフィさま‼︎」

 ルフィは、なんだ、と歯を覗かせる。なまえは脳裏にニカの姿を思い浮かべた。

「あの時!わたくしの言葉を信じてくれて、ありがとう‼︎」
「ああ〜ニシシシ…!」

 ルフィも思い出したようで笑う。

「あの時わたくし自分で言葉を発した気がしないんです!けれど、あなたの姿を見て負ける気がしませんでした!鼓動が…あなたを知っていたみたいです!」

 彼が現れた時に心臓を打った愉快なリズム。
 自然と涙が溢れ、自然と笑っていた。

「おう!そうか!俺もあん時、お前と別のやつを見たんだ!そいつの言葉を信じられた!」

 なまえは不思議そうに目を丸くする。するとルフィは言った。

「似てたぞ!なまえに!」

 ニシシシ、と笑うその姿になまえは瞳を潤ませた。
 肩を並べ、広い海のその先を共に眺めた——。
 目にしたことがないはずの景色が脳裏に浮かぶ。


「おぬしらァ〜〜〜‼︎‼︎」

 突如、背後から龍と化したモモの助が飛んでくる。

「モモの助さま!」

 その上に錦えもんとヤマトが乗っていた。ヤマトが「なまえ〜‼︎」と手を振っている。

「捕えた〜〜〜‼︎‼︎」

 バフっと桃龍はモモの助に戻る。そして、ルフィに抱きついた。モモの助は肩を震わせ、ゴゴゴ、と恐る恐る顔をあげる。

「ルフィ…‼︎‼︎将軍命令でござる…」

 モモの助の声色になまえは額に手を当て困ったように笑った。

「行かな"いでくれ‼︎さみしいィ‼︎ぇぐッ…ずっと一緒にいてほじい〜‼︎おぬしらと別れとうないでござるぅ〜〜‼︎」

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃと白目を剥いた顔は必死にルフィを止まらせたいと願う顔だった。
 一味の皆がそんな愛らしい将軍に優しい眼差しを向ける。

「ウソップ———‼︎」

 ルフィはサニー号に向かって叫んだ。

 ばさっ‼︎とモモの助の顔を覆う黒い布。
 それは麦わら海賊団のマークを掲げた旗だった。

「おれの仲間に手ェ出すってことはおれ達にケンカを売るって事だ‼︎」

 この旗を掲げることが何を意味するか、ルフィは船長の堂々たる風格でモモの助たちに説く。

 仲間のあかし。

 ルフィは背を向け、船に乗り込む。

「頼むぞ‼︎なまえ‼︎ヤマト〜〜〜‼︎‼︎」
「任せて‼︎」
「うん‼︎」

 礼をする将軍の両側になまえとヤマトが佇む。将軍を両側から支える強きモノノフを錦えもんは眩く見つめた。

「出航〜〜〜‼︎」

 船が海を掻き分けていく。

「しっかりやれよ‼︎将軍〜〜‼︎」
「頑張れモモの助〜〜〜‼︎」

 船からモモの助に声援が届いた。
 次第に船は小さくなっていく———

「錦えもん‼︎」
「はい」
「拙者いつの日か…‼︎光月おでんを超えてみせる‼︎」

 その声に錦えもんは涙を浮かべた。

「———見届けましょう…‼︎」

「僕を?」
「「違うわ‼︎」」

 なまえは彼らの掛け合いに、ふふ、と笑みを溢した。
 そして、空を見上げる。
 夜が明けた景色はこんなにも眩い。
 
 モモの助とヤマトに目配せた。
 二人はなまえに笑顔を向ける。

 この国の未来を 築いてゆく。
 愛する彼らと共に。


 終幕
 

妖狐物語
20250806
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